3学年がそろい
活性化した中学が本格的に始動
中学開校より3年、今年で全学年がそろった岡山学芸館清秀中学校。公立指向の強い地域ではあるが、公立中等教育学校・中高一貫校の増加や私立中学の台頭などで、中学受験をする生徒が増えている。その中で同校は開校時のイメージ通りに明るく元気でポジティブな生徒を中心として活性化している私立中学校のひとつである。
併設の学芸館高校では創立53年にして、今年は初の東大合格者を輩出。岡山大学13名、広島大学4名をはじめ、国公立大学へも過去最高の83名が合格。これにより中学校も多くの保護者や受験生の関心を集めることになったが、その目標とするところは、決して勉学だけではない。日本古来の規範意識と、高い学力と広い視野、この3つをバランスよく育ててこそ、将来世界でエリートとして活躍できるというのが同校の教育方針である。
「日本には伝統文化に根ざした独自の価値観があります。大国と呼ばれる欧米や、経済的な急成長を遂げているアジアの国々と比較しても、そのモラルの高さは他に類を見ません。その規範精神を基本とした清らかな感性を備えた優秀な人材を育成していきたいと考えています」と加藤武史副校長は語る。
『清秀』の名の由来ともなっている人間教育は、生徒だけには留まらない。同学園の森靖喜理事長の奥様である、岡山県青少年健全育成促進アドバイザー・森美智子氏を参与として清秀親学講座を開催。父母の会主催で保護者を集めて親としての在り方や心構えを講義する。小学生では自分の進路を決めるのは難しい。進学先の選択には親の意志が少なからず動くはずである。学校側も生徒も努力をするのだから、清秀中学校を子どもの進学先に選択した親もまた自らを磨く努力をしてもらう。三位一体となって行うのが清秀の人間教育である。
国際意識を高める海外研修
地に足のついた教育で生徒の興味を引き出す
これからの子どもたちが巣立つ社会において、英語力は切り離せない能力となる。その判断から、清秀中学校では中学入学後、最初に習う英語教育において、ネイティブによる楽しい英会話から導入する。少しでも早く生きた英語に触れ、身につけるためである。また、理数教育では新しいモノを作り出す力の源となるという考えから、理科では実験を中心にした授業を実践。体験を通じて理解を深め、知識を定着させる方針である。数学では習熟レベルの差が出てくる中学3年時から習熟度別授業を導入。その他、大手通信教育塾との連携による添削問題の導入や、ハイレベルの習熟度の生徒には東京大学新聞の購読や特別課題を与えて勉学への興味を失わせないなど、生徒個々のレベルにあわせて実力が向上できるカリキュラムを組んでいる。
一方、語学習得だけでなく、広い視野を持つための経験として、国際交流事業でカンボジア・タイへの研修旅行も実践。文化の違いや現地の人間との交流を通じ、日本人として何をなすべきかを考える機会を与えることで、生徒の国際意識を高めるきっかけとなっている。
上田肇副教頭は「地に足の着いた教育を行うことで、生徒の興味や関心をあらゆる面から引き出して、社会における自分の使命感を身につけさせるように6年間掛けて学ばせていく予定です」と話す。
その他、一年間の長期海外留学制度や短期海外語学研修などの海外研修制度の充実。同敷地内に日本語学学校の開設など、普段から異文化や英語に触れる機会を多く取り入れて、生徒の海外への視野を広げている。
また、ボランティア活動、リベラルアーツ講座、マナー・躾教育、7つの習慣Jなど、清秀中学校独自の価値観を付ける教育も豊富で、生徒の心の活性化にも全力で取り組んでいる。 |
教育者自身が胸を張って
実践していける教育を
キャンパス内には教室や廊下の壁など至る所に生徒たちの写真が掲示されている。どの写真も普段の学校内で撮影したものだが、そのいきいきとした明るい表情が、学校生活が潤っているのを伝えており、見ているだけで心が温かくなる良い写真だ。
その生徒たちの笑顔のためにも、清秀中学校では親の意識も重視している。入学受験時に保護者面談も行われるが、人間教育を声高に呼び続けてきたために、最近では親の教育に対する意識も高い家庭が多い。入試には昨年と同様、適検査性入試や英語を選択できる3教科入試も導入しており、清秀中学校に入学したいと考える生徒たちを3度の受験機会で受け入れている。新しい学校だけにどのような受験なのか、受験生たちが傾向をつかみやすいようにと、秋にはチャレンジ模試も実施される予定だ。
「高校は進学実績が急激に伸びているだけでなく、部活動も盛んな人気校ですが(在校生1,100名)、中学校は岡山県の私学の中でも最も新しい学校であり、規模もそれほど大きくありません。しかし、温故知新を大切にし、指導者である教員も厳選。自分たちが恥じることなく、胸を張って実践していける教育を目指しています」と加藤副校長の言葉は力強い。
取材を終えて校舎を出ようとすると、3年生が1年生に注意をする場面に出会った。
何ともたのもしい先輩ではないか。これら一つひとつの積み重ねで歴史は作られていくのだろう。
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