新たな取り組みに意欲を燃やす
鳥海新校長が語る学園の未来
2004年に株式会社立の中学校を創立して8年。教育特区とはいえ、当初は補助金も無く、経営的にも非常に厳しい中、ひたすらに生徒たちのためを思い学校運営を続けてきた。2011年に学校法人となり、少し余裕もできてきた今では本来目指していた教育にじっくりと取り組めるようになったと鳥海新校長は話す。
「新校長に就任してまだ日が浅いですが、本校をもり立てるためにも、教育内容を見直してしっかりと道を作っていきたいですね」
中等教育学校は一般的な中高一貫校とは異なり、中学と高校の境界はほとんどない。高校授業の先取りや深度が通常の公立中学とは異なるため、朝日塾中等教育学校では高校からの受験生を受け付けていないのが現状である(転勤などの事情による編入生は除く)。この6年間の中で、生徒たちは3つのコースに分かれ、自分の進路に向って基礎力をつけていくことになる。特に昨年度から導入されたV類Sコースは、東大・京大をはじめとした最難関大学や国公立大医歯学部への進学を目指すコースである。中等部1年から2時間の英数特別授業を実施、中等部3年からは週3時間程度の数学・理科を中心とした特別講座を設置して、目標校合格へ備えるのだ。来年度の卒業生の中には東大や京大への進学がかなり高確率で見込める生徒も複数おり、このコースからはその先輩に続く合格者が続いて出ると考えられる。
もちろんコースは一定の条件を満たしていれば年度末に変更が可能。
国際社会で主張できる人材育成
ディスカッション科を正規教科へ
単に難関大学入学だけを目標にするのではなく、大学卒業後に社会に貢献していく人材を育てたいというのが、同校の目標である。もちろん日本だけではなく国際的に活躍することを意味している。そのためには英語力とディスカッション能力を育てる必要があると鳥海校長は考えている。
特にディスカッションの力が日本人は弱いと言われていることに注目し、全国で初めてディスカッション科を教科として導入。正規授業としてカリキュラムに組みこまれている。保脇稔教頭は「現在、中学生にも論述の力が求められています。ディスカッション科では、正解の無い問題を作成し、自分の思う答えを導いてそれを理論武装し、主張して、相手に認めさせる力を育成します」と語る。
例えばオリンピック種目の団体競技で、得意分野が異なる選手のどちらを出場させるべきか、といった問題では、自分の主張を指定された文字数以内でいかに相手に伝えるかが問われる。国語の文章力・表現力・語彙といった要素がすべて必要となる。また、英語にも応用され、単なる英作文ではなく考えて導き出す力が問われることになる。
「21世紀社会に生きる力のひとつとして、ディスカッション能力はどの分野でも重要視されます。そのため、全教科に繋がる教育として取り上げております」と鳥海校長。
また、英語力のアップでは、今年度から洛南や土佐塾中高で英語指導を続けてきた岡本俊一氏を教員として招聘。独自のテキスト構築や、緩急を付けた授業で、英文構造の本質的な理解を徹底して行っている。
一方、最新のICT教育も十分に活用。パソコンを使用したEラーニングシステムでの自立学習だけでなく、今年度からはタブレット端末を使った授業を開始している。
挨拶はコミュニケーションへの第一歩
しっかりとした学生生活を
朝日塾中等教育学校は、岡山県岡山市北区の緑豊かで自然の環境に恵まれた場所にある。最寄り駅からスクールバスが出ているが、決して交通の便が良いとは言いがたい。ただし、それもまた学びの環境としてはメリットであると鳥海校長は語る。
「スクールバスでの通学のため、安全な通学が確保できます。また、遠方の場合は敷地内に寮があり、そこで生活を送ることで、生徒の自立を促せます。中には、通学圏内に自宅があるにもかかわらず、寮生活を選択している生徒もいるほどです」
生活基盤を学校に置くことで、規則正しい生活が自然と身に付いたり、長い通学時間を勉強やクラブ活動に当てられるというのも、寮生活を選択する生徒が多い理由の一因となっている。
また、どの生徒も全員元気な挨拶をするというのも同校の特徴だ。これは朝日塾中等教育学校だけでなく、系列の朝日塾幼稚園・朝日塾小学校でも同じ指導が行われている。挨拶はコミュニケーションの第一歩であり、世界中で必要なマナーである。万一、相手が挨拶を返さなくとも気にしてはいけない、自らが声を出し挨拶をする意識が大切であるという教えである。このため、朝日学園に来校した保護者や関係者は、一様にそのしっかりとした挨拶に驚かされるという。
こうして様々な方面から育成された生徒は、年々難関大学への実績をあげており、岡山トップクラスの公立校とほぼ肩を並べる勢いで合格率を伸ばしている。
また、県内トップの私学に進学している同グループの朝日塾小学校からの入学(内部進学)も増えていると聞く。
鳥海氏は「小中高と朝日学園で育った子どもたちが、世界を舞台に活躍してくれる日が来るのも近いのではないでしょうか」と自信をみせた。 |
|
【ホープ登場】
生徒に好評
岡本先生に付いて行けば東大に入れそう
朝日塾中等教育学校
英語教諭 岡本 俊一 先生
朝日塾中等教育学校の英語の授業が人気を集めている。「英語の本質を指導してくれるのでわかりやすい」「岡本先生に付いていけば東大に入れそう」と生徒から絶賛なのだ。注目の授業を受けもつのは、今年の4月に就任した岡本俊一先生だという。一体どんな先生でどのような授業をしているのか、記者は本校を尋ねることにした。
朝日塾中等教育学校は、岡山駅からスクールバスで約40分、環境抜群のところにある。2003年の教育特区で株式会社立の学校として開校したことはあまりにも有名だ。その後、2011年には朝日塾中学校・高等学校を発展的に廃止し、学校法人の中等教育学校に移行。今年度より学園長の鳥海十児氏が校長に就任し、新たな教育に取り組んでいる。その一つが英語教育で、岡本先生はその切り札である。
当日、岡本先生が中3Bクラスの授業をしていると聞き、参観させて頂いた。
「丸暗記はだめだぞ!」とメリハリのある大きな声が響いてきた。生徒の視線は岡本先生一点に集中している。板書と講義との間合いが絶妙でバランスが良い。厳しい指導かと想像していたが、そうではない。楽しげに授業をしているのだ。
時たま生徒の気持ちを切り替えるためか、テキストにはない話題を出す。笑いが起こると時間をはかったように間髪入れずに授業に戻る。
「いいか、文章は生きている。そこには流れがあり、必ず主語と動詞があるからな。よーく読み取るんだ」
英文の組み立てを徹底して教え込んでおり、自分流の翻訳をさせている。間違ってもよい。ようは最後まで自分でやり遂げることが大事なのだ。それが自信となり力が付くという。岡本氏は続ける。
「文の構造分析がしっかりとできると、本当の意味で楽な勉強ができます。考える力があって応用力が付き、幅が利きます。幅が利くということは、一つのことを覚えると10応用できる。丸暗記だと10覚えて10勉強しないといけない」
授業のポイントは教材のようだ。テキストにプラス補助教材を使用し、生徒の能力に応じた授業ではなく、生徒たちの能力を引き上げるための授業をしているといえる。
一方、週のはじめにはマンデーテストがあり、先週に習ったところを確認する。もし、間違っていればその日に補習。こういった繰り返しの指導があり、生徒たちは完全に「わかった!」を実感するという。
東大・京大・国立の医学部へ
将来は英語の朝日塾といえるように
岡本先生は大阪・京都の私立中高や高知の高等学校で指導していた。とくに高知の高等学校では、14年と長きにわたり授業を持ち国立大学に多くの生徒を進学させている。
「本校での私の仕事は英語の能力をさらに引き上げ、超難関国立大に生徒を進学させることです」と目標・課題は明確だ。
今回注目したテキストと補助教材について質問をした。
「いくら熱心に教えていても良い教材がなければ生徒には伝わりません」
熱心で良い授業に良い教材がそろってはじめて生徒には通じるのだと。その教材作りだが、なんと岡本先生が一人で作っているという。
「テキストを授業に合うようにオリジナルの教材を作っています。中高全7クラス持っているので教材作りは大変です。下手したら朝の3時、4時になるのはざらですね」
そのうえ添削もしているというから、驚きだ。
「教えるほうがしんどい目をしないとだめです。楽をしていると生徒は付いてこない。こちらの気持ちが伝わりますから」
指導方針をぶれずにやりつくせば必ず生徒の希望する国立大学に進学できると、岡本先生は自信を見せる。また将来は英語の朝日塾と言われるまでになることだとビジョンを語って頂いた。
岡本俊一英語教諭というホープ登場で朝日塾中等教育学校に大きな期待がかかる。 |
|