アジアへ目を向けた国際教育
入試では英語を選択科目に
これまで中学受験がそれほど盛んではなかった岡山県で、公立の中等教育学校、中高一貫校の開校が相次ぐ中、中学受験者数は飛躍的に伸びている。同時期に岡山学芸館清秀中学校が開校、1期生22名、今春、2期生として32名が入学した。
日本の伝統文化に根ざした価値観を重視し、誇り高き知性豊かな人材の育成を教育目標とする中学校は、岡山学芸館高等学校で知られた学校法人森教育学園が運営する。50年の学校教育の経験と法人としての実績を生かした教育が強みである。
これまでも、国際交流事業ではカンボジア、タイの交流財団を通じて、カンボジア研修を行ったり、現地の日本語教師との交流も毎年実施してきた。そうした経験を生かし、中学でも3年次には研修旅行で両国を訪れる予定。
清秀中学校・高等部の森健太郎校長は、「タイをはじめ、アジア、アセアン諸国には将来、世界の中心となる可能性の高い国々が存在している。それら経済成長著しい国々の活気を肌で感じることは意義深い」と、特にアジアとの国際交流事業の重要性を語った。交流に参加した生徒の多くは、現地で日本の恵まれた環境に気づかされ、初めて自らなすべきことの使命感に目覚めるという。
また、来春から日本語学校を同校敷地内に開校し、日本の大学へ進学を目指す留学生を受け入れることが決まっている。「留学生の多くはアルバイトをしながら学業に専念するため、キャンパス内での彼らの姿は日本の中高生の刺激に少なからずなるだろう」とも。英語科ではネイティブ教員が授業を担当し、卒業時には全員がTOEIC700点以上を獲得することを目標に置いている。
今後も国際教育に力を入れていく方針から、次年度から入試科目を変更する。国語と数学はこれまで通り必修だが、理科と英語は、いずれかを選択受験することとする。英語を選択した場合、出題レベルは英検4級程度。また、思考力やその過程、表現力など総合的学力を検査するため、適性検査対応型入試とすることも決まっている。
学力と人間力のバランスが
世界に通じる人材をつくる
1期生の様子について、森校長は「数学と英語の授業は習熟度別で行い、つまずく生徒に対してはフォローアップを重視し、得意な生徒は中2の春で、すでに高校の内容を学習している。英検では中学から始めた生徒が半年足らずで3級に合格した」と話した。同校では自学自習支援システム「すらら」を導入しているが、その全国チャレンジカップで学習時間、進捗状況において1位を獲得した生徒もいるという。
注目される結果を生んだのは、充実の授業時数が一つの要因とみられる。中1段階から月、水、金は7時間授業を実施、夏休みも2週間程度に短縮し、公立に比べ豊富な授業時数を確保している。中学3年間で比較すると、英語で2.1倍、数学1.7倍、国語1.8倍、理科、社会でも1.2〜1.3倍の授業が行われる。
副校長を務める加藤武史氏は「東大、京大を目指している生徒もいるし、医師を目指す生徒も少なくない」としたうえで、「ただし、受験に先走った中学時代を送らせたくはない」とも話す。中学では発達段階に応じ、人の気持ちを汲みとったり、感受性を豊かに育む教育活動が優先されるべきで、受験勉強には弊害があることを認め、必要以上に早く始め過ぎることに慎重な姿勢を示した。 |