全員が志望大学に現役合格
岡山市北部に位置する半田山の山上に岡山理科大学の緑豊かなキャンパスが広がる。敷地面積は約1,030,000u。東京ディズニーランドの2倍近い。
広大なキャンパスの一角に附属中学校が併設されたのは10年前。難関大学進学を見据えたカリキュラム編成ときめ細かな進学指導により、卒業生の多くが国公立や難関私大に合格している。
今年の卒業生は、東大を始めとして全員が志望大学に現役合格を果たし、浪人生はゼロだった。
「本校の取り組みに間違いはなかった」と新倉正和校長は胸を張る。
高校からの外部募集を行わないメリットは、思い切った先取り教育ができる点だ。英語と数学は中学教材を2年次で終え、3年次から高校教材に入り、5年次で修了。最後の1年間は受験勉強に集中して取り組む。
6年次の授業は各々の進路希望に沿った自由選択時間があるほか、希望者は放課後19時まで、トワイライト・セミナーと名付けた超難関大学受験対策の特別強化補習を受講できる。さらに週末には、同校の設立母体である学校法人加計学園の系列校と合同の進学講座が開かれる。これは東大・京大・国立医学部合格に照準を合わせた英語と数学の講座。河合塾講師によるハイレベルな授業が展開される。
充実したサポートシステムが整っているからこそ、生徒はゆとりをもって中高時代を過ごせる。東大に合格した生徒は、「中学時代から大学受験を視野に入れ、安心して勉強に取り組んでこれた」と振り返る。中学時代は陸上部で活躍した。動物好きで、帰宅後はまず飼っているインコやオウムと2時間ほど遊んでから机に向かったという。大学で獣医学を学び、研究したいという夢の第一歩を踏み出すことができた。
知的好奇心を刺激し、能力を引き出す
併設する岡山理科大学のポテンシャルを活用できるのも大きな強みだ。
特に理科教育は充実している。実験も多い。大学院生3人が実験助手として授業に参加し、安全性を確保したうえで、生徒一人ひとりが自らの手で実験を行う。こうした多様な実験の積み重ねが考える力へとつながっていく。
毎年夏休みには、岡山理科大学の提携機関「屋久島野外活動総合センター」(YNAC)の指導により、世界自然遺産の大自然の中でフォレストウォークやカヌーなどを体験。自然や環境保全への理解を深めている。
クラブ活動では、工学部教授の指導を受けて2009年にロボット研究部が発足。「ロボカップ・ジュニア大会」に参加している。
こうした活動が評価され、今年5月に文部科学省「中高生の科学部活動振興事業」に採択された。テーマは、「生物の環境適応・進化を探るフィールドサイエンスの推進」。今年新たに選ばれた学校は、全国で88校。岡山県からは同校が唯一採択された。
アカデミックな学習環境に恵まれた生徒たちは、知的刺激を受けて学習へのモチベーションを高めていく。これを進路の目標実現へと導いていくのが、教師陣の役割だ。
同校では中高一貫の職員室に1年から6年までの教員が揃い、連携して指導にあたっている。その名も「スーパー教師陣」。
「生徒の能力を引き出し伸ばすスキルを備えた先生方です」と新倉校長。
一般的に6年一貫制では、高校受験という区切りがない分、中だるみが懸念される。しかし、同校の生徒たちは最後まで意識の高さを持続させ、ほぼ全員がセンター試験を受験する。推薦で合格を手にした生徒も、「センター受けないと高校生らしくない」。自分の実力を測りたいという。 |
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国公立大学進学率を50%へ、入試制度を変更
めざましい進学実績が明らかになるにつれて志願者が増え続けている岡山理科大附属中学。今年度入試では80名の募集定員に対し322名が受験。4倍の倍率となった。
新倉校長は「本校の特徴が認められてきた」と手応えを語る。
実際に、「理科教育の充実」を評価する保護者は多い。オープンスクールの理科実験教室も毎回大変な人気で、参加者は千人を超える。
さらに来年度は、理科教育の充実と併せて、生徒一人ひとりの夢の実現をより確かなものとするために入試制度を変更する。
現行のシステムでは、3年進級時にPREP(難関大学進学)クラスとMEDICAL(医系進学)クラスに分かれる。これを進化させ、来年度からは入試段階で東大・京大・国公立大学医学部などを目指す「スーパー選抜」クラスと国立大・私立大を目指す「選抜」クラスのいずれかを選択してもらう。
適性に応じて早い段階でクラス分けすることで、生徒一人ひとりの能力をあますところなく引き出せると期待される。
新倉校長は今後の方向性を、「子どもの希望や適性を大切にする家族的な雰囲気を維持しながら、国公立大学進学率を現在の30%から50%へ引き上げていきたい」と話す。
そして、そのバックボーンである人間教育にも重きを置く。昨年度は、「Human Education<人づくり教育>」講座を開設し、オリジナルの道徳教本も製作した。教本の内容は、あいさつや言葉遣いをはじめ、ボランティアや環境問題への心得など、社会の一員として守るべき事柄を具体的に示している。
また講座では、報徳学園中・高等学校元校長の位田隆久氏を招き、「論語」を教材に道徳の授業が行われた。
生徒の能力を最大限に引き出し伸ばす教育システムの新たな展開と、人間教育の充実。開校10年目を迎え、岡山理科大学附属中学校はさらに進化を遂げようとしている。
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