鍛える教育
「自立した女性として生き抜くために、生涯にわたって通用する本物の実力を身につけさせたい」と、矢島了子校長は「学力革命」にかける思いを語る。
一般的にこれまでの学校教育は、知識の伝達に重点を置いた「覚えさせる教育」中心だったといえる。これに対し、意識的に「鍛える教育」を取り入れたのが「学力革命」だ。
例えば中学の数学で、毎授業の始まりに実施している「百マス計算」。これは計算力だけでなく、集中力をも鍛えている。
今年度から全学年の国語に導入した「論理エンジン」は、すべての学習の基礎となる論理的思考力や言語能力を鍛える。
「論理エンジン」は、昨年8月に完成した新しい教材。現代文の文章問題を難易度順に100段階にレベル分けし、文の構造の理解から始め、文章の筋道や論旨を的確につかむ訓練を行う。無学年制で全員レベル1からスタートする。レベル50の難度は難関大学の入試程度。レベル100まで到達すると、司法試験の論文試験にも対応できるほど力がつくという。
同校では本格的導入に先立ち、昨年9月より高校2年生の授業に毎週1時間ずつ取り入れ、その効果を検証した。センター試験の過去問題を使い、導入前の9月と半年後の翌年3月にテストを実施したところ、それぞれの試験問題に大きな難度の差はないはずだが、ほとんどの生徒は3月のテストで前回の得点を大きく上回った。なかには20点台から30点以上もアップした生徒もいる。
また、生徒たちが言葉の使い方を意識するようになると、日常の話し方も変わってくるという。
矢島校長は「日常生活において論理的な考え方ができると、生きていくうえで大きな力となります」と話す。
家庭学習への意欲づけ
英語力を鍛えるために、今年度より「グローバルイングリッシュ」も導入した。これは世界各国で利用されているインターネット英語学習プログラム。一人ひとりのレベルに合わせて「読む・書く・聞く・話す」を総合的に学べる。またTOEFL・TOEICにも対応している。
「グローバルイングリッシュ」の授業は毎週1時間。生徒たちは、その他に放課後や家庭で各自のペースで学習に取り組む。全生徒の学習履歴を一元管理できるので、いつどこで学習しても一人ひとりの進度と成績を把握できる。同校では学年ごとに到達目標を設定し、進度が遅れがちな生徒に対しては学習方法などのアドバイスを与えている。
先の「論理エンジン」も、週1時間の授業だけでは学習量が不足するため、家庭学習が欠かせない。
そこで矢島校長は、これらのプログラムを導入するに当たって家庭学習を促す仕組みも同時に取り入れた。それが、毎日家庭での学習内容を教科別に記録する「学習日記」だ。
生徒は例えば、国語の欄に「『論理エンジン』5分・漢字練習10分」などと記入。1週間ごとに担任教師に提出する。
「先生方は一人ひとりの学習内容をチェックし、アドバイスなどをコメント欄にびっしり書き込んで本人に返却しています。学習日記を通じて、これまで誰にも評価してもらえなかった家庭学習の努力が、先生方の目に見えるようになりました。子どもたちは、認められ評価されることで学習への意欲を高めます」と、矢島校長は学習日記導入の意図を語る。
実際に生徒たちの家庭学習の時間は増え、定期テストの平均点も上がっている。
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世界に羽ばたけ、全員に奨学金を給付
同校は2004年度に教育目標として新たに「国際的な女性リーダーの育成」を掲げた。その目標実現を目指し来年度、高校に「英語留学」コースを開設する。入学から卒業までの3年間を綿密にカリキュラムし、英検準1級・TOEFL550点以上の英語力と、論理力・コミュニケーション能力に長けた生徒を育成する。
高校1年次の2学期まで、週12時間の英語の授業で語学力を鍛え、3学期から高校2年次の夏休みまでの約8ヵ月間、オーストラリアの名門女子校6校に分かれて留学する。帰国後は英語力をさらに伸ばすために週15時間の英語の授業を設定。時事英語や速読を含め総合的な力を養う。
留学期間を1年ではなく8ヵ月に設定したのは、大学受験準備の時間を十分に確保するためだ。また留学中も同校からメール等で各教科の学習をサポートする。
矢島校長は「圧倒的な英語力と、国内外の難関大学への現役合格を目指します」と意気込みを語る。
なお同コースでは、保護者の経済的負担への配慮もなされる。留学期間中の同校への学費は全額免除。さらに同校の設立母体である学校法人五島育英会より、留学終了後に一律50万円の奨学金が給付される。
「留学で身につけた力を生かして世界に羽ばたいて欲しいという願いが込められています」。募集定員は20名。入試は他のコースとは別に、推薦・一般入試を行う。推薦条件は、中学3年で英検準2級以上、もしくは英語の成績が特に優れていること。一般入試の方は、リスニングを含む英語の試験のみ。「来年度は定員20名で募集しますが、徐々に募集定員が少なくなる可能性があります」と矢島校長。
内部進学生が増えていくと予想されるからだ。同校では、留学コースへ内部進学を希望する生徒のために、中学2年次ごろより別枠での英語授業を予定している。
「語学は鍛えれば必ず伸びます。早い段階から取り組めば、ほぼ間違いなく入試をクリアできるでしょう」。
そのため中学から入学を希望する生徒も増えているという。学力革命を始めとする学校改革を進めてきた東横学園は、英語留学コース開設によりさらに活性化する。
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