適性をつかみ
違う発想のできる人材を
前校長の任期満了に伴い、新しく校長に就任した谷川氏は読売新聞東京本社に入社後、カンボジア内戦や中東紛争を取材した特派員の経験を持つ。その後、パリ支局長などを経て、国際問題担当の論説委員として社説を執筆してきた。同新聞社退社後は帝京大学法学部教授に就任し、それまでの経験を生かし国際関係論、日本外交史、メディア論、文章指導といった分野で教鞭を執ってきた。中・高等学校の校長としては異色の経歴の持ち主といえる。
もっとも谷川校長自身は“異色の”と形容されることに対し、慎重な姿勢も見せるが、民間で豊かな経験を積んだ人材を校長として登用する例は、次第に増えており、むしろ異色だからこそ可能になる中等期教育に期待が寄せられる。
同校は1885年、東宮御学問所御用掛を務めた杉浦重剛氏によって東京英語学校として創立され、1948年に日本学園と改称、実に120年の歴史を刻んできた。杉浦氏はまた若くしてイギリスに留学し、数学や物理など理系学問を中心に学んだ経歴を持ち、日本文化を重んじる一方で、西洋科学との協調を目指した人物として知られる。谷川校長はこの理念を受け継ぎ、健全な保守性を堅持しながらもグローバリゼーションを生き抜く人材の輩出に取り組む覚悟である。
グローバリゼーションの高まりとは、単に海外における活動場面が増えるというだけでなく、国内にいながらも政治、経済、文化のあらゆる面において国外から様々な変化や情報がもたらされる状況に他ならない。そのような時代を生き抜くために「最も身につけなければならないのは創造性」と谷川校長は言い切る。
さらに「情報を受けた時、自分自身の中で消化し、その上で自身の創造性を加味したアイデアをいかに社会へ発信できるか。今後、ますますそういう能力が求められるのであり、生徒にはその能力を養ってもらいたい」と語る。教えられたことをマニュアル的に対応するだけでは職業としては務まっても、成功はしないというのが谷川校長のこれまでの仕事を通しての経験則のようだ。
10代で関心を持ったことは、その人間の「適性」に結び付いていることが多い。生徒一人ひとりに内在する創造性を引き出しながら、人とは違う発想ができる人材の育成に谷川校長のもと教職員が一致して取り組んでいく。
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英語教育に多彩なアプローチ
国際性を身につける上で、教科面での取り組みは無論、多文化共生の観点から国際理解教育への取り組みは欠かすことができない。同校では中高一貫教育のメリットを生かし、中1〜高2までで基本的な英語構文の全てを暗唱、マスターする取り組みや、ニュージーランドでの短期留学・ホームステイを通して異なる文化、生活を体験するプログラムを実践してきた。英語基本構文の暗唱は中1で50例文、中2〜中3にかけて80例文、高1〜高2にかけては100例文を暗唱するというもので、毎朝行われる小テストによって定着度を確認し、未定着の生徒に対しては放課後指導など、サポート体制を徹底させている。
さらに、中学校ではネイティヴの教員による少人数クラスを実現し、LL教室でのボイストレーナーを活用するなど英語力向上のための環境整備も十分といえる。そのため、中1の春休みには2週間のホームステイに参加する生徒もいるほどだ。
高1〜2年の希望者を対象にした語学研修では3週間かけ、語学のみならずファームステイや、雄大な自然に触れ感動を味わう高価値な内容となっている。現地のホストファミリーは受け入れた生徒に家族としての応分の仕事を与え、ともに汗を流すことで絆を深めていく。生徒募集対策室長を務める広江允教諭は「生徒は異文化に触れ戸惑うこともあるでしょうが、帰ってきた時は人間的に成長し頼もしく感じます」と目を細める。これまでの参加者の中には卒業後、オーストラリアに留学し海洋学研究に取り組んでいる生徒もいる。
その他の教科においても数学は中1で年間3,500題の練習問題をこなし、中2〜中3ではそれぞれ週6時間の授業時間を確保し、2,000題〜2,500題の練習問題にあたる。黒板カードや定理カルタなどゲーム性も加味し、楽しみながら学習を進める。中3の学年到達目標として全員が数学検定3級(1次合格)を目指す。高2からは文系と理系に別れ、各カリキュラムの中で選択授業を提供、多様な進路指導を実践している。
国語科では中学時より著名な作家の作品に多く触れることにより読解力を養い、調べ学習を通して発表力や総合的な国語力をつけていく。社会事象にも興味を持てるよう言葉による理解を深め小論文の学習につなげている。高校では自身の考え方を持ち、他者と議論を深められるようディベートも取り入れた授業を行っている。
さらに、志望大学への一般受験の現役合格を目指し、全学年で夏期・冬期に12〜18日間の講習を組み、高3生には大手予備校講師による「受験必勝教室」を開くなど万全な受験指導体制も見逃せない。
卒業生の多彩な顔ぶれに見る
持ち味を生かす教育の実践
谷川校長はこれら基礎学力の養成を中等期教育段階において最も重要と考えている。その上に、クラブ活動や学園祭などの行事でリーダーシップを発揮できる行動力、実践力を身につけていくことが、やがて自分自身の幸せに結び付き、周囲をひいては社会を大切に考える人材の育成に結実すると考えるからである。
同校は120年の歴史の中であらゆる分野に優秀な人材を送り出してきた。吉田茂元首相、日本画の横山大観、岩波書店の創始者・岩波茂雄をはじめ、世界的な学者、政治家、芸術家や俳優、スポーツ選手など枚挙にいとまがないほどである。自由な校風の中で自主性を尊重し、各生徒の適性を見出し、10年後、20年後に結果の出る教育を実践してきた所以だろう。
生徒一人ひとりの夢を実現するため、時には厳しい現実に耐えることがあるだろう。だが、谷川校長は「中学、高校時代はそれ自体が尊重されなければならない人生の貴重な一時期であり、将来に向かっての投資だけの期間とするのは生徒にとって酷であり、人生の大きな損失になる。多感な少年時代に彩りに満ちた幸せ感のある学園生活を提供していきたい」と、同校のよき伝統を継承していく考えを示した。
<2006年度中学校入試説明会>
11月12日(土)11月19日(土)12月3日(土)1月14日(土)
同校において開催。時間はいずれも10時30分〜12時まで。
<2006年度高等学校試説明会>
11月12(土)11月26日(土)12月3日(土)12月10日(土)
同校において開催。時間はいずれも14時から。
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