校長が一番下で支えます!
海外留学制度も充実
井上実校長の校長室のドアは常に開いている。生徒は井上校長の姿を見つけると数学を教えてもらったり、時には悩みを相談したりする。昨年9月の文化祭では、井上校長は教職員バンドに加わり中島みゆきの「宙船」を熱唱。生徒と一体となって文化祭を盛り上げた。
「校長というトップの存在になったからこそ、一番下となって生徒を支えたいと思っています。生徒は一人ひとり様々な能力を持っています。そうした個性を認め、褒めて伸ばしていく。『自信』『自尊心』『自負心』『自己肯定感』の4つを高めてこそ、やる気や困難に立ち向かう姿勢が生まれてくる。学校での取り組みは、すべてそこにつながるべきだと考えています」
同校が掲げる理念「生徒第一主義」を自ら行動で示している井上校長。今、力を入れているのはグローバル教育だ。
イギリス語研修に加え、2019年1月からは高1を対象に「カナダ特別留学プログラム」が始まった。約3ヵ月または4週間、現地の学校でカナダ人学生と一緒に学ぶプログラムだ。すでに4週間の留学を体験した生徒からは「将来は起業したい」という言葉が出ているほどで、同年代の海外生徒に大いに刺激を受けている。さらに、今年の夏休みには、中1から参加できる「オーストラリアスタディーツアー」もスタート。語学だけではない海外体験を早い時期からしてもらいたいと考えている。
「私は教育の根幹は『守破離』にあると思っています。まず基礎を身に付け(守)、型が身に付いたらそれを破る(破)。そして、最後は型から離れて自分の型を確立する(離)。そのようにグローバル教育でもただ留学制度を設けるのではなく、きちんと系統立てて実施していきたいと考えています」
高校に東京初の探究コース
中学ではチューター制度
井上 実 校長
昨年度から高校のコース制を刷新。東京初となる「探究コース」を設置し、「探究コース」「文理コース(選抜含む)」「総合コース」の3コース制となった。探究コースには週2時間、課題探究の時間があり、「エッグドロップR(卵を3階から落下させ、A4の紙2枚を使って割れないようにする方法を考える)」などのテーマに取り組み、新しいことを生み出す力を育んでいる。
さらに、今年の中1からは週2日、放課後に大学生チューターの指導が受けられるようにもなった。科目は数学と英語。「チューター制度は自分から学ぼうとする姿勢を身に付けられるよう、強制にはしていません。この時期に基礎や勉強の仕方を身に付けてほしいと思っています」と井上校長。
現在、中1は特別クラス1、一般クラス4の5クラス体制だが、高1で3コースに分かれ、さらに高2進級時には高入生とクラスをシャッフル。公立中学から来た生徒から刺激を受け、多様な人間関係を築けるようにする。
この一連の流れも「守破離」の考えに沿って系統立てて考えられている。中1、2では基礎学力を固め(守)、中3、高1で人間関係を構築(破)。高2、3では自立(離)と、丁寧に段階を踏みながらじっくり人間力を育んでいく。
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地元の方から高い評価
「いい顔をしているね」
このように校長就任以来、スピーディーに学校改革を進めている井上校長。「本校は柔道部など全国大会レベルの部活動も多くありますが、そうした生徒だけが入学しているわけではありません。どんな生徒も充実感を持って学校生活を送れるよう、雰囲気づくりに努力しています」と語る。
この春、中学・高校とも入学者が増加。その人気の秘密の一つは生徒たちの朗らかな姿だと言う。「楽しそうに通学する生徒を見て、町の方々から『足立学園の生徒さんはいい顔をしていますね』と言われることが増えてきました。他にも、異性の目を気にせずのびのび学校生活を楽しめる男子校の良さも支持されていると感じています」
そんな同校の学校生活を語るのに、三大行事は欠かせない。一つは33キロ(山手線約1周分)を歩く中学の「強歩大会」だ。縦割りのチームをつくり、上級生が下級生を励ましながら荒川河川敷を歩き、葛西臨海公園を折り返し地点に学校へ戻ってくる。この強歩での達成感が自信となり、東日本大震災の時には歩いて帰宅した生徒もいた。まさに生きる力につながっている行事だ。
男子のパワーでクラスが一致団結する体育祭は、棒倒しなどの種目も安全面に配慮しながら実施。学園祭は地域の商店街のフェアも一緒に開催され、2日間に6000人を動員する一大イベント。男子校には珍しく中学で合唱コンクールも開催され、感動的な歌声を響かせている。
「私はよく吉田松陰の『夢なき者に成功なし』という言葉を生徒に伝えています。この夢は自分本位の夢ではありません。世のため人のためにできることを考え、その達成のために自分を磨き続ける『志』のことです。松下村塾では数学も外国語も教えていませんでした。日本の将来について議論し、必要な知識は自分で学び取っていたのです。志を持つことができれば、生徒は自ら学び始めます。同時に教師も一緒に学び続けなければなりません。『教育』から『共育』へと教師も考え方を変え、挑戦していきたいと思っています」
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