“変える”ことは“創る”こと
富士見丘中学校・高等学校は2007年より大きく変わるが、その“創る”と言うべき大きな変革は、次の3点である。
まず、校名の由来にもなった現在地を去り、新たな場所でより豊かな教育環境を提供するため、2006年夏、横浜市旭区二俣川へ移転すること。移転先は県立高校の跡地。現在の3倍の広さの10,000坪の敷地で、アクセスも横浜駅から急行で11分、駅から徒歩12分と非常に便利な場所となる。
2点目は、新しい教育のスタイルを提供すること。単なる中学校と高校を合わせた「中高一貫校」ではなく、6年間の「中等教育校」として未来を見つめた新しい教育を行う。
3点目は、学校名が変わることである。新しい校名は「横浜富士見丘中学校・高等学校」。校名に“横浜”を冠し、名実ともに国際都市横浜を代表する女子校を目指す。
新しい教育の3つの柱
6年間の「中等教育校」として横浜富士見丘では、従来の「人間教育」、「学習指導」に「進路教育」を加えた3つの柱で新しい教育を行うという。
「従来は柱ではありませんでしたが、進路に関する教育も当然行っていました。しかし、未来を見つめたとき、女性の『職業』はもはやアシスタント的なものでなく、人生を考えるときになくてはならないものになっていくのは目に見えています。ですから、そういった意味で『進路教育』は非常に重要だと考え、柱の1つに掲げたのです」と渋谷一郎校長は説明する。
将来の進路を考えるためには、自分の個性に気づくことや、自分を生かすことを考えることが必要になってくる。そして、それが明確にできれば、逆に進路(仕事)のための大学などの選択や、学習にフィードバックされ、必然的にすべてにおいてがんばることができる。
同校では、スタートとなる「気づき」のためのさまざまな体験を用意し、子どもを突き動かし、行動させていけるような支援をしようと準備中である。そして6年間は2年ごと、3つのステージに分けられ、成長・発達段階に応じた教育を行う。
「『進路教育』をしっかりやることが、21世紀を生きる女子生徒たちには必要であり、そのためにはどうしても6年間が必要だったのです」と渋谷校長はあえて「中等教育校」にチャレンジする思いを話す。
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学習内容を2分化
2つめの柱となる「学習指導」のコンセプトは、一人ひとりの知的能力をバランス良く育むことである。そのために学習内容を大きく2分化し、進学のための「高い学力の育成」と人格形成の基盤となる「優れた教養の育成」を指導目標に据えている。
中学・高校の学習内容を効率よく習得するため、3ステージ制で、2期制を導入する。土曜日は各ステージでフレキシブルに対応し有効的に活用する。授業はこれまでの65分授業を継続。
「本校は81年間培ってきた女子教育のノウハウがあります。新しい教育と言っても、ゼロからのスタートではなく、伝統を生かしつつ、社会のニーズに合うような教育をプラスしたり、変えていくのです。時代はもっともっと変わっていくでしょう。生徒たちには、将来について考えていく創造力や感性、目標に向かって努力する行動力を養ってほしいと思います」。
また「人間教育」では、建学の精神を根幹に、「福祉」、「環境」、「国際」、「女性と文化」の4つに「情報」を加えた5つのテーマを人間教育の具体的な指導内容として設定している。これらを日々の生活の中で実践することで、様々なことに出会い、感動を覚え、考えを深めるよう促していく。
充実した教育環境
「移転を決めたのは、新しい教育を行うためには、今の施設では実現が難しいと思ったからです」と渋谷校長はきっぱり言う。
新天地は今のキャンパスの3倍、10,000坪あるが、生徒数は増やさず、新しい教育のための充実した施設をつくる。
まだ計画段階であるが、例えば英会話を学ぶための特別教室は、そこへ足を踏み入れるとまるで外国のような環境が整えられていたり、校内には美術作品を展示し、情操面の涵養も図っていく。授業は、黒板とチョークを使って一方的に講義するようなものではなく、パソコンなどを活用しながら、生徒との双方向の意見交換ができるようにする。
「校舎はオフホワイトのタイル張りで、女子校というよりは、ユニセックスのイメージですね。もちろん安全面も細心の注意を払い、しっかりとした耐震構造と防火設備、セキュリティーシステムを完備します」。
県立高校の跡地に同校が移転することは、地域の方々にも歓迎されており、間もなく「新しい女子教育」には、今後多方面から注目されることになるだろう。
生徒募集は、2007年早春。
「81年間の女子教育でやり残したことがないのなら、男女共学校にして新しくスタートしてもよかった。だが、時代が大きく変わり、新たな女子教育の必要性を感じ、これをやり抜くことが私の使命だと強く思ったのです」。渋谷校長は大きな決意を見せた。
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