ボトムアップで
強化される学校力
正門をくぐれば、100メートルに及ぶ銀杏並木が続く日大第二。この道は四季折々の色合いに輝いて、生徒たちの憩いの場となっている。ゆとりあるキャンパスは敷地総面積4万3,731平方メートル。本館校舎をはじめ、芸術校舎や理科校舎、武道館、グラウンド、テニスコートやマスターコートなどの施設が潤沢に並び、外部から訪れた人は驚きをあらわにするという。
2011年に校長就任した悉知中学校校長と井上高等学校校長。就任3年目を迎えたお二人だが、一方的に意見を教職員に押し付けることはない。日大第二の校風として、トップダウンで命じるのではなく、教員たちで議論して改革案を決め、それを校長が許可を出す、つまり、ボトムアップされている学校なのだ。
「全員の意見をまとめるという過程を踏むため、改革案の決定までの動きは速くはありません。しかし、一度決まれば、職員全員が真剣に取り組むためにスムーズに進みます。また、変化に対する教職員の意識も高く、自分たちで考えることの大切さがわかりますね」(井上校長)
「教員からの提案で決まった事案の中には、日大法学部との高大連携による疑似裁判体験授業もあります。秋葉原で実際に起きた事件などを参照し、被告や原告、裁判官役を教授や院生が務めますが、裁判員役は中学生。平等に双方の話を聞き、判別して、有罪か無罪を決定するという判断力を鍛える授業です」(悉知校長)
無論、校長が改革案を考え、諮問する場合もある。ただし、その案が教員会議に直接提示されるのではなく、委員会の議論を通じて会議にかけられる。それも日大第二の良さにつながると両校長は語る。
全員共通履修で
学ぶ団体戦
この「全員で考えて実践する」という行動の指針は、教育にも現れている。
最近の私立中高で、多くの学校が取り入れている入学時からのコース選択制。本校では導入せず、高校1年までは全員が同じカリキュラムで学ぶ。高校2年次からは理系・文系、国公立私立や文系理系の進路選択によって分かれていくが、生徒たちのつながりは強く、受験年度になっても苦手な分野にぶつかれば、生徒同士で教え合っている。個人ではなく、友人同士団体で伸びていくこの「学びの団体戦」こそ、日大第二の特徴なのだ。
「社会にはさまざまな人がいます。その中で生きる道を見つけるには、中高時代に少人数で固まらず、多くの個性ある生徒たちの中で、たくさんの友人を作る必要があるのです」(悉知校長)
「互いに切磋琢磨しあう状況こそ、将来の生きる力につながります。ですから、あえて習熟度別授業や、高校からの入学生と差別化してしまう先取り授業は行わずに、全員がともに学ぶ。こうしてある意味の平等感と刺激を与え合う、小さな社会を学校生活に取り込むことで、全員で成長を目指すのが日大第二の教育方針です」(井上校長)
進路指導にも特徴がある。中学1、2年で自分はどういう人間か、世の中にはどんな仕事があるのかを学び、3年では自分の将来について考える。高校に入学後は自己発見と進路発見で、上級学校や進路情報の理解を行い、最終的な進路選択の後、進路実現へと導いていくのだ。この際に進学先として選ばれているのが、日本大学や他の大学だが、現在の進学率は日大進学は約3割、国公立を含む他大学への進学が5割超となっている。しかし、理工学部の一部学科や医学部など、日大には日本のトップの学部学科が多い。今後はそのことを広く生徒に知らせて、日大への進学率をアップしようというのが一つの目標である。 |
中高入試にこだわる
面接の重要性
本校では、関東の中学受験で8割以上の学校が廃止の方向に動いている面接試験をあえて取り入れている。
「受験では、本当に本校への進学で伸びる生徒がどうかを判別するのも必要です。そのために面接は欠かせません。また、生徒の言葉遣いや家庭教育なども把握、後の指導につなぐことができます」(悉知校長)
中学受験は午前中に4教科の筆記試験があり、午後からは面接。午後入試が実施されないのは、時間調整ができないのと、一日に複数回受験する小学生の精神的な負担も考えての配慮である。また、日程は都立の中高一貫校と同じ受験日(2月3日)だが、これは都立がこの日に決める以前から日大第二が続けてきた日程で、今のところ動かす予定はない。都立とぶつかることで、本校を第一志望にする生徒の人数を確実に把握できるという利点もあるためだ。
「高校受験では、推薦枠で優秀な生徒を確実に確保したいという考えはあります。その際も面接に関しては中学と同じ考えを持っています。特に推薦入試では筆記試験がないため、複数の教員と生徒一人の形式で、将来の目標や高校でやりたいことなどを聞き、しっかりと生徒の人間性を見るようにしています」(井上校長)
3年後には創立90周年を迎える日大第二。時代とは逆行するその姿勢に、学校教育の原点を見た思いだ。
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