今春から中学に
特別選抜クラスを設置
今年から中学に「特別選抜クラス」を設置した城西川越中学校。「本校では20年間、スタートラインは一緒という姿勢でやってきましたが、大きな決断をしました」と阿部尚武校長。上位層の生徒が足踏みをすることなく、これまで以上に学力を伸ばせるように導入を決めた。現在クラスには16人が在籍し、難関国立大学合格を目標に勉強に励んでいる。
特別選抜クラスならではの取り組みの一つは、副担任がネイティブの英語教員であること。ランチや休み時間にも交流することで、日常会話が自然に身に付くようにしている。また週3日は7時間目に英語・数学・国語の授業を実施。中2では「アメリカンサマーキャンプ」として2泊3日の英語合宿。中3では全員参加でオーストラリアにターム留学(5週間)に行く。
以前より、全校生徒による英語のリスニングを毎朝行ってきた同校。男子校ではあるが、大学受験や社会に出たときに必要と、英語教育に力を入れている。
当初は、特別選抜クラスと普通クラスの間に溝ができてしまうのではないかと心配だったと入試広報部の並木大典先生。しかし、学校行事や部活はすべて一緒。週3回の特別カリキュラムも部活動が終わった後に実施したおかげで一体感が生まれ、特別選抜クラスだけは違う、という感覚は生まれなかった。
現在、模擬試験の上位は特別選抜クラスの生徒が占めているが、普通クラスの生徒も入学後に着実に力をつけている。2年に上がる際、十分に力をつけた生徒は三者面談などをした上でクラス変更が可能であり、これが普通クラスの生徒たちの目標にもなっている。
小学校の基礎基本を問う
「SA入試」を導入
同校の改革は学習面だけはない。今年度の入試から新しく「SA(Standard Aptitude)入試」を導入。これは標準的な学力を重視する入試で、科目は算数と国語。「合格点140点を目処に、優秀な生徒を獲得したいと思います。試験の内容は、小学校の範囲で応用できるものが基本です」と入試広報部部長の田邊幸雄先生。とはいえ、決して難易度の低い内容が出題されるわけではない。この入試での募集定員は約10名で、一般入試を受けることも可能。受験生の選択肢も広がることになる。
SA入試に踏み切ったのは、「基礎基本の問題を正確に解ける素養を持つ生徒を発掘したい」という思いから。基礎学力がついていれば、入学後に大きく成長してくれると考えている。
この入試は1月26日の第3回で実施。入学手続期限は1月30日とかなり早い。その理由は2月に3回ほど行う補講授業のためだ。「一般入試で入ってくる生徒と足並みを揃えるために、応用力、思考力を養える授業を行う予定です」と並木先生。11月23日には過去問題の解説学習会とSA入試プレテストを同校で実施する。中学受験に備えてこなかった児童もチャレンジできる機会を設け、多くの受験生に門戸を開いていく。
学校は家
教員や友達は家族
さらに同校では、今年の1月に新校舎が完成した。敷地内の最南に立つ新しい棟には中学校と450人収容できる大講堂、生物実験室・化学実験室が入っている。
新校舎のテーマは「環境」。南側の多くをガラス張りにし、風通りにも配慮した。夏は涼しく冬は暖かい。太陽光が燦々と差しこむ光あふれる学び舎となっている。
新校舎と特別選抜クラスやSA入試の導入など、ソフトとハードの両面で新しくなった同校。「そこにこれまでの城西川越の良さが融合してこそ、進化できると考えています」と並木先生は語る。
同校の魅力は「学校は家、教員や友達は家族」と思える温かい校風。そこまで思える手厚い指導の伝統があってこそ、新しいことに挑戦しても土台は揺るぎないのだ。 |
中学では普通クラスでも成績上位者と希望者を募り、部活動後に「特別学習会」を行っている。ここでは通常の授業では扱えないような発展的な内容を学ぶ。さらに補習が必要な生徒には「課外補習」を実施。都合で特別学習会に参加できない生徒にも、一人ひとりに合ったテキストを渡して、添削指導を行っている。
さらに高校では、19時に部活動が終了した後、学校で21時まで自習できるようにしており、ときには、ミニ講義を行うこともある。そのため、職員室の回りには小黒板や机が常に用意されている。
「19時まで部活動を頑張った生徒は、家に帰ると疲れて寝てしまう。そこで、学校で自学自習の時間を設け、わからなければ教員に質問してもらうスタイルをとっています。保護者の方には『学校で勉強しているので、安心してください』と伝えています」と並木先生。教員たちも夜遅くまで付き合って生徒をバックアップしている。
また、3年前から導入したカウンセラーはあえて校外に。「相談に行きたいけれど、周りの目線を気にして行けないケースに配慮しました」と阿部校長。メールや電話でも相談することができ、川越駅近くのカウンセリングルームには、生徒をはじめ、保護者からも相談が寄せられている。
家族に接するような温かい指導で育まれる生徒たち。この我が家のような学校に恩返しがしたくて戻ってきた同校のOBの教員は13人。また、非常勤を含めて100人近い教員が同じ熱意を持っている。
「この教員なくして本校は成り立ちません。熱心な指導をしてくれるので、私は安心して任せています」と阿部校長。「城西川越を卒業して良かったと生徒に思ってもらいたい。10年、20年後に立派に活躍している社会人になっていてほしいと願っています」と語ってくれた。
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