「Book3」から受験英語へ
同校では今年度より中学1・2年の英語教科書を、従来の検定教科書から「プログレス21」(イエズス会出版)に変更した。
「教科書変更は英語教育の根幹にかかわる問題です。プロジェクトチームを編成し、慎重に検討を重ねてきました」と高木修教頭。
プロジェクトリーダーの岡見英一主任は「以前の教科書は、中学から高校への橋渡しがよくなく、ギャップを埋めるのに苦労していました」と変更理由を説明する。
検定教科書は新指導要領実施以降、急激にレベルダウン。そのため副読本などで、問題演習・リーディング・リスニングなどを組み込み、学力を補ってきた。しかし系統的な学習という点で、抜本的な見直しが必要だったと言う。
プログレスは、主に私立中高一貫校で採用されている。日常的な場面での自然な会話、英語圏の文化・歴史・物語など多彩な内容で、英語の4技能(聞く・話す・読む・書く)をバランスよく伸ばすよう構成されている。
検定教科書に比較して、かなり難度が高い上にボリュームも多い。例えば単語や熟語の数は、検定教科書のおよそ3倍にものぼる。
テキストは「Book1」から「Book6」までが用意されているが、同校は「Book3」までを導入。「Book3」では、高校生レベルに入る。
「中学3年間で『Book3』までを終えようとすると、かなり無理があります。本校では中学1年から高校1年までの4年間をかけ、確実に習得できるようカリキュラムを組んでいます」。
同校では生徒の成長過程を2年ずつ3ブロックに分け、それぞれに対応した指導を展開している。順に「導入期の第1ブロック」「変化の大きい第2ブロック」「受験期を迎える第3ブロック」と位置付けている。
従って、第2ブロックでプログレス「Book3」を修了すると、第3ブロックからの高度な受験英語へとスムーズにつなげていくことができる。
全教科のシラバスを進化
プログレスを導入して2ヵ月あまり。「生徒たちの反応は予想以上によい」と岡見主任は目を細める。
専用のCDプレーヤー「リピーター」を用いて、ナチュラルスピードの英語を聴き取っている。スピーキングのダイアローグにもスピーディに対応。早いテンポを楽しんでいるようにも見えるという。
「以前は、週6時間の授業を、教科書3時間・プラクティス2時間・コミュニケーション1時間というように別々に設定せざるを得ませんでした。しかしプログレスならトータルに学べます。生徒はプログレスを軸に、体系的に英語を学べるようになりました」。
現在、岡見主任がリーダーを務めるプロジェクトでは、シラバスの部分的修正を進めながら、現場から生まれた新たなアイデアも検討。さらに充実した指導を目指している。
一方、高木教頭は「プロジェクトは、個々の教師のものだったスキルを、チーム共通のメソッドへ高めました」と評価する。
英語の教科書変更をきっかけに始まったプロジェクトが、学内を活性化し波及効果を生んだ。現在は全教科にわたってシラバスの見直しを進めている。
高木教頭は「指導法や副教材などの細部にまでわたって再点検し、6年一貫のカリキュラムをより進化させたい」と語る。
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読書冊数急増
同校の大きな変化のひとつとして、図書館利用の著しい伸びが挙げられる。
図書館は1階、中央エントランスを入ってすぐに位置している。カウンターやソファは曲線的に美しくデザインされ、全体的にゆったりとくつろげる雰囲気だ。ゆとりをもって書架が並び、5万5千冊の蔵書を有している。
放課後、図書館は多くの生徒で賑わう。満席時には書架と書架の間に座り込み、読書に熱中する生徒もいるほどだ。
昨年度の貸し出し件数は13,465冊。生徒1人当たり11冊の計算となる。
図書館長を務める、情報センター部の柳本博主任は「あまり本を読まなかった生徒たちが、2000年度以降、図書館の利用者も本の貸し出し件数も急増しています」。その要因は、司書の伊東由紀子教諭による丁寧な読書指導と言う。
伊東教諭は、2000年度から同校の図書館司書を務めている。当初は閑散としていた図書館を、もっと生徒に利用してもらいたいと様々な工夫を凝らしてきた。図書館を訪れた生徒の読書傾向をつかみ、生徒一人ひとりに合った本を紹介してきた。口コミで図書館に生徒が集まるようになると、本の紹介カードを手作りし、目に付く場所に掲示。また書店を参考にディスプレイも工夫。生徒の目が本の表紙に留まるようにした。やがて図書委員会の活動も活発化し、「図書委員からのおすすめ本」を企画。広報活動にも取り組みだした。
伊東教諭は「今では、生徒同士が本を紹介し合うようになってくれました」と顔をほころばせる。
高木教頭は「読書は教科の学習と違って、長い時間をかけて幅広い知識が蓄積されていきます。その教養が熟成され、いずれ教科の学習にも良い影響を及ぼすでしょう。しかし、最も大事なことは、生徒が読書の楽しみを知ることです」と語る。
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