四季を感じる緑多き校舎
震度7に備える耐震性も
「一日のうち生徒が一番長い時間を過ごすのは学校です。何より生徒の視点に立った学校づくりを目指しました。快適性はもちろん、安全性も総合的に見据えての新キャンパスになっています」。そう話すのは立正中学校・高等学校の事務長の石倉尚文先生だ。
快適さの源となっているのは、キャンパス全体の80%を占める豊かな緑。「杜の学び舎」と言われるほど、自然を取り入れることを重視した馬込キャンパスでは、正門から教室棟までは桜並木が出迎えてくれる。しかも教室の壁やフロアはすべて木製。校舎の中でも木の温もりを感じることができるのだ。
教室棟と体育館やプールの間にある中庭には、ウッドデッキのテラスを設置。天気のよい日はここでランチをとることもできる。この吹き抜け部分は、自然通風システムにより、風の塔の役割を果たし、教室へと自然の風が流れる構造にもなっている。
「中庭テラスではミニコンサートもでき、2階に通じるらせん階段は、観客席にもなるでしょう」と石倉先生。まるで自然の中で学んでいるような開放感あるキャンパスが目に浮かぶ。
災害時の備えも万全を期した。同校では東日本大震災後、建物の設計をもう一度見直しした。天井や柱の耐震を強化し、設計上は震度7まで耐えられるようになった。備蓄も生徒全員1,200人の飲料水と食料3日分を用意。校庭には仮設トイレが3〜4ヵ所設置できる配管も整備した。携帯できるポータブルトイレも全員分準備している。さらに自家発電装置も設置し、万が一停電になった場合でも、体育館や廊下など最低限必要な光源を確保。さまざまな事態を想定している。
敷地内を通る道は、一般の人も通行できる散歩道にもなる。ホールを地域の講習会やカルチャースクールなどにも貸し出したいとも考えている。
「西馬込は川畑康成、北原白秋などの文士をはじめとする芸術家が交流した町です。日蓮宗の大本山である池上本門寺も近く、歴史と文化の風土に恵まれています。また、地域の方々も古くから住んでいる方も多く、青少年活動にも積極的。本校でもぜひ地域の方々との交流を深めたいと考えています」と石倉先生。
そうした活動が広がる一方、外部の方のとの接点も多くなることから、安全面にも配慮をしている。守衛は日曜日も常駐。不審者の侵入を防ぐ『安全カメラ』も設置する予定だ。
30人の少人数クラス
図書館もメディアセンターに
新キャンパスの教室棟は6階建て。教室数は全35室と大幅に増えることにより、1クラス25〜30人程度の少人数クラスが実現。目の行き届いた、丁寧な指導が、今まで以上に強化される。
さらに2階から6階までの各フロアには、生徒同士の語らいの場となる「ラウンジ」を設ける。ここは生徒と先生が気軽に話せるスペース。また、教職員室にはカウンターを設置。生徒が声をかけやすいような構造を考えている。他にも進路や三者面談などに使用できる面談コーナーも3〜4ブース作られる予定だ。
さらに新しい図書館には、検索端末を導入し、メディアセンターとして生まれ変わる。蔵書はこれまでの3万6千冊から5万冊と増加。図書室とは別に自習室も設置される。理科室も合計2室だったものが、化学、物理、生物の3教室に。自然観察のできる人工池「ビオトープ」もつくられる。 |
「太陽熱・地熱・風力・雨水などの自然エネルギーの活用も進めます」と石倉先生。太陽光発電と風力発電では、発電量をモニターで表示。リアルタイムで発電量を知ることができ、「環境やエネルギー問題に興味を持ってくれる動機付けになればと考えています」と話す。
芸術棟には音楽室、美術室、家庭科室、多目的ホールなどが入る。多目的ホールは最大600席。そのうち300席はロールバックチェアになっていて、壁に収納できる。ここには仏像と曼荼羅が安置してあり、礼拝堂にもなる設計。小体育館として卓球やバドミントン練習もできるマルチ空間となっている。
広くなるランチルームは、中学3年生から利用が可能。中1、2生は教室で教員と一緒に昼食をとる。これまでは弁当持参が基本だった1、2年生も、新キャンパスでは「リクエストランチ」がスタート。注文すれば1日から宅配弁当を利用することができる。
変わらぬ教育理念
人間力育む「R−プログラム」
学習内容も移転を機に、従来から実施していた人間力を高める教育をブラッシュアップ。「R−プログラム」としてスタートさせる。これは大学、社会人になったときも見据えて、「学力や経験を生かすために必要な人間力」の構築を目指すものだ。
「新キャンパスに変わりますが、教育理念は変わりません。今までと同じように一人ひとりのニーズに応じた教育をやっていくことには変わりません。新しい環境の中で、新生立正中学校・高等学校が育まれていきます」と石倉先生は語る。
馬込キャンパスは、都営浅草線「西馬込」駅から徒歩5分。大崎駅からスクールバスが朝5便、夕方7便出る。大森駅や中延駅から東急バスも利用できる。また高校生は自転車通学も可能にした。石倉先生はアクセス方法が増えたことで、通学エリアが格段に広がったことをアピール。さまざまな通学ルートが提案し、板橋区や浅草方面からの入学者も広く迎えたいと考えている。
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