キリスト教を教育の柱として「聖書」「国際」「園芸」という独自の学びを掲げている恵泉女学園中学・高等学校。「園芸」といういのちを育てる科目を大切にしている同校では生物などの理科の授業にかかわらず、実際に体験することに重点をおいている。
今回取材したのは、中学1年の理科の授業。花の時から観察を続けていた「オオアラセイトウ」(アブラナ科の植物)の果実をスケッチ、分解し、気付いたことをまとめる単元だ。
担当の庄司さやか先生が用意したのは、手作りのプリント。黒板の文字を写すだけの勉強ではなく、観察したことを自分で書き込めるようになっている。
「生徒は中学受験を経験しているので、花のつくりや果実についてはすでに知っています。しかし、実際に花をよく観察してみると、花によって大きな違いがあることに気付きます。中学1年の理科の授業では最初にサクラ、ユリ、オオアラセイトウ、ツツジ、タンポポの5つの花を観察するのですが、花弁の形だけでも多様な種類があります。比べながらよく観察することで、『先生、前回とは違う形ですが、どうしてですか』という質問も出てきますね」
理科は苦手という女子生徒も多い中、「楽しい」「発見できた」といった経験を通して、「理科に興味を持ってもらいたい」と庄司先生。面白いと思ってもらうことが、学習のステップアップにつながると考えている。
手作りなのはプリントだけではない。授業で使用する副教材「理科実験の手引き」も手作りだ。1年間の実験内容についての解説をまとめたもので、一冊になっているので、後からでも見直しやすく、バラバラにならない。「1年生は1枚ずつ渡すとなくしてしまうことがあるので、1冊にまとめました。2年生以降はこの手引きを参考に、自分なりの方法で整理できるように指導しています」。
今回の授業では、剃刀を使って子房(さや)を切り開き、果実を取り出すことも行われた。観察する生徒の表情は真剣そのもの。これまでの学習で観察の方法やスケッチの仕方を身に付け、観察眼がしっかり養われていることが伝わってくる。集中した雰囲気の中、自分なりにプリントにまとめていく生徒の様子は、中1ながらまるで植物学者のようだ。
同校では物理教室と地学教室が1つずつ、化学教室と生物教室は中高別々に1つずつと計6教室もある。女子校とは思えない贅沢な設備だが、それには理由がある。同校では理系・文系とコース分けをしていない。理系・文系にとらわれず、表現する力や分析する力を身に付けてほしいと考えているからで、そのため、全生徒が自由に授業を選択できるよう、多くの特別教室が用意されているのだ。 |