GMARCH合格が3割増
中間層の実績底上げに成功
キャンパスに系列大学を併設する和洋国府台女子高等学校。近年は半数以上がセンター試験を受験、外部大学への一般受験が内部推薦を上回る。きめ細やかな進路・受験指導で、中間層の成績が大きく伸び、GMARCHに昨年比3割増の42人、中堅私大合格者が昨年の54人から112人へと3ケタに駆け上った。力を入れている理系大学進学も有名私大35人と堅調だ。自分らしい進路を自分の歩みで切り拓く――果敢なチャレンジ精神こそ、明治から現代まで貫く「和洋の精神」そのもの、と太田陽太郎校長は語る。
「女性が、自分たちが生きる空間をいかに効率良く、内容のある場にしていくかということを、創立者の堀越千代先生は明治時代に取り組んでいました。感性を満たし、充実感を味わえる生活空間を女性の手で作り上げること。それは中・高の勉強の延長線上にあります」
進学実績の勢いを加速させるため、今春の中学校受験では、外部に向けて予告した通り、問題の難度を上げる「攻め」の姿勢を貫いた。「真の和洋ファン」と、太田校長が太鼓判を押す新1年生は同校のコアとなり、授業レベルを引き上げていくことは想像に難くない。
同じく、難度を上げて合格者を選りすぐった高等学校の普通科は、「特進」「進学」の2コース。国公立大・難関私大を目指す「特進」は週2回7時間授業、週36時間を確保。内部進学生も「特進」に入るのは容易ではない。評点が足りなければ、外部受験生と同じく願書を出して、試験を通過せねばならない。
日本初の洋裁学校としての歴史を受け継ぐファッションテクニクス科も、一般大学に進学できるカリキュラムを備える。最近では、大学では福祉を学ぶことを決めた上で、高校時代は好きな手芸やモノ作りに情熱を注ぐといった、人生設計が明確な生徒も現われている。
具体的な進路決定を促す
実感を伴う多彩な体験学習
独自の視点や感覚で社会や世界を捉えられる人間の育成には、実体験の質と量が不可欠、とする和洋国府台は「五感すべてを使って本物の世界に触れる」実習や行事を重視する。行事の多彩さ、実習室の多さは、同校の体験実習の充実へのこだわりを雄弁に物語る。特に中学生は、自然豊かで解放的なキャンパスで野生に返るが如く全身を駆使し、多くの時間を体験実習に費やす。
「実際に体験できるものがあれば、必ず体験や本物を通して学べるよう授業を工夫しています。社会で通用する現場対応力、創造力は、机上の知識学習だけでは体得できない。中学では理屈にとらわれずにモノを見る姿勢を、高校では、『予測』し、結果を受けて『分析』する論理的思考を高めます」
中学理科では、週4時間のうち2時間が実験・観察実習、3年間で取り組むテーマは90に上る。学校周囲に広がる近郊野菜の畑を年中観察し、解剖はアジからブタの心臓に至る。高2から文理に分かれ、理系志望は全体の3分の1。理系クラスでは「遺伝子組み換え」に挑む。「理工学系への進学者を増やしたい」と明言する。
太田校長は、図書室や佐倉市にあるセミナーハウスが女性建築家の手によるものと例に挙げて、「堀越先生が追求した『充実した生活空間』を現代に置き換えると、家庭から地域環境・都市計画・商業空間など、範囲は無限大。色彩や造形デザインなど女性の発想による空間を実現する力を持ち、存分に発揮してもらいたい」と力強く語る。その布石として、今春から高校にも理科助手を配備。理系大学生のOGが実験の準備・片付けや指導補助にあたり、効率良くかつ安全に理科実験室をフル運用できるよう整えた。 |
甘えない凛々しさと躍動感
学校外で力を発揮する生徒
校長就任2年目となる太田校長の改革は英語にも及ぶ。今春からネイティブの非常勤講師を一人常勤に。これまでも、市川市中学校英語発表会入賞、千葉県高等学校英語発表会県大会優勝など、オリジナルテキストを用いた、効率的な英語指導が大きな効果を生んできた。さらに今年は、講師と英語でいつでも会話できるオープンスペースの「ENGLISH ZONE」を設置、活気に満ちた空間にした。校内には生徒の表現活動の場があふれている。英語発表大会、マラソン大会、全日本書初め大展覧会などは必ず全員参加、優秀者は外部コンクールへと駒を進める。
「自分の本当の力は、他人と触れ合う中でわかってくる。他人を見る目も養われていく。人とかかわる場、発表や意見交換の場をたくさん設けているのはそのためです」と語る太田校長に、今後の和洋国府台を表すキーワードを挙げてもらった。
「『働く良妻賢母』です。家庭や地域社会の核になる女性を送り出すのが我々の使命。すべてが100%でなくてもいいんです。活躍する場が家庭でも、職場でも、世界でもいい。物事をしっかり見て、他の人をも包み込みながら、自分の心に誠実に生きて颯爽と街を歩いていく――そんな女性を育む教育環境をさらに整えていきます」
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