校歌に込められた創立者の思い
学園の創立者のシスター江角ヤスが「純心=聖母の汚れなき御心」という名の学園を長崎に創立したのは1935年。岩崎淳子校長は「創立者の思いが凝縮されている校歌は、言葉としても美しく深みがあり、目指すところがしっかりイメージできます」と話す。
純心学園という教育の場を象徴的に表す簡潔な言葉として、「叡智の泉」「真心(まごころ)の炬火(ともし)」という校歌の一節を岩崎校長はあげている。子どもたちの無限の可能性・潜在能力を引き出し、育むことができる、まさに泉のごとくこんこんと叡智あふれる、生き生きとした知的環境であること。同時に、何事にも誠実に向き合い、他者を真に思いやる心を育て、世の光、希望となる人材を育てること。これらのことがイメージされているという。
具体的な生徒像は、「誠実に考え、語り、行動できる人(叡智)」、「他者の心に寄り添うことができる人(真心)」、「平和を志向し、未来に貢献できる人(貢献)」で、創立者・シスター江角ヤスが望んでいた「国際社会で真に活躍できる存在」となるのに必要な力を兼ね備えた、普遍的な姿である。
「子どもたちは校歌を心から歌ってくれるので、一生忘れられない歌の一つとなるでしょう。校歌には自分のことだけでなく、社会的に貢献する女性の活躍の場に目を向けさせたいという思いが含まれています。また、長崎の原爆で生徒213人を亡くした創立者の体験から、平和な未来へ貢献することも願いとして込められています」
時代で変わること、変わらないこと
“英語の純心”に加え、理系にも力を
“英語の純心”と言われるほどハイレベルな英語教育でも知られるが、「これからさらにグローバル化が進む中、低学年から読んで書くことにプラスして、話すことに力を入れていきます。教員はできるだけ授業をオーラルでやっていこうと、研修に励んでいます」。
一方で、これからは理系教育が今まで以上に求められると感じている。「看護師や医師など、理系分野でも女性の活躍する場がたくさんありますから、志望者も増えています」。
時代で変わることがあれば、時代が変わっても人間としての変わらない本質もあり、そこは大事にしたいと岩崎校長は言う。
「創立者が残している言葉の中に、『自分がしてほしいことを相手にもしてあげること』『自分がしてほしくないことは相手にもしない』ということがあります。これはすごく大事だと思います。考え方は人それぞれですが、基本としては“どういう思いでするか”が大切で、いいと思ってするか、独りよがりの考えでするかの差ですね。これは人間、一生続きます。今の時代だからこそ、ここを教える必要があると思います」
こういった話を初めて耳にするように、目を丸くして聞いている生徒もいるという。「掃除もする以上は、率先して人が嫌がることをやると、できたときに何とも言えない充実感があるのよ、と子どもたちに投げかけます。これを積み上げていったときにできるようになるのです」。まさに学園標語“いやなことは私がよろこんで”である。
「すぐにはわからなくても、だんだんわかってきます。大事なのは投げかけることです。教育は長期戦ですから、卒業後に気付くかもしれない。それでいいと思うのです」 |
純心スリー・ステージ・システム
「導入期、展開期、完成期」
図書館を中心にした
オリジナル探究型学習
「純心スリー・ステージ・システム」として、中1〜2の導入期、中3〜高1の展開期、高2〜3の完成期の中高6年間の教育目標を掲げている。このようなわかりやすい教育目標は、中高一貫校の醍醐味といえよう。
導入期では学習習慣の確立、基礎学力の早期伸長を、展開期では高いレベルでの進路実現を、完成期では大学入試に向けた応用力を完成するステージを目指している。完成期では国公立理系や準理系(看護・医療等)など7つのモデルプランを基本とした選択制になっており、きめ細やかな学習計画で受験科目の学力をアップし、国公立や早慶上智へのさらなる合格を目指す。実績も国公立、早慶上智理科大、GMARCHの中でも、理系合格率がこの1年で約10%アップしている。
司書教諭による「おすすめの本」などの楽しい工夫にあふれた純心の図書館にも特徴があり、各教科との協働学習に役立てている。たとえば世界地理で「世界の国を調べ、発表しよう」、音楽で「ベートーベンについて調べよう」など。「調べるための本と物語の本は違います。必要な本を探すのは、子どもにとって高度な作業です」と司書教諭は話す。純心オリジナルの探究型学習は、「ワークシート」にメモして、そこからレポートを作り出すといった作業をするので、大学以降の論文やレポート書きの基盤が身に付くという効果もある。
その他、作物や花を育てる「労作」という伝統授業や、ミッションスクールならではの「宗教の時間」など、生徒の情操が育てられる機会が多いのも純心の特色だ。
生徒の話をする時「かわいいんですよ」と目を細める岩崎校長。この温かいまなざしに見守られながら、八王子の美しい自然とカトリックの教えが一体となり、これからも心優しく賢い女性たちが社会に巣立っていくことだろう。
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