進学校として高まる信頼
青稜中学校・高等学校は1938年東京都品川に創立、95年の共学化から進学校として進化してきた。学校案内パンフレットには「国公立・難関大への合格者目標数」を毎年公開。今春、すでに3年後の目標値を上回る実績を上げた。神奈川県・東京都の公立上位校に並ぶ私学として年々評価が上がる変遷を、生徒募集対策部長は肌で感じてきた。
「高校併願優遇の入試制度を採用する学校が多い中、公立トップ校の併願校として青稜が選ばれるようになり、嬉しい限りです。2年前に併願優遇の内申基準点を上げてから一層、優秀な生徒が集まるようになりました」
待望の新校舎は2014年完成予定。高校は仮校舎生活となるが、それでも高校受験者数は昨年の2割増だ。
青稜中学校は「受験しやすい」入試制度に定評がある。厳しい不況下では、受験生にフィットする入試形態になってきたと生徒募集対策部長は分析する。
「4教科の勉強が間に合わず、2科受験が可能かどうか、という問い合わせが多いです。本校の入試は5回のうち4回は2科・4科が選択できる。4科受験では、算・国合計点で65%の合格者を決めるので、理・社に自信がなくても、2科で合格をつかむことは可能です」
合格者平均点がアップしたが、今後も問題の難易度を落とすつもりはない。
「深い思考力を問う問題もありますが、基礎力で解ける問題でも合格できる点数は取れます。思考力は入学後にしっかり養いますので、大丈夫です」
面談は、互いを知り合う場
心に寄り添い、ともに学ぶ
中学校のテーマは、勉強習慣をつけること。家庭学習2時間が必須。宿題忘れは放課後に居残りとなることもあるので、宿題忘れは少ない。高校のテーマは、学力はもちろん、受験へのモチベーションを高めること。センター試験は全員受験だ。中・高ともに放課後学習、長期休暇講習を頻繁に行っている。「塾・予備校に通う必要がない」環境が整っているが、学習量は相当あり、青稜生はタイトでストイックな生活を送っている。地道な努力を継続できる秘訣は何か。生徒募集対策部長は「面談」の多さを挙げる。4月は学校全体が「面接月間」となり、授業は5分短縮、確保した時間と放課後に、担任が生徒と面談を行う。
「目的は互いを知り合うこと。効果的な怒り方も一人ひとり違う。生徒の性格や気質、本当の実力を把握します。楽なほうへ逃げたり、大学の知名度や流行で進学先を決めたり、職人になりたいという生徒が現われたら、現状と照合して、目標設定の適切さを見極め、生徒の本気度や伸びしろを見抜く。こうした面談を卒業まで何度も重ねます」
「頑張れ」と応援する傍観者の教員では、「今のレベルで受かる大学でいい」という生徒を引き上げられない。
「そういう生徒こそ引き上げたい。だから教員は生徒と一緒に勉強をします。予備校の講習会に通い、プロのノウハウを身に付けて、受験生と机を並べて勉強することも。学年主任を中心に、学年のカラーに合わせてアレンジしながら、モチベーションを高めていきます。『勉強するぞ』という環境を作り、周囲が受験モードになれば、自分もやらなくてはという心境になりますよね」
在校生・卒業生からは「変なプレッシャーを与えない居心地の良い学校。友達と一緒にいたら、自然と勉強の仕方が身に付いていく」という声が多い。それは、彼らの成長に合わせてほどよい距離をとりながらも、教員がぴったりと生徒の心に寄り添い、見守っている証だ。 |
学習面でも、生活面でも
当たり前のことができる力を
面談に力を入れてから、母校を訪ねる卒業生の会話も変化してきた。
「以前は、懐かしいから遊びに来た、という感じでしたが、最近は『この進路を選んで良かった、おかげで充実しています』と、大学で勉強している内容を楽しそうに報告してくれます」と語る生徒募集対策部長も嬉しそうだ。
生徒の夢をかなえる肝となる授業やカリキュラムは、私学ならではの柔軟性を生かし、最新の入試状況に合わせた改革を常に行う。中学では昨年より『体系数学』を導入、先取り学習の効率性をさらに追求している。英語は、逆に先取りをせず、少人数制で確かな実力を養うのが青稜流。今春の目覚しい進学実績を出した学年は、特に英語の力が高かった。「英語教員のノウハウが蓄積されて、効率の良い指導法が確立された成果」と生徒募集対策部長は分析している。レポート提出も多く、主語述語の使い方から教員が丹念に添削して、「表現能力」を高める。実験をして終わり、でなく、過程と結果をきちんと書くことを「当たり前」と考えている。
青稜の「当たり前」は生活面まで広く及ぶ。中学入学生は学校内で3日、八ヶ岳の「青蘭寮」で2泊3日のオリエンテーションを行い、青稜生として、人間としてのルールとマナーを学ぶ。
「学業と同じく『当たり前のこと』ができるようになろう、というのが青稜の人間教育です。青蘭寮では時間厳守で5分前集合。食事の仕方やトイレ・風呂の入り方まで、集団生活の細かな心がけを徹底的に学ぶと、学校に帰ってからも、チャイム着席や挨拶が自然にできる。人として基本的なことで、大げさな指導は何もしていません」
地の利の良い都心に位置し、最新型の学校設備が整う日も近い。時代の最先端の波を柔軟にとらえ、自己革新も怠らない。そして、青稜を支持する人々は、品格を求める気骨ある校風や、教員も生徒も互いに良き人間関係を築き上げようと努力する温かみにこそ、真価を見出すのではないだろうか。
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