どういう実力を育てるのか
学力の伸ばし方を可視化
「教育の本流に立つ」――阿部洋治校長の揺るがない信念だ。人間としての実力を育てながら、各々の個性に応じた学力を身に付けさせたい。そこで打ち出したのが、「学習支援システム」だ。
「生徒が持っている実力を、私たちはもっと発揮させられるはず。個々の教員の熱心さに委ねたやり方を一歩前進させて、学校としての学習支援システムを確立しました。生徒の学力を増進させる本校の仕組みをしっかりと皆様にご理解いただきたいです」
来春の中学入試は2月1日午後にも試験を行い、5回実施へと変更される。だが3回の4教科試験において、2教科合計の高得点順に80%の合格者が決まる判定方法は、昨年と変わらない。
「小学国語・算数の基礎基本さえ身に付いていれば、中学で本当に伸びていきますし、我々が入学後にしっかり伸ばすので大丈夫です」と笑顔で語るのは、城築昭雄校長補佐。また、今年度の取り組みとして、「保護者面談」を全学年で実施し、具体的に学力を学校でどう伸ばすのか、在校生の家庭にも余すところなく情報を伝えていくという。阿部校長は、その根底にある思いを語る。
「中等教育は、家族の理解と協力あっての教育です。ご家庭とコミュニケーションを綿密にとりながら、本校の人間教育・教科教育の『実』を上げていきたい。伸びる子は伸ばす、成績下位の子も伸ばす。本校は特進クラスを置かない方針ですが、『すべてが特進クラス』という意識で、生徒に向き合います」
伸びる子をもっと伸ばす
「学習支援システム」
新1年生からクラスを増やし、30人程度の少人数クラス制に、高校では、多様化する大学の試験内容に併せて、ピンポイントかつ柔軟に授業科目を選択できるよう、コース制を刷新した。昨年は、放課後に中1対象の「学習室」、中2・3に「自習室」を設けた。中1では中学の授業になじめない生徒を対象に、英語は予習、数学は復習を行っている。これに加えて、今年始動した「学習支援システム」では、放課後に学年ごとの成績上位者対象の国語・数学を強化する「JSG特別講座」を開講。英語は中2・3合同の自由参加型「スパイラル講座」で苦手単元の克服に備えている。「伸びる子は伸ばす、下の子も伸ばす」目標を具現化した形だ。
高校では、「JSG特別講座」を5教科で開講、英語は「スパイラル講座」を継続する。日時限定・定員40名の「JSG特別講座」が、クラブ活動などで受講できない場合は、「JSGネット個別授業」・「JSGネット予備校」の2パターンでフォローアップする体制。前者は高校全学年対象で、中学基礎知識からセンター試験まで対応した、学研MyGAKのネット講座を自宅や学校のPCで受講できる。後者は学校のPC教室で、市進ウイングネットの映像授業を受講するシステムで、国公立・難関大を目指す高3が対象となる。いずれもフレキシブルに勉強時間を設定でき、さまざまな環境とレベルの生徒に配慮した全方位的「学習支援システム」となっている。城築校長補佐は「来春の大学進学実績はもっと上がると思います」と自信を隠さない。阿部校長は、自発的に自分に合う講座を決めて勉強できるこのシステムは、同校の生徒の気質にもフィットすると見ている。
自分の居場所を得て立つ
仲間とともに、私らしく
多様な選択幅の中から、伸びしろに合う学習スタイルを選ぶ今回の改革は、同校の理念をより鮮明に伝える。阿部校長は、学習環境において「自立」と「面倒見の良さ」は相反しないという。
「キリスト教に基づく『賜物』を生かす教育を追求すれば、自ずと一人ひとりをしっかり見る教育になります。それは枠にはめ込んでいくことではない。個々の生徒にふさわしいサポートの手があり、ありのままの存在が受け入れられるから自立できる。この点では『任せてください!』と胸を張りたいです」 |
誰かに受け入れてもらえることなしには、人間はひとりでは生きられない。礼拝から始まる女子聖学院の6年間、生徒は自分の存在価値を、共にいる仲間との日常からも見出していく。運動会は、高校生のリードの下、生徒主体で行われる同校の一大イベント。号令がなくても秩序をもって団体行動し、整然かつ流麗に進行していく見事さに、観客は毎年さわやかな感動を覚えるという。
他人を配慮する心や行動規範が「女子聖の伝統」として、生徒には深く染み込んでいる。いち早く大学合格を得た生徒は、「すごい! おめでとう!」歓声を上げた教員に、「先生、大きな声を出さないでください。周りでまだ受験している子がいるんです」と制したという。
「皆ここに自分の居場所があるんだと根源的に感じている。神を礼拝することで、また教員、仲間から、自分の存在が認められ、受け入れられているという実感があって『自分』が育つのだと思います。だから仲間を見捨てない、孤独にしない。付和雷同で流されることなく『自分』も確立している。これこそ豊かな“心の生活”ではないでしょうか」。
「自分らしく、仲間とともに意欲に目覚め、強い意志を持って学ぶ」環境が充実を極めた今、同校は教育の本流の中心に立って漕ぎ出す。
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