高まる学習意欲
目的意識を持った行動に
新キャンパスの中心は、中1から高2までのHR教室やPC教室、少人数指導にも活用できる7つの小教室がある1号館だ。
この校舎の特徴は各階に「オープンスペース」(4室)を設けたこと。コンセプトは「個々の居場所をさまざまなスタイルで共有するスペース」。勉強中心の教室とは別の空間をつくることで、生徒にとって家庭のように居心地のよい場所を提供したいという思いが込められている。
生徒の多くがこのスペースを使って、休み時間に読書をしたり、自習したりする。机や椅子を移動させることもできるので、グループ討議にも使用可能と、思い思いのスタイルで活用できる嬉しいスペースだ。
また、教師とのコミュニケーションの場ともなっており、積極的に質問をする生徒が増えたのも喜ばしい変化だという。
職員室の壁は、ブラインド付き透明ガラスを設置、常に生徒に向けてオープンの状態にしている。逆に教師も生徒を見守れるという利点もあり、生徒と教師の信頼関係が新校舎によって、さらに強くなっている。
中庭を挟んで1号館の向かいにあるのは4号館。ここは高3のHR教室と進路相談室、自習スペースが置かれている。先輩たちの学習への姿勢を見習い、落ちついて学習に取り組むようになる等、意識付けでも大きな成果を上げている。
1号館、4号館、そして化学室・音楽室・美術室等の実験実習の教室を集約している7号館は渡り廊下を介してつながっている。目的別に教室をカテゴライズしたことで、生徒は移動しながら、次は何を学ぶのか、より意識できるようになったという。目的意識を持って行動できる生徒が増えたことも新校舎にしたことの大きな収穫だ。
他にも教室にはLANコンセント、廊下には無線LANアクセスポイントを設置。教師は別室で作成した教材を、ネットワークを使用し、教室で見せることができるようになった。生徒はPC教室以外にも貸し出し用のノートPCを使い、調べ物学習や提出物の作成に活用している。
新たな建築基準法に沿って建てられた校舎は、換気機能の向上により、インフルエンザ等の集団感染の減少にも大きく役立っている。
理系や国公立志望にも
対応の新カリキュラム
平成23年度からスタートした新教育制度では、生徒たちが幅広く進路選択ができ、かつ理系および国公立大学受験に対応できるよう、新カリキュラムとコース制を刷新した。
中学部では中3の1学期までに中学課程を終了。2学期から高校課程に入る先取り学習を主要5教科すべてで実施する。高校では2年の3学期までに5教科の高校課程を終え、3年では「選択・演習科目」を行う。これにより、大学受験対策にじっくり時間をかけられるようになった。
また21年度からは教育改革を先行する形で、中3から難関大学を目指す「APクラス(Advanced Placement Class)」と、多様な進学希望をかなえる「Sクラス(Standard Class)」の2つにコースを変更。さらに高2では文系・文理系・特進私立文系・特進国立文系・特進理系の5コースに分割。高3では特進理系が特進私立理系と特進国立理系に分かれることにより、多様な生徒の進路希望にも応えるシステムを整えた。現在の目標は早慶上理20人、GMARCH50人。理系や国公立の進学実績も伸ばしたいと考えている。 |
大学受験へのバックアップを強化した同校だが、「家庭」や「美術」の授業も大切にしている。高3まで成長しないと造れない美術作品や鑑賞できない音楽があること、社会問題や家庭生活に通じる「家庭科」の授業は、進路選択の大事な判断材料になると考えているからだ。こうした学習を可能しているのは、週6日制で十分な授業時間を確保していることにある。さらに生徒には各教科の1年間の授業計画をまとめたシラバスを配布。生徒は効率よく勉強を進めることができる。
入試の得点率90%以上で
3年間免除の奨学金制度
同校では平成24年度の入試から、中・高給付奨学金制度も改訂し、中学入試にもS奨学生を新しく設定した。これは入試で得点率が90%以上だった生徒に対して、入学金・授業料・施設設備費を3年間免除するというもの(中学総合選抜入試にも適用)。
この改訂には「より高い学力の有する受験生にチャレンジしてほしい」という思いのほか、公立中高一貫校と併願する優秀な受験生にもチャンスを与えたいという思いもある。
S奨学生に加えて、従来のA奨学生(得点率85%以上で入学金・授業料・施設設備費を免除)、B奨学生(得点率80%以上で入学金を免除)のいずれも人数に制限はなく、出願時に特別な申請の必要もない。基準を満たしていれば何人でも選出される。意欲あふれる生徒にはとっては大きなバックアップになるに違いない。
移転後1年が過ぎ、「まだまだ改革途中」という同校。来年度からは旧校舎跡地を利用した「共立ファーム」計画、旧校舎で実施していた「ホタル」を再生させる計画等、アイデアは次々と出ている。
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