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中学・高校受験:学びネット

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桐朋女子中・高等学校

 
  伝統の口頭試問に加え
平成24年度から4科の
筆記試験入試を導入
「口頭試問」。これは塾で受験勉強を頑張ってきた生徒も、小学校の授業をしっかり受けてきた生徒も同じスタートラインに立って受験できる、自ら考える力を問う入試方式だ。この口頭試問を長年実施してきた桐朋女子中・高等学校が、来年度、新たに4科の筆記試験入試を導入する。それは一体どういったものなのか。これまでほとんど塾にアプローチしてこなかったという同校の大改革をリポートする。

校 長: 河原 勇人
住 所: 〒182-8510 東京都調布市若葉町1-41-1
電 話: 03-3300-2111
交 通: 京王線「仙川」駅より徒歩5分
学生数: 中学校  881名
高等学校 859名 (2011.11.1現在)
ホームページ: http://www.toho.ac.jp

 

 桐朋女子中・高等学校を取材に訪れたのは昼休みの時間だった。文化祭を2日後に控えたこの日。快晴の下、どこからかパフォーマンスを練習している生徒たちの声が聞こえる。文化祭のポスターを見て、談笑している生徒たち、颯爽と廊下を歩く生徒…。どの姿もイキイキとしてまぶしい。騒がしいのではない。生徒の心の弾みが自然ににじみ出て、校内全体を静かな躍動感で満たしているのだ。

 桐朋女子中・高等学校は24年度、新方式を採用する。桐朋女子中といえば、「口頭試問」という他校にはない独特な入試を行ってきた学校だ。それに加えて、来年度から4教科(国語・算数・理科・社会)の筆記試験と面接による入試方式を採用する。「桐朋教育は入学試験から始まります」と謳うほど、口頭試問に矜持をもっていた同校。なぜ今、大改革が行われるのだろうか。

 「我々が口頭試問を導入した昭和42年。その頃は、今のように多くの小学生が中学受験をする時代ではありませんでした」と河原勇人校長。中学受験者は年々増え、自分に合った学校選びを真剣に考える時代になった。受験生は志望校の合格を目指し、筆記試験対策をとるのが一般的な勉強のスタイルとして定着した。そうした流れの中、解答の正否よりも思考過程を見る口頭試問は、「筆記試験の学校に比べ、事前の試験対策がしにくい」と受け取られることが多くなってきた。

 その理由は口頭試問の方法にある。まず受験生は約30〜40分の授業等を受け、課題も考える。その後、教員が受験生に答えを導き出した過程等を質問する形式をとる。理解力、理解したことを言葉にできる表現力、観察力等々「自ら考える力があるかどうか」が見られ、解答の正否はことさら重要視されないのだ。

 筆記試験に慣れている受験生が増えてきた昨今、「学校は気に入ったものの、口頭試問に不安を感じる」という声が、ここ何年か強く聞かれるようになってきた。河原校長は「本校は生徒一人ひとりの個性を大切にする学校です。ならば口頭試問だけでなく、筆記試験も実施し、個性に応じてトライしてもらうチャンスがあってもいいのではないかと考えました」と話す。

 では、新しく実施される筆記試験は、口頭試問の代わりになるのだろうか。今年6月に公表された模擬問題は、「桐朋らしさが筆記試験にも出ている」との評価が寄せられている。

 例えば社会の問題では、東海道についての説明文が書かれ、ここから地理的な問題、歴史的な問題と連動して展開し、口頭試問に準拠した形式になっている。

 「よく口頭試問の対策を聞かれるのですが、学校でも塾でもじっくり授業が聞ける、そういう普通のことを大事にしてください、と答えています。本校では6年間かけて自分で考え、自分の判断に基づいて行動できる人間を育てていきたいと考えています。入試では、諦めずに考えられる素地を持っているかどうかを見させていただきます」(河原校長)。

 インタビューの中で河原校長は「私どもはこれまで塾の先生方に、教育理念や入試方法を積極的に伝えてきませんでした」と話す。今年6月、初めて塾に対して学校説明会を行ったが、塾業界も世代交代が進んでいるのを感じたという。いつの間にか同校のイメージは、「いい学校だが、塾と寄り添わない特殊な入試をしている学校」になってしまっていたかもしれない。では、同校の教育理念や入試方法が、今の塾には受け入れられないかというと、それは杞憂に過ぎないと感じた。

 偏差値だけが子どもを計るものさしではないことに気付き、本当の人間の育成とは何かを真剣に考えている塾人は多い。これまでの取材の中で、熱い思いを持って指導に励んでいる方に何人もお会いしている。

 桐朋女子中・高等学校とそうした塾の先生方が出会えば、打てば響くがごとく共鳴するに違いない。今回の入試改革により、多くの受験生そして塾との出会いが生まれることになる。そんな予感がした。

通知表がない学校
6年間を3ブロックに

 桐朋女子中・高等学校では、中・高の6年間を3つのブロックに分けている。Aブロックの中1・中2では「楽しく学校に来る」ことがテーマ。「自己教育力」を付ける2年間だ。自己教育力とは、意欲的に自分から学ぼうとする力。将来の目標を実現させるため、自立して学ぶ姿勢の基礎をつくる。

 Bブロックは中3・高1。テーマは「自己を見つめる」=「自己理解」。将来のどんな職業に就きたいか、そのために何を学ぶのかを考える。高1の12月には、高2・3の時間割を自分で作成する。理系・文系のコースに分けることをせず、同校では生徒個人に授業選択させている。例年300人いたら、200通りもの時間割が生まれるほどだ。

 取材中、「こんな大事な決定を16歳にできるのだろうか」という疑問が浮かぶ。教師は、アドバイスはするが、決定は生徒に任せる。自己選択・自己責任。この思春期にこの決定は重大な意味を持つはずだ。

 「将来について決めるのではなく、いつも大いに悩むといったほうがいいと思います。成長する自分に真剣に向き合っていれば、違っていたら、後戻りしなくてはなりません。若い時はそれができる。悩むことで、目標に近付くために踏み出せる力を付けているのです」(河原校長)

 高2・高3がCブロック。同校の進路指導はあくまでも生徒の希望の実現だ。成績優秀だからといって、医学部を勧める進路指導はありえない。以前、成績上位の生徒が専門学校への進学を希望したことがあったときは、保護者が大反対。しかし、教師は最後まで生徒の意志を尊重した。

 では、同校の進学実績が悪いかというと実は良いのだ。2011年度には、東大に2人合格。また医学部、芸術学部等、進学先もバラエティーに富んでいるのが特徴だ。生徒の個性を大切に育む教育が、大学進学で華開いている、と感じられた。

 さらにユニークなことに、同校には通知表がない。その代わりに、担任は生徒と面談を行う。面談ノートには生徒からの反省が書かれる。担任は各教科担当からの評価等を伝えながら、生徒と次期の目標設定も行える。その後は保護者面接も行われるのだ。「通知表がないのは楽なのではないか」という予測は外れ、その何倍もの労力が費やされていた。

 「生徒の個性を尊重する」「数字で生徒を評価しない」……。いくら理想を掲げていても、実行に移すことは実際問題難しい。実行したくてもできない学校もあるだろう。それを貫いているのが桐朋女子中・高等学校だ。本当に生徒のことを考えたとき、学校はどこまで改革できるのか。改革を恐れない姿勢こそ、同校の強みではないだろうか。

 
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