「学力改革」に重点
希望をかなえる進学保障
「3プラス1」を推進している嶋野恵子校長は、今年度の重点課題に「学力改革」を掲げる。
「本校の『学力改革』とは、単なる受験学力だけではなく、『学力』と『知力』の相乗効果によって生まれる『実学』の力、すなわち『人間力』の育成を意味します。3本柱の充実によって、生徒たちに『知力』が備わってきていることは随所で実感できますが、一人ひとりの進学を保障するためには、受験学力を強化する新たな仕組み作りが必要でした」
そこでまず着手したのは、放課後や早朝に実施している「講座」だ。かつて8割の生徒が系列の大学へ進学していた時代とは逆に、現在は8割が他大学受験をする。放課後にもっと講座を受けたい、自習室をもっと遅くまで利用したいという生徒にとって、同校の早い下校時間は実情に合わなくなり、予備校に通う生徒にとっても不都合な時間であった。そこで、部活動などで認められる下校延長制度を「講座」にも適用し、放課後講座を最大2コマ受講できるようにした。また、「朝講座」についても、開始時間の繰り上げを認めて、内容の充実を図った。例年実施している「夏期講座」も今年度は全60講座以上になるなど、講座の充実により、生徒のニーズにきめ細かく対応できるようになった。
加えて、高校3年生の現状や希望進学先を教員全体で共有し、それを授業や講座の指導内容、個別の対応に生かしている。
こうした改革には、教員の意思統一が不可欠だ。嶋野校長は部署ごとに提案を検討してもらい、時間をかけて、改革の方向性を隅々まで浸透させた。「先生方も一段と積極的に提案してくれるようになり、活気に満ちてきました」と嶋野校長。トップダウンとボトムアップの両輪がうまく噛み合って、改革が進められている。
近年は、理系希望者が増えるなど、生徒たちの進路はますます多様化し、「キャリア教育」の充実とともに進学・学習意欲も飛躍的に向上している。依田泰広報部長は、「進学実績は結果であって、目標はあくまで進学保障です」と話すが、「学力改革」によって、今後の進学実績がさらに大きく飛躍することは確実だ。
充実の3本柱
クエストカップは最優秀賞
一方、知力を育成する教育の3本柱はすでに大きな成果を上げている。
「キャリア教育」では、情報の授業で企業からのミッションに取り組む「クエストエデュケーションプログラム」で「クエストカップ2011」に参加。全国1099チーム中、2部門で企業賞を受賞、うち1部門はグランプリに輝いた。
また、「感性表現教育」の一環として、生徒たちはいろいろな体験の感動を俳句に詠んでいるが、中学生の俳句が昨年度の「虚子・こもろ全国俳句大会」で特選入選を果たし、団体として学校賞も獲得した。高校生も神奈川大学全国高校生俳句大賞で、2年連続団体奨励賞を受賞している。
「国際交流教育」では、イギリス、中国、タイ、ドイツの提携校と毎年行う交換留学や、ハワイ、ニュージーランド、オーストラリアでの海外語学研修など、交流をテーマにしたプログラムが非常に充実している。参加した生徒たちの感動は、「国際教育部ニュース」などを通して全校生徒が共有する。
「3プラス1」は、いわば創立者の理念の現代化であり、生徒たちの25年後の生き方に責任を持ちたいという同校の考え方を具現化したものだ。3つの柱が互いに補完し合い、相乗効果を生み、着実に成果を上げているのも、112年の揺るぎない伝統と豊かな教育文化をその根底にもつ同校の大きな強みだ。 |
活躍の場は学外へ
社会で役立つ力を育てる
身に付けた力を社会へ還元することこそ、校祖が目指した教育の真髄。そのため、他者とのかかわりの中で、自らの役割を知る学校行事、部活動、委員会活動などを大変重視している。
人間関係力にあふれた生徒たちの活躍の場は学外へも大きく広がり、ダンス部の北京公演や合唱部のベルリン公園、昨年は、渋谷区の総合文化施設のこけら落としでの合唱部の公演や、吹奏楽部のディズニーシー公演なども実現した。
「生徒たちは以前から、高齢者施設の訪問や子どもたちへの絵本の読み聞かせなど、地道な奉仕活動を行ってきましたが、誰かが喜んでくれている、誰かのために役立っていると認められた喜びはとても大きく、自信と新たな意欲へとつながっていきます」と嶋野校長。
設置から4年目の国際学級「グローバルスタディーズクラス(GSC)」も、一期生である高校1年生は、今夏、学習の場をオーストラリアのアデレードに移し、現在3ヵ月間の留学中だ。ホームステイしながら現地校に通い、英語力と国際感覚を磨いている。
「先輩から感動を受け継いで、次の代が育っていく。こうした継承が大事なんです。GSCの生徒たちも大きな成果を持ち帰ってくれると期待しています」
校内には生徒が描いた絵が飾られていたが、今後もこうした展示を増やしていきたい、と嶋野校長は話す。
「どんなに素晴らしい名画のコピーも、生徒の作品にはかないません。学校は生徒たちの学びの場であり、発表の場。今後も生徒中心の学校づくりを進めていきます」
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