教員の熱意で授業力アップ
高い実績が満足度を生む
現在、創立100周年を目指して新校舎構想が進む。すでに完成した建物の外観は、大使館が建ち並ぶ国際的な広尾の街にふさわしく、スタイリッシュな印象だ。中に入ると、大きな窓や高い天井が生み出す開放的な空間が広がっている。来年9月には第3新校舎が竣工し、さらに快適な環境が整う。
こうした好立地やハードの最新設備も魅力的だが、金子広報部長は人気の所以を、「教員全員で授業のレベルアップに取り組んできたことと、生徒・保護者の満足度をいかに上げるかを第一に考えてきたことです」と明言する。
授業力向上に大きな成果を上げているのが、学期ごとの教員研修。授業のロールプレイのほか、半日をかけて担当教科のセンター試験、難関国公立大学、難関私立大学の3つの最新入試問題を解くことで、全教員が大学受験のエキスパートを目指す。
「それぐらいしなければ、レベルは上がらないと、教員側から声が上がって始めました。やってみると、その年の入試傾向がよくわかるし、毎日の指導にも生きてくる。確かに大変ですが、当たり前のことです」
教員の熱い指導に応えるように、進学実績も上昇。今年度に至っては、国公立大学合格者数が前年度までと比べ、飛び抜けて高い実績を達成した。まさに、生徒・保護者の「満足度」がうかがえる。
さらに来年度は、難関大学を目指す生徒数が約2倍に倍増するため、進学実績についても同程度の飛躍は必至。こうした期待値も人気の要因だ。
世界水準の研究に取り組む
医進・サイエンスコース
教員の熱意と生徒たちの頑張りが、改革を成功に導いたといえるが、「医進・サイエンスコース」も「高校生の段階で、大学生や大学院生と並ぶようなレベルの教育をしなければ、現状は変えられない」という教員たちの情熱で実現した。
それまで、理系教育に力を入れてきたという土壌もあった。今春は化学、生物、物理の3つのサイエンスラボが完成し、大学の研究室に匹敵する最新機器をフル活用できる。
高校生離れしているのは、設備だけではない。「医進・サイエンスコース」が目指すのは、大学合格の先にある世界最先端の医療・研究現場で活躍できる人材の育成。一般的な医学部進学コースとは全く発想を異にし、カリキュラムも実践的だ。
コースの特色を最もよく表しているのが、1年次からの「研究活動」。放課後を利用してチームごとに研究を進め、土曜日に経過を発表する。幹細胞や宇宙論など、世界水準の研究に取り組もうとする生徒のモチベーションは高く、課外活動にもかかわらず、全員が参加している。
発表の場は、ダメ出しや厳しい質問が飛び交う。シビアだからこそ、研究が精錬され、プレゼンテーション力が鍛えられる。
世界レベルの研究にとって、重要なのが英語力だ。未発表の研究しか認められないため、テーマを選ぶ際に研究者用の検索サイトを使用したり、英文の論文を読み解く語学力が必要になる。そこで、英語の授業で研究論文を教材にするなどしてフォロー。その他の授業でも、国語で生命倫理を考えるなど、同コースに沿った授業を工夫している。
生徒の側も、「研究活動」を通して英語や数学の必要性に自ら気付き、勉強に取り組む。
同校の試みは大学や企業からも注目され、協力の提案を受ける機会が増えた。これまで、バチスタ手術の先駆者・須磨久善先生の講義や、グーグルの社員とのディスカッションなどが実現。世界の第一線で活躍する人材との交流は、生徒にとって大きな刺激となっている。
「たった数ヵ月で生徒たちがここまで成長するとは、私たちも予測しませんでした。今後は、いかに外部の力を生徒たちのサポートに生かしていくか、体制づくりを進めていきます」 |
国際舞台での活躍を目指す
インターナショナルクラス
一方、中学で本科と並んで人気を集めるのが、インターナショナルクラスだ。昨年から、帰国子女レベルのアドバンストグループに加え、初心者レベルのスタンダードグループを開設。1クラスに両グループ約半数ずつを配置している。
アドバンストは主要教科のほとんどを英語で、スタンダードは英語以外は、原則本科と同じ内容を学ぶ。しかし、授業こそ分かれるものの、ホームルームや行事、昼休みを一緒に過ごすことが、相乗効果を生んでいる。
「スタンダードは学力上位層の生徒が多く、その上、アドバンストと同じクラスにいることで、ものすごく英語力がつきます。そうなると、アドバンストもうかうかしていられません」
3年間でスタンダードの英語力が十分に引き上げられるとの自信から、高校はアドバンストのみ。生徒たちは高い英語力を生かし、国内はもちろん、海外の難関大学への留学を目指す。
本科コースに加え、インターナショナルクラス、医進・サイエンスコースと、ハイレベルなクラス編成に特化してきた同校。いずれも共通するのは、国際的な舞台での活躍に照準を合わせた、一歩も二歩も先を行く教育ということだ。
すでに大きな成果を上げている同校が、これらの新たな試みでどこまで伸びていくのか、今後も目が離せない。
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