生徒を温かく見守り
自主性を促す教員たち
教育方針は「手塩にかける教育」「凝念教育」「体験教育」の3本柱。そこには学力だけでなく、人間性を育てたい、という同校の姿勢が表れている。
「手塩にかける」は甘やかすのではなく、教員が生徒を温かく見守るということ。まずは生徒に考えさせることで、自主性を促す。そのため、生徒会、委員会、行事は生徒が主体的に運営している。
「自分と異なる意見にも耳を傾け、それをひとつにまとめていくことは、社会のルールや組織について学ぶことにもなります」
こうした教育は、「生徒は素直で、教員は生徒の話をよく聞き、共感する」というお互いの信頼関係があってこそ成り立つ。北原校長は「子どもと教員が本校の財産」と胸を張る。
また、物事に真剣に取り組む習慣をつけるために行っているのが、独自の「凝念教育」だ。朝礼や授業などの前後に目を閉じて姿勢を正し、精神統一することで心を落ち着かせ、集中力を養う。「朝の読書」も授業へ向け、気持ちの切り替えになる。
そして、「体験教育」の豊富さも同校ならでは。実践を通じ、「人間としてどう生きるのか」を考えさせていく。宿泊を伴う体験行事は、必修・選択合わせて年に5〜6回。中学1年生の4月には早速、1泊2日のオリエンテーション合宿があり、集団生活の基本や協調性を養うよい機会になっている。
多読・多聴や実験で
生きた学びに触れる
国際人に必要なコミュニケーション能力を養いたいと、北原校長は4年前、英語の「多読・多聴」を導入した。「辞書は使わない」「知らない単語は飛ばす」「つまらなければ本を替える」という3原則の下、英語の授業を中心に洋書や音声CDに触れ、英語を英語として理解する学習法だ。
これをバックアップするのが、2万冊もの洋書を備えた図書館。洋書は単語数に応じて10段階のカラーラベルで分類されていて、本選びの参考になる。各自が好きな本を選べ、絵本レベルから長文レベルへ無理なく移行していくため、英語への苦手意識が自然に解消される。中には、年間約1千冊を読破した生徒や、テストの点数が20点から87点に上がった生徒も。英検の合格率も大幅に上昇した。
この多読・多聴をベースに、「国際理解教育」では、文化の多様性に触れるさまざまな機会を設けている。
横田基地のアメリカンスクールとの1日交流会など、国内の交流だけでなく、海外での体験も盛んだ。中学3年生は全員が海外研修旅行へ参加する。高校生が「大使」として最長1年間の留学を経験する「国際ロータリー青少年交換プログラム」でも、2年連続して東京代表に選抜された。こうした環境に刺激され、私費留学を希望する生徒も表れるようになった。
一方、身近なことに疑問を見出し、発想力や創造力、論理的思考力を養ってほしいと力を入れているのが、実験・観察を中心とした理科教育だ。中学校3年間で100回以上の実験・観察を行う。最新設備の5つの実験室は広々として、クラスの一人ひとりが実験に参加することができる。
明星大学や、隣接する東京農工大学とも連携。大学の研究室を訪問して、実験を見学・参加する機会もある。
人気を集めているのが、月1回、希望者を対象に実施する「わくわく理科実験」。「指紋の検出」「ペットボトルロケット」など、授業とは一味違ったユニークな実験で、生徒の知的好奇心を刺激する。実験後はレポートにまとめ、考察力や表現力を養う。これまで中学生対象だったのが、生徒たちの要望で、今年度から高校1年生まで枠を広げて実施されるようになった。
今年度、女子の理系希望者が増えたことはその効果かもしれない。 |
3ステージ制で
無理なく自己実現へ導く
こうした重点教育は、中高の6年間を2年間ずつに分ける「3ステージ制」を軸に展開。第1ステージは「基本的生活習慣と基礎学力の定着」、第2ステージは「自己探求」、第3ステージは「自己実現」を目標に、発達段階に応じたカリキュラムを組み、進路決定を手助けしていく。
例えば、第1ステージでは、理解が不足している生徒は指名制の補習でフォロー。一方、希望制の「エクストラスタディ」では、より高度な講義や応用問題で、生徒のレベルアップをサポートする。
「ステージごとの指導はすべて教員が行います。以前、医学部志望のある生徒が合格した折には、保護者から『先生方が夢を実現させてくれた』と感謝の言葉をいただきました」
生徒の進路選択が細分化するに連れ、進学先も年々多様化。明星大学への進学率が年々減少し、他の大学への進学率が増加しているが、それも生徒のニーズに応えた結果と受け止めている。
「社会情勢がどのように変化しようと、自らの力で生きていかなければなりません。そこで、自分はこれで生きていくんだという自信を持たせ、社会へ送り出したい。子どもたちの可能性を伸ばし、ニーズにきちんと応えていきます」
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