新校長就任で
教育方針を発信
JR荻窪駅から徒歩圏内に1万3千坪を超える広大な敷地を有する日本大学第二中学校・高等学校。訪れると、まず目に入るのが、キャンパス中央を貫く約100メートルの銀杏並木だ。併行してグラウンドと球技用コート3面が整備されている。中学、高校の教室棟とは別に、理科、芸術科でそれぞれ専用棟を設けるほか、図書館棟、武道館、体育館など充実した施設が目を引いている。立川には5千坪を超えるグラウンドをも有し、すべてを合わせると東京ドーム2個分が同校生徒の学びの場ということになる。
校史85年を数える春に、中学校と高等学校にそれぞれ新校長が就任した。中学校校長に就任したのは悉知(しっち)弘一氏。同校で43年教鞭をとり、5年間の教頭職を経ての就任。今後の抱負について問うと、「学校を引っ張っていくというより、これまでに築かれた校風を守っていくのが役目と受け止めている」。謙虚な言葉に人柄と校風の一体が感じられた。
高等学校長には井上登氏が就任。同じく日大第二で40年目というベテラン。5年の教頭職を経験し、「明るく伸びやかな生徒の気質を大切にしたい。外からは中堅どころの学校と見られている。今後、さらに信頼を得られる学校としたい」と語った。
同校は首都圏ではすでに知られた学校ながら、これまで積極的な広報活動を行ってこなかったこともあり、その校風、教育方針までを詳しく知る機会は少なかった。だが、口コミなどで学校を訪れた受験生、保護者にあっては、「こんな学校を探していた」という声が聞かれることからしても、二人の新校長はこだわりある教育方針を今後、積極的に発信していくとしている。
自ら考え自ら選び
汗を流す学びの場
どのような教育活動を行うかは、将来どのような生き方を望むかという根本によって決まる。日大第二のモットーは、「自分の生きる道は自分で見つける」にある。そのために学校で何を身に付けるかを考えたとき、自ずと学校がさまざまな「枠」を設けることにあらがう方針が立った。
悉知、井上の両校長はじめ、すべての教員間では、時流ともいえる特進、選抜コース制、習熟度別授業、先取り学習、スポーツ優待制度などの導入はしないという認識で一致している。多様な個性を持った生徒でクラスが編成され、刺激と平等感のある小社会を中等教育において実現することが、将来の生きる力につながるとの考えからだ。
進路指導も日大の附属校として圧倒的有利性を持ちつつ、大学への進学は、本人の希望を優先し、学校が方向づけをすることはない。あくまで生徒の考えを尊重することに徹する姿勢を貫く。従って、高3次のクラス分けも、成績ではなく、本人の希望によって、国公立クラスなどへの分化が行われている。
かかる校風は正課外の部活でも発揮され、加入率は中学校で98%、高校でも96%という高率である。特に優れた運動技能を持つ者だけが入部を期待されるのではなく、参加意識を持つ誰もが伸びやかに汗を流せる環境を守っている。 |
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切り拓く力の源
食育を重視
このように、「自分の道を自分で切り拓く」、「何事にも真剣に取り組み、清々しい汗をかく」が日大第二の目指す生徒像だが、いまひとつ、「規則正しい健康な生活習慣」が挙げられる。理想的な教育のバランスは、知育・徳育・体育と言われるが、同校ではこれに食育をもプラスした取り組みを10年来行ってきた。
都会で暮らす子どもにどんな栄養が不足しているかを知る目的で、女子栄養大学と連携し、地方の子どもと都会の子どもの体格をデータによって比較してきた。身長、体重、骨密度、血中鉄分、体脂肪などの基本データを比較すると、カルシウム不足で集中力に欠けるなど、都会の子どもの特徴が表れたこともあった。
改善のため、希望する生徒には1日3食の食事内容を撮影し、その画像から女子栄養大学が摂取栄養の傾向を分析、毎年実施される健康診断時に指導を行っているという。食育に取り組む学校は年々増えてきているが、ここまで徹底している学校は珍しい。チャレンジ精神が旺盛で、伸びやかで、明るく活発な生徒像は健康な心身に裏打ちされているようだ。
同校の高山裕二広報室長は、こうした特色ある取り組みについて、今後、周知を図っていきたいと意欲を見せる。随時自由に訪問することができるが、予約すれば、生徒の活動実態に触れる見学も可能。また文化祭では、受験生を対象に「何でも質問コーナー」を生徒が開設。保護者にはOBの保護者による質問コーナーを設けられ、気軽な情報収集にも一役買っている。
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