交流力をテーマに
英語の授業数を大幅増
立教池袋中学校・高等学校が授業数を増やしたねらいは、「英語の立教」の力を強化することと、立教学院全体で掲げる「立教未来計画」のプロジェクトテーマ「交流力」=コミュニケーション能力を上げるためだ。
「私たちの教育目標は2つあります。ひとつは『共に生きる力』です。そのための武器として、コミュニケーションの能力を伸ばしていきます。コミュニケーション媒体として、英語を生かせるようにしたい」と鈴木弘校長は語る。
当初は、週5日の中で英語をさらに強化することが検討されたが、時間数に限りがあり、生徒が自由に選択できる「選科講座」を削減する案もあがった。
「でも、選科は本校の目玉。削ることはできない。いろいろな議論の末、週6日制を採用することになったのです」
この「選科講座」には、苦手教科を復習する補習的な授業もあれば、発展型の授業も用意されている。また、教科内容には直接関係のないものや、「国語大好き人間、集合!」などの講座も設置。
「この選科の成績は評価しません。なぜなら、生徒の個性は一人ずつ違い、得意なものを選ぶ者もいれば、補習的な意味で選択する者もいるからです」と鈴木校長。この選科は同校の大きな教育目標「テーマを持って真理を探究する力」に通じている。
「ここでのテーマは、いろいろな意味に解釈できると思います。私はこれを神様が一人ひとりに与えてくれた『賜物』と考えています。自分の得意なことや好きなことを見つけ、それをスキルアップさせる。そして、それを用いて、世の中の平和に貢献してほしい」
「選科」が賜物を見つけるキッカケのひとつになってほしいと鈴木校長。好きなことに邁進できる環境が整えば、自らお互いを尊重し合うようになり、「共に生きる力」も育めると考えている。
人数増やさず4クラスに
徹底した少人数指導
同校は2013年から1学年4クラス制にする。しかも生徒数は増やさない。1クラス36人前後の少人数制にしたい考えだ。そのために新校舎も2012年に建設が始まる。体育館も総合体育館として生まれ変わり、グラウンドも整備される予定だ。
鈴木校長は、「教師の目が行き届く少人数制はメリットもあるが、デメリットもある」と話す。
「100人の中で育つのと50人の中で育つのでは、成長の仕方が違う。あらゆるタイプの人間とのぶつかり合いが子どもを育てます。ですから、ただ人数を減らすのではなく、多種多様な生徒を受け入れ、『共に生きる力』を養っていきたい」
そのため、一般入試の第1回では成績優秀者を選抜。第2回のAO入試では、試験の成績だけでは選ばず、「自己アピール面接を採用し、他人にいい意味で影響を与えられる子どもたち」を選んでいる。この他にも英語が堪能な帰国生、宗教的な基盤ができている立教小学校からの生徒が加わることになる。
「『テーマを持って、真理を探究する力』を付けるのは、少人数制が不可欠。でも『共に生きる力』にはデメリット。双方を達成できる教育環境を整え、いろいろな賜物を持った子どもたちが集まって切磋琢磨してくれればと思います」 |
生き方を学ぶ
「ライフデザイン」授業
同校を擁する立教学院では、小学校〜大学院までを網羅する「一貫連携教育構想」を掲げている。
「本校の高3生は大学の授業に出て、単位を取得することができます。高校の単位にもなりますし、立教大学に進学時には、その単位は履修済となります」と鈴木校長。
同校では、国際化学オリンピック(トルコ大会)に今年度の日本代表として出場する生徒や、昨年度の全国数学選手権大会団体戦で準優勝するほどの生徒がいる。今後も理数系にも継続して、さらに力を入れていきたい。
また、自分の進路を見つけるために、高1から「ライフデザイン」(キャリア教育)の授業が始まる。高1の春には一週間使い、立教大学教授や外部講師を呼んで、生い立ちから研究内容、学問の楽しさを講義してもらうほか、立教大学OBが経営する会社訪問も行う。こうした活動の中で生徒は、自分の将来像を模索しイメージしていく。
一貫教育を掲げている立教学院ではあるが、他大学に進む生徒もいる。立教大学にない、医学・歯学や工学に進むケースや国公立志望者がそれだ。今年も例年のように歯学部や国立大へ現役合格している。
「ライフデザインをした結果、立教大学以外の進路を目指す生徒には、積極的に応援していきたいと考えています。一貫教育と矛盾しているようですが、『賜物を伸ばす』という本校の教育理念からすれば、マッチしているのです」と鈴木校長。大学受験のための補習等は実施しないが、普段の授業=受験勉強になると確信している。
「私たちの社会は、数値化し、比較できるものに評価が終始しています。本校では、数値化できないものを大切にしたいと考えています。勉強は苦手だけれども、みんなをまとめるリーダーシップを発揮できる能力を持っているなど、見えないものに目を注ぐ教育をしていきたいですね」
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