32人の小クラス制で
生徒主体の授業を展開
生徒主体の授業を目指し、1・2年生は1クラス46人から32人の小クラスへ。従来の一部教科だけでなく、10教科すべてが切り替わった。
人数が割り切れるため、グループワークが多くなり、学習に臨む緊張感を保ちながら、生徒1人が発言する回数、時間が大幅に増加。また、生徒は遠慮しないで疑問を口にし、教員側はよりきめ細やかな指導が可能になった。担任からも、クラスに目が行き届く、生徒との会話が増えた、などと好評だ。
「教員が主導権を握るのではなく、生徒の課題や疑問をいかに引き出していくか、という授業に変えていく。今後が楽しみです」と山本部長。例えば、理科は実験・観察、社会は時事問題を豊富に取り入れ、生活の中から課題を発見できるような授業づくりを進めていく。
生徒主体の授業は、自ら考える力を養う。また、全10教科を重視するのは、幅広い視野を身に付けてもらうため。一方、週5日制と無理のないカリキュラム編成で、基礎学力を培う。詰め込み学習はせず、余力がある分、さらに深い学習へ取り組み、発想力や創造力を引き出していく。
こうした教育姿勢は、同校が学問を進学のためではなく、豊かな人間性を育むためのものと考えているからだ。それゆえ、高い進学実績を持ちながら、山本部長は「進学校ではない」と明言する。
話す、聞くを徹底し
高い英語力を獲得
改革は伝統の英語教育にも及ぶ。学院では小学1年生から12年間一貫した英語教育を進めており、その柱としてオリジナル教科書へ移行してきたが、今年度は中等部の2年生まで新テキストが揃った。従来のものはアメリカ製だったが、新テキストは日本の中学生にとって、身近なトピックを厳選。キリスト教精神に沿ったマザーテレサや盲導犬などの題材も登場し、同校の生徒がより親しみやすい内容になっている。
一方で、一貫教育を受けてきた内進生と外進生の学習時間の差に配慮し、1年生の外進生の授業に限り、より手厚い16人クラスとした。同校の英語はほぼ毎時間ペアワークを取り入れるなど、話す、聞くに重点を置いた授業が特色で、16人クラスではさらに発言の機会が増え、着実に力が付く。
実践的な授業で会話力・コミュニケーション力を培った生徒たちは、外国人講師に対しても積極的だ。英語の高い運用能力は、高等部の1年生が毎年4月に受検する学生向けの実用英語検定、TOEIC Bridgeでも証明された。受検層全体のレベルが高いにもかかわらず、今年は約134点ものハイレベルな平均点を獲得。2・3年生が受検したTOEICでも、一昨年の国内の高校生平均を54ポイント近くも上回った。高等部は内進生が外進生より多いことから、積み上げてきた英語教育の成果がうかがえる。
英語を使う機会は授業に留まらない。留学生を交えてのチャットルームは生徒に大好評。今年度から毎週水曜の放課後という枠を拡大し、大学から留学生を食堂に招き、月曜の昼休みにも開かれるようになった。それまで部活動などで制限があった生徒も気軽に参加できるようになり、毎回20人以上が集まって、楽しみながら生きた英語を実践している。 |
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健全な心を育てる
礼拝と聖書の時間
教育を人間形成の場と捉える同校では、学力の養成と同等に心の育成に重きを置く。それには、毎日15分の礼拝が大きな意味を持つと山本部長は話す。
「成長期に『あなたは大切な存在です』という良いメッセージを聴いて育った子どもは、自己肯定感を持つ。自信があるので、人に優しくなり、自分も他人も信頼する誠実さがあります。成長期は良いもので満たしてあげ、健全な成長を促すことが大事。心が満たされると、安心感から物事へチャレンジしようという意欲がわいてきます」
礼拝では、生徒たちの讃美歌が高らかに響き渡る。それは理想の姿を伝えるという指導の賜物だ。「何事に関しても、それができている人として生徒を扱います。できていない部分があっても、できている姿が本来の姿だと伝えられると、生徒はそうありたいと思う。学年が上がるごとに声が出るようになるよと言えば、讃美歌も大きな声で歌ってくれます」。
人格教育のもうひとつの要が聖書の授業。1年生は「自己理解・自己表現」、2年生は「平和」、3年生は「命と死」をテーマに、障害や差別など、さまざまな立場の人が抱える問題を研究・発表し、意見を述べる時間を盛り込んでいる。
「本校で学ぶことは『競争』ではなく、『協力』。違った立場の人たちとともに生きるためには、その重荷を理解し、正しい接し方を学ぶ必要があります。礼拝や聖書の時間を通し、人としてどういう生き方をすべきなのかを学んでいきます」
21世紀に対応したダイナミックな改革も、すべて「地の塩、世の光」という教えが原点。確かな学力と豊かな人間性を身に付けた生徒たちは、隣人と社会に対する責任を果たすため、未来へ羽ばたいていく。
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