社会人として必要な
知的能力をゼミで
説明会の冒頭、今年4月に就任した清水敦学長が挨拶に立った。
「本学の一番の特徴はゼミです。これまでも本学の教育目標である『自立』『対話』『実践』を実現させるためにゼミに力を入れてきました。来年からカリキュラムの見直しを図りますが、同時に全学生がゼミに属して演習を行うように改定しました」
これまで経済学部では、4年次にゼミを履修するかは選択だったが、必修になることで、「1〜4年次まで1日たりともゼミのメンバーでない日はない」と清水学長。さらにゼミの重要性として、「自ら課題に取り組み実践を繰り返すことで、主体的な思考力が育ちます。そして、学生同士または教員と交流することで、相手の話を聞き、自分の考えを正確に相手に伝えられる『傾聴説明力』を身につけていきます。この力こそ社会人として必要な知的能力なのです」と強調した。
また、大学はクラス単位で行動することがなく、ややもすると孤立することもあると指摘。学習効果が上がらない原因にもなるが、ゼミに所属することで、孤立化を防止することができる。仲間同士のつながりも強まると語った。
最清水学長は就職状況にも触れ、「昨年度の本学の就職率は94.2%でした。前年より2%以上落ち込みましたが、厳しい中でよく頑張ってくれたと思います。就職問題は単に景気の問題ではなく、企業が社員を厳選して採用するようになり、即企業で通用する人材を求めるようになってきた表れでしょう。私どもは社会で力を発揮できる人材を育てなければいけないと思います」と締めくくった。
学びやすく、時代のニーズに
合わせたカリキュラムに
続いて、各学部長から変更点について話があった。経済学部では「金融」「経済」「経営」の3学科から自由に選択できる7つのコースを設定。所属する学科にとらわれず、必要な知識を体系的に学びやすくした。人文学部は3学科を改編。従来の学科名から「比較」の語を外した(英米比較文化学科を英語英米文化学科へ等)。「比較」だけでは、現代の異文化を理解するキーワードにふさわしくないという理由からだ。また卒論の指導を3年次よりスタートさせることで、指導教授制・卒業論文指導体制の強化を図っていく。
社会学部は、これまで「世界の大学に存在して、武蔵にないものはない」と自負する高い水準のカリキュラムを設定してきた。今回の改編では、社会学科でスポーツ社会学・恋愛の社会学等を、メディア社会学科ではマンガの社会学・CM企画/制作論等が新規科目として加わり、オンリーワンの社会学部にさらに磨きをかける予定。
その後、2011年度の入試について説明があった。来年度は一般方式入試の全学部日程入試を2月2日に実施。個別学部日程では、英語の試験時間が80分から60分に変更される。出題傾向としては、英語と国語は主旨を素早く読み取る力が必要とされるので、普段から新聞や書籍で速読の練習をすることが有効と説明。センター試験の準備がそのまま武蔵大学の入試対策に結びつくこと等を話し、第一部が終了した。
対立を乗り越え
協調性・積極性を学ぶ
第二部では「三学部横断型ゼミナールの意義:学生が『枠』を超えることの難しさと醍醐味」と題しての発表が行われた。同校の「三学部横断型ゼミナール・プロジェクト」は文部科学省平成21年度「大学教育・学生支援推進事業(教育GP)」として採択され、「優れた大学教育改革の取り組み」として選定されている。
初めに担当教員である稲増社会学部助教がゼミの特色について解説した。
「非常に厳しい経済状況の中、社内教育を行う余裕のある企業は減り、社会人として働く上で必要なスキル『社会人基礎力』を、大学で養成することが求められています。このゼミには、その力を養成するさまざまな仕掛けが組み込まれています」 |
ゼミでは三学部の学生がひとつのチームを作り、企業から「CSR報告書作成」という課題をもらい、その企業にふさわしい報告書を作成する。CSRは『企業の社会的責任』と訳され、環境問題への対応や雇用の安定化などを通じて、企業が持続可能な社会を実現する上で必要な責任を果たす活動を指している。「CSR報告書作成」という課題は、学生が消費者・企業・社会など、さまざまな視点から企業活動を捉えることを促す仕掛けとして機能している。また、課題提供企業の多くは、BtoB(企業間取引)が中心の企業であり、これは「CMに出ている大企業」に限定された学生の視野を広げるねらいを持つ。さらには、企業担当者とコミュニケーションをとりながら課題を進めるため、学生としての甘えを排除し、ビジネスマナーを訓練することも可能である。
三学部横断という特殊なゼミにおいて、学生が直面するのは、学部間の対立だ。このゼミに参加した人文学部の学生は「個人で調査を行うことの多い人文学部の生徒に比べ、経済学部は日頃のゼミのディスカッションで身につけたリーダーシップやチームワークを発揮していた。私たちは尻込みすることが多く、この先やっていけるのか不安になった」と話す。しかし、授業時間外における話し合いの呼びかけを通じて、学部間の壁がなくなり信頼関係が生まれた。また、話し合いを通じて、「相手の意見を否定せず、最後まで聞き、周りと融合させることを学んだ」と言う。
もう一人の社会学部の学生は、履修生がほとんど3年生という中、数少ない2年生だった。「中間発表でCSRの概要を説明したとき、企業の方に『よくわからなかった』と言われてしまった。自分は発表前から失敗するのではと思っていたが、内向的な性格で、意見を言うことができなかった。しかし、授業専属のキャリアコンサルタントに『君は能力があるから、自信を持って、もっと意見を言うべき』とアドバイスされてからは、自分から発言するように心がけた」と言う。チームに自分の意見を伝え、最終発表会では、チームを代表して発表を行うまでになった。
「このゼミを通して、一番変われたのは自分。意見を発信する力を得られたことを就職活動でも存分に発揮したい」と語った。
最後に、就職支援と奨学金について説明がなされた。キャリア支援センターを独立させ、就職へのバックアップを強化したほか、新しく地方学生を対象にした「武蔵大学地方学生奨励奨学金」を設置。関東一円からの入学者だけでなく、地方の優秀な学生の入学をさらに促していきたいことが述べられた。
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