水と緑が豊かな水戸偕楽園の近くにあり、水戸市内屈指の私立進学校として知られる水戸短期大学附属高等学校。同校は昨年、創立50周年を迎えた文武両道の伝統校だ。
近年安定した進学実績を残しているが、その要因の一つに習熟度別のコース制が挙げられる。学習能力に合った授業を受けることで、生徒のモチベーションが上がり、持てる力を最大限に引き出しているのだ。
中でも、難関国公立・私立大学を目指す「特別大学進学SSコース」は最もレベルが高いコース。SSコースは各学年3クラスあるが、その中でも1組は上位層が集結している。
今回はこのSSコース3年1組担任の藤原博之先生に取材した。
「意欲があり、今やるべきこととそうでないことの区別がしっかりできている。第一志望の大学合格を目指し、テレビは見ない、遊ばないという自覚が強いクラスだと思います」と、クラスの雰囲気を表現してくれた藤原先生。藤原先生は1年生のときから持ち上がりで、この「SSコースの1組」を担任している。入学時に比べて大きく成長したのは、『生徒の自主性の高さ』と話す。
「1年のときから、登校時間30分前の7時半に登校して行う自主学習を始めました。たとえ式典のある日でも、『1組だけはやるよ』と継続してきたものです」
1年の時はまだまだ徹底されなかった朝学習だが、今は教師がいなくても全員揃って勉強している。この意識の高さを後押ししている要因の一つが「奨学生制度」だ。3年1組は現在33名中21名が学業奨学生。校内でも特別なクラスという位置付けがされている。
「奨学生は生徒のプライドを満たすものでもあると考えています。1組という特別なクラスに在籍しているという意識を持つことで、自立が促せているのだと思います」
また3年1組には、海外研修や海外旅行などの経験者が多いのも特徴。国際交流に興味を持っている生徒も多く、将来は外交官など、海外で活躍したいと考えている生徒も少なくない。
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さらに国際交流を考えるキッカケとなったのが、昨年、シンガポールからの留学生を受け入れたこと。コミュニケーションはすべて英語で行われ、また帰国後インターネットを使い、シンガポールと教室をつなぐ特別授業も行った。
このような国際交流以外にも、3年1組では「総合学習」に力を入れてきた。藤原先生は毎回時間をかけて準備。しかも直前まで何の授業をするかは生徒に秘密にしている。生徒はワクワクした気持ちで授業に臨むという。
これまでやってきたのはプラスチック消しゴムの製作など身近な化学実験の他、大学の講師を招いてのマナー講座。検事の方から検事の仕事内容や罪が確定するまでの流れを聞くこともあった。またマニフェストを読むとして、民主党発行のマニフェストから公約を考える機会も設けた。
「授業後、生徒が内容について興味を持ったり、さらに調べたりしてくれることが嬉しいですね」と藤原先生は手応えを感じている。
この総合学習には、実は「自分の進みたい道を見つけてほしい」という思いも込められている。将来の目標を持つことで、「この職業に就くためにあの大学に行く」とさらに学習意欲をかき立ててもらいたいと考えている。
これから始まる受験シーズンに際し、藤原先生は「生徒指導に自分の全時間を捧げたい。自分を信じてついてきてほしいと思っています」と熱く語る。
これまで自分が手本となって自らを律し、厳しく指導をしてきた藤原先生。
「1、2年の時に言われたことが、3年の今になってわかったという声を聞くと、やってきたことが正しかったと感じます。今は厳しく指導していますが、卒業して生徒たちが20歳になったら、一緒にお酒を飲むのが夢ですね」
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