徳間書店創業者に教わった
“学校の宝は生徒と教員”の理念
「“華麗なる転身”とまでは言いませんが、非常にカルチャーショックを覚えました」と、同校にやってきた当初の印象を笑いながら話す上野校長。それもそのはず、上野校長は2年前までの39年間、神奈川県最古の私立男子校である逗子開成中学校・高等学校に勤めていた。国語教員の後、さまざまな役職を経て、当時の理事長兼校長で、徳間書店創業者の徳間康快氏に抜擢され、平成8年から事務長に。豪放磊落(ごうほうらいらく)な実業家・文化人として知られた徳間氏の下で学校改革に励み、同校を県下有数の進学校に押し上げる一翼を担ってきた。
「今回が初の校長職ですが、徳間さんの薫陶を受け、多くを学んできました。とりわけ、心に刻まれているのは、“学校の財産は生徒と教員である”という教えです。生徒はもちろん、学校を良くしていくのは、教員が財産としての価値をどう発揮するかにかかっていると。この教えを、今後の校長の職務に生かしていきます」
その意気込みは、昨年秋に参与として着任して早々、真っ先に授業を視察して回った行動力に表れている。自らの教員経験を振り返りつつ、「学校の中心はやはり、毎日の授業です。それも、子どもたちにとってわかる授業、子どもが目を輝かして食いついていると感じられる授業でないといけません」と語る。同校ではこうした校長自ら行う授業視察のほか、教員研修を奨励し、授業力や受験指導力に磨きをかけている。
生徒の志望を叶える
生きた学校改革を推進
5年前の創立100周年を機に、さらなる「学力の向上」に向け、学校改革に取り組んでいる同校。常駐の教員が勉強に関するあらゆる質問を受け付ける「学習相談コーナー」や、大手予備校講師の講義を映像で学べる「eラーニングコーナー」を設置したり、難関大学を目指す学生を対象に「受験クラブ」を発足させるなど、自学自習の環境を強化している。すでに4年制大学進学率が7割近い同校だが、改革により、さらなる成果が期待される。
上野校長は従来の改革に加え、生徒への入試情報提供の一層の充実を図るなど、「これまで以上に進学校へ舵を切る」と明言する一方で、「大人がよかれと思ったことが、必ずしも子どもに向いているとは限りません。生徒が本当に欲していることを検証しながら、改革を生きたものにしたい」と、生徒の目線を大切にする。「本校も大学も、自分の未来を考える上でのひとつのステップ。有名大学に入ることだけが進学の目標ではなく、生徒の『将来こんな目的があってこの大学に入りたい』という希望を叶えてやりたい。そのための学力をつけることが学校の使命です」と断言する。
進路決定の手助けとなるのが、同校独自の進学指導プログラムである「みらい科」。中・高6年間を通し、さまざまなプログラムを実施して、将来の目標を絞り込んでいく。中でも、2日間の開催で延べ100校の大学が集まる「大学進学フェア」は、保護者と生徒が大学側から個別に説明を受けられるとあって好評。その他、卒業生の講演会は、社会に出た先輩の生の声が聞ける貴重な機会だ。
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“誰にでも愛される自立心のある女性”を育てる
同校の校訓は「聡明」「端正」。校歌にある「良妻賢母」という歌詞を現代風にアレンジしたそうだ。「『聡明』とは学ぶことで身に付く理解力や知識、知性。『端正』とは、姿や所作に自ずと現れる美しさや気品のことです。日常の中で『聡明』『端正』を教え、あえて女子校である価値、特色を打ち出していきたい」と指針を語る上野校長。すでに同校では、近隣に国立劇場など一流の文化施設が並ぶ地の利を生かし、伝統芸能や演劇の鑑賞の機会を豊富に設けている。また、授業や課外講座で華道や茶道を習い、日本文化の素養を身に付ける。長い間、女子教育を貫いてきた同校の伝統は、上野校長の新体制にもしっかりと引き継がれていく。
教員と生徒の距離が近く、結婚や出産の報告などで卒業生が訪ねてくることも日常の光景という同校。教員に温かく見守られ、生徒がのびのびと夢を育める土壌がある。加えて、授業力や多彩な情操教育といったソフト面だけでなく、最新設備の新校舎はハード面も充実。また、セキュリティーシステムの完備など、都心の女子校にふさわしい安全意識も学校選びには見逃せない条件だ。こうした好環境が相まって、本年度は募集160名に対し、2,300人を超える入試志願者が集まるなど、ここ数年の同校の人気は急速に高まっている。
同校の生徒を評して、「純真」と目を細める上野校長に抱負を語ってもらった。「第一に、思いやりや感謝の心を忘れない、誰にでも愛される女性に育てたい。そして、自分のことは自分で決められる、自立心を養ってほしい。特別の人でなくていい、そんな“普通の人”になってほしいのです」
新校長、教員一丸となって、生徒の確かな未来を築いていく。
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