明確なコース制が引き出した生徒の伸びる力
SUITANの名称で愛される水戸短期大学附属高等学校。一昨年は東大現役合格者を出し、注目を集め、昨年は難関国立大学合格者を60人、難関私立には77人が合格と、着実な伸びを見せている。今春は卒業生の数が茨城県下全体で少なく、同校でも昨年に比べ1学年の人数が60人近く少なかった。しかし、国公立へ53人、難関私立へ62人合格と大健闘。生徒たちは予想以上の頑張りを見せた。
こうした躍進の要因は、学習の習熟度別に明確に分けられたコース制だ。
同校では入試の点数により、特別大学進学SSコース(医学・理工系、最難関大学専攻)、同Sコース(国公立、名門私学専攻)、同Aコース(国公立、有名私学専攻)、進学Sコース(スポーツと進学の両立を目指す)、経済情報コース(経営・商業系大学専攻他、資格の取得)に分かれる。
生徒は自分の学習能力に合った授業を受けられることで、勉強に対するモチベーションを上げていく。成績優秀者はさらに上のコースに変更することもある。商業科の経済情報コースは資格取得にも積極的に取り組み、AO入試にも備えた体制となっている。
現役合格が多いのも同校の大きな特徴。今春は65%が四年制大学に合格。短大などを含めると9割が大学進学を決めている。この学校に入学すれば、確実に進学への道筋が見える安心感がここにあるのだ。
文武両道を支えるきめ細かい面倒見のよさ
SUITANは学業だけの学校ではない。部活動も全国レベルで活躍している。サッカー部は平成19年度、全国大会に5度目の出場を果たし、Jリーグへの入団者も多い。県内トップレベルの野球部は甲子園出場の経験もあり、柔道部も全国大会の常連である。こうした運動部には進学Sコースに所属する生徒が多いが、実は特進SS、Sコースに在籍している生徒も所属し、学業との両立を立派に果たしている。同校では勉強のために「部活をしてはいけない」という指導はしていない。部活動にも魅力を感じてもらい、学生生活を有意義なものにしてほしいという、文武両道の精神がここにある。
また、ユニークな取り組みとして同校では「Ambition」という名の日記帳を生徒に配布。その日の出来事や発見したこと、明日の目標などを簡単に書き込めるようになっている。クラーク博士の「boys,be ambitious」の言葉から名付けられたこの日記帳には、教師からの返事も赤ペンで書き込まれ、担任と生徒のコミュニケーションツールになっている。同時に文章を書く習慣を通して、文章力をつける練習、また課題解決能力の向上にも役に立っているという。
さらに教職員は登校時だけでなく下校時にも校門に立ち、生徒と挨拶を交わす。生活指導では基本である「身だしなみ」を徹底させ、粘り強く生徒たちに指導している。他にもボランティア活動の提案なども行い、社会貢献を通じて、生徒が何か1つでも達成感を得られるような配慮をしている。
学業だけの面倒見の良さだけでない、きめ細やかな指導が生徒を温かく見守っているといえよう。
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「SUITANなら未来を描ける」
将来を切り開ける高校に
県立志向の強い地域にありながら、毎年3千人もの受験者数があり、茨城県内の私学では人気の高い同校。しかし、今後は少子化の影響もあり、いかに単願の受験者を増やしていくのかが課題という。現在3分の1が単願だが、その割合を増やしていきたい意向だ。近年水戸市は、県立でも大学進学実績を誇る上位校に人気が集中する傾向があり、併願校として選ばれることも重要と話す。
それには、中学校で伸び悩んでしまった生徒でも、「SUITANなら大学進学の道がある」と思える指導が大切だと同校は語る。これまで入学時にはそれほど突出した存在ではなかった生徒でも、次々と難関大学に合格させた実績にさらに磨きをかけていく。今まで通り7時間授業、長期休暇のゼミなどで、最大週38時間の授業時間を確保。現役合格を実現させる学力をつけさせたい考えだ。
また、経済的に私学への進学が難しい生徒でも、特別奨学生制度や奨学金を利用すれば、同校の素晴らしい環境の中で高校生活を送ることができる。現在は1学年の約1割が奨学生で、目的意識をしっかり持った中学生が入学している。
県立高校との差別化はもちろんだが、私立高校同士の競合の中でも、「SUITAN」ならではの生徒を大切にする校風を生かしつつ、今後は学科に特化したコースの設定や大学との連携なども見据えていく予定。
生徒自らが「SUITANに行きたい」と望み、安心して受験できる高校を目指す。次の半世紀に向けて、水戸短期大学附属高校は動き始めている。
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