4月1日より校長に就任した奥村英治氏は、前任の金野眞行校長時代には教頭を務め、学校改革を進めてきた一人。金野氏の改革精神を受け継ぐ形で、さらに学校全体を発展させていきたいと語る。改革の成果は着実に実を結んでおり、2009年度の中学入試の平均倍率は2.4倍。昨年をまた上回り、3年連続で最高倍率を更新した。
「入試倍率が上がったことで、生徒のレベルも向上してきていると思います」と奥村校長。
2008年度の入学生は、落ち着いた態度で授業に臨む生徒が多く、4、5年後の進学率アップに大いに期待しているという。すでに高等学校では東大受験者が出るなど、進学状況も好調だ。
また、以前は圧倒的に男子生徒が多かったが、現在の中学1年生の男女比は6対4。毎年女子の入学希望者が増えている。
「男女共学私立を考える女子の保護者の方に、認められてきた証拠だと思います。新校舎の清潔な雰囲気と、落ち着きを持って勉強に取り組んでいる姿勢が評価されたのではと受け止めています」
高2から積極的にセンター試験に挑戦
現在、帝京高等学校では4コース制をとっており、1年次から「文理(中高一貫コース・高校入学コース)」「理数」「インターナショナル」「文系」の4つに分かれる。中高一貫生は、中学3年次で高1カリキュラムを履修するので、高1年次から高2のカリキュラムに取り組むことになる。 「2009年度以降は、この4コース制を定着させ、生徒それぞれの進路に結びつけていきたい」と奥村校長。
また同校では、2年前から代々木ゼミナールの「サテラインセミナー」を採用。受験指導の第一線で活躍する人気講師の授業を高校の先生の解説つきで受けられるようにした。これが学習意欲を高めるカンフル剤になっているという。
「サテラインの導入は、生徒たちにとって大いに刺激になっているようです。高校2年でセンター試験(夕方より時間差で実施)に挑戦する生徒が増えました。実際に点数も悪くありません。学校側も驚きましたが、生徒の大学受験への意識が、早い時点で高まっているのを感じています」 同様に、総合学習の時間も生徒の自主性を育てる機会にしようと、さまざまな取り組みが行われている。
「文理コースでは、修学旅行先の北海道で、農家に泊まりこんで、実際の農作業を体験するファームステイを行いました。その体験を元に、生徒たちが企画書を作り、蜂桜祭(文化祭)でステイ先の農家が作ったものを販売したこともあります。総合学習で学んだことをもう一段発展させるのが目的です。生徒が自主性を持って行動できるようサポートしていきたいですね」
また、作文や論文を書く機会を増やすことで、AO入試など、学力審査以外の入試でもその経験を有効に活かしているという。
スポーツの発展とともに礼儀を重んじる校風に
帝京といえば、野球・サッカーに代表されるスポーツの強豪校という印象が強い。 「野球とサッカーにおいては、従来通り、全国レベルで活躍してもらいたいと思っています。近年成績を上げているのは女子柔道ですね」 校長室には優勝旗や盾がびっしりと並んでいる。しかし、これからは「スポーツの帝京」だけではなく、プラスアルファの要素が必要と、奥村校長は語る。 「礼儀正しさ、道徳面でも『さすが帝京生』と言われるようになってほしいと考えています」
ここ数年の学校改革の中でも、生活指導は親身に、かつきめ細かく行うようにしてきた。ルールを守り、目標を持って行動することを促す指導を今後も続けていく方針だ。
「きちんとした服装や挨拶の奨励など、一社会人として基本的な礼儀を身に付けてほしい。生活面においても生徒を伸ばし、導いていくのが私立の役割だと思います」
こうした面倒見の良さが保護者に評価され、中学受験者が増えている要因の一つになっているのだろう。 |
心強い保護者のバックアップ
また、生徒・保護者・学校のコミュニケーションを円滑にする配慮もなされている。中学校の観劇日では、希望する保護者は生徒と一緒に鑑賞することができる。学校行事を子どもと共有することで、親子で一体感を持てると好評だ。中学1年生の4月には、親子で参加する『炊き出し訓練』がある。これは災害時の救急法や炊き出しを体験するために開催されているものだが、よき交流の場にもなっている。
「そこで保護者同士の交流は、一気に深まりますね。皆さん方が活発に意見交換されることは、学校のことをよく知ってもらう上でも必要だと考えています」 一方、生徒を支援する後援会にも、積極的な参加があると言う。
「嬉しいことに、保護者の中には帝京OBの方も多く、学校の役に立てるのなら、ぜひ参加したいと言ってくださっています。私学だからこそ、愛校心を変わらず持っていただいている。そうした保護者の方の期待を裏切らないよう、われわれも頑張っていきたいと思います」
高い理想を掲げ、
努力する人間になってほしい
最後に奥村校長に、目指す帝京の学校像を伺った。
「礼儀を身に付け、落ち着きのある生徒を育てていきたいと考えています。落ち着きというのは、勉強への取り組み方もそうですが、文化祭でもただ盛り上がるだけではなく、テーマを持って取り組める、地に足がついた姿勢のこと。大きな理想に向かい、一つひとつ積み上げながら進んでいく。そんな人間になってほしいと願っています」 奥村校長自身も、学校改革のさらなる発展に高い理想を持って臨んでいる。
学校と生徒が一丸となり、理想に向かって前進している帝京中学校・高等学校。入学希望者にとっても魅力ある学校として映るに違いない。
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