他校との大きな違いは
一般高校のスタイルに近いこと
「子どもは大人が思っているより、不登校によって本道からそれたことに恐怖心を抱いています。だからこそ、普通校に近い学校生活を送り、学校でつまずいたことは学校で取り戻してあげたい。社会に出たとき、うまくやっていける精神的な力を付けてあげるのが本学院の目的です」
と語るのは市川匡史学院長。
不登校の生徒を受け入れる全日制の学校や、さまざまなスタイルのサポート校が生まれている現在、生徒たちは自分に合った学校を選択できるようになった。また学校には行けないが、塾で個別指導を受けている子どもも増えている。
そんな中、東京文理学院高等部は普通校に近いスタイルを貫いている。その理由は明確だ。
「サポート校を普通校と全く違う形にしてしまうと、生徒は『不登校だったから、この学校に来てしまった』と感じてしまいます。思春期でもあり、自尊心の高い子どもが不登校になってしまうケースが多い。だからこそ、雰囲気づくりは大切です」
学院は週5日、9時30分登校、制服や校則もある。通学している生徒の姿はごく普通の高校生と変わらない。
出席日数や登校時間については、本人に無理のない範囲からスタートするが、服装面等には指導が入る。こうした徹底した生活指導の結果、学院は面接において、高い評価を得ているという。これは、日頃の真摯な生徒の姿が先方に伝わるからだろう。
独自のカリキュラムで生徒の才能を伸ばす
1クラスは30人からなり、各学年4クラス。担任の他、学年主任1人、各クラスを手助けする副担任1人で一学年を受け持つ。
また、不登校により学力に差がついてしまった生徒への配慮も万全。ホームルームクラスの他、習熟度別に4レベルに分けて授業を行っている(英語と数学)。
レベル分けは英語と数学の内容だけではない。長期の不登校で小学校から学習の機会のなかった生徒、著名な進学校から編入してきた生徒もいる。従って、黒板の漢字が読めるクラスもあれば、読めないクラスもある。根本的に国語能力の問題が存在しており、教え方が難しくならないよう配慮しているという。
また、「授業中に発言するのは苦手」「問題を当てられると困惑してしまう」等の生徒にも対応。最初の段階で、生徒個人がどういう状況なのか、保護者と相談している。そうして得意な分野は伸ばし、不得意な分野も取り組んでいけるように指導する。きめ細かなケアが一般的なサポート校の考え方だが、
「そこからさらに一伸び、二伸びさせてあげたい」と市川学院長。
午前は共通科目、午後の授業は選択科目になっており、生徒自身が25もの授業から好きなものを選べる。20年度には「フットサル」「陶芸」「アニメ」「パソコン」「鉄道」「手話」等のユニークな科目がラインナップ。生徒たちの才能を発掘し、伸ばす機会が随所に設けられている。
大学進学についても、一般入試を希望する生徒には2年次から進学クラスを設け、午後の選択授業も使って対応している。一般推薦(通信制高校において、所定の成績を収めた生徒に受験資格あり)、指定校推薦枠を使うこともできる。
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系列の通信制高校と連動し
欠席しても留年なく卒業
さらに大きな特徴は、留年がないことだ。サポート校は通信制高校での単位取得を支援する機関であるが、学院では系列の通信制高校と連動。出席日数が少なくても留年はない。
「普通校なら、二学期頑張っても、一学期休んでしまったら留年になりますが、学院は出席日数が少ないからといって留年することはありません」
不登校を経験した生徒は、「また留年するのではないか」という不安を抱いている。それを取り除くことが、逆に登校しようという気持ちに結びついていく、と市川学院長は語る。
さらに保護者にとっても、このシステムは安心材料になっている。生徒と保護者双方が納得、安心して学校生活に専念できるという。
また、卒業生に対しても相談も随時受け付け、無料のケアを継続して行っている。
「大学に入ったけれどもなじめない、他の学校を探したいという卒業生もいます。卒業後も不安に思うことがあれば、われわれに相談してください。それは卒業後何年経っても変わりません」
学院では3人のカウンセラーが来校し、生徒の相談に乗っているほか、先生全員が定期的にカウンセリングの研修を受けている。生徒へのきめ細やかな対応は、こうしたしっかりとした基盤の上で行われている。
また、保護者会・校友会「ひまわり」の存在も大きい。学校行事のサポート等を通じて、先生や保護者の間の交流が盛んに行われている。同じ悩みを持つ親同士の情報の場ともなっており、卒業後も校友会を通して、学院の運営に協力している。
「学院での生活を通して、最終的に身に付けてもらいたい精神力、社会基準の精神力は、簡単に言うと『できないことを受け入れること』だと思います。できなくても、自信や誇りは傷つかないことを伝えていきたいですね」
先生と保護者が一丸となって生徒を見守る、厳しくも温かい校風。不登校の生徒にとって、東京文理学院高等部は、もう一度大きく羽ばたくチャンスを与えてくれる存在と言えるだろう。
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