教科書も編纂、独自のカリキュラム
獨協中学・高等学校では、外部募集は行わず、6年間の一貫教育に邁進しているが、この理由について高木修教頭は次のように話す。
「中学1年生から6年かけて、じっくり成長させたいのです。それに、カリキュラムの問題があります。中学と高校の教科書はレベルが異なり、高校ではかなり専門的になりますね。そのギャップをなくし、しっかりとした学力をつけたいと考えているためです」。
6年間を2年ごとに分けて、導入期の第1ブロック、成長・変化の大きい第2ブロック、受験期を迎える第3ブロックとし、2年ごとの学年担任制で生徒の成長に合わせた教育を行っている。担任は1学年5クラスに7名。7名がチームを組み、学年の様々な問題の解決にあたる。
「例えば、いじめや登校拒否などの問題がある場合でも担任まかせにせず、7名で考えていくので、芽のうちに解決できるのです。しかし、細かい校則で生徒を管理することはせず、生徒の自主性を尊重しています。携帯電話に関するルールなども生徒たちが話し合って決めました」と高木教頭。
また、平成9年には中学・高校の教科書のギャップを埋めるために、カリキュラムを大幅に変更した。学習内容は次のブロックへの展開を考えた体系的・発展的な構成で、個々の知識が有機的に結び付き、学習内容の全体がはっきりと把握できるものとなっている。なかでも数学は高校1年生までは独自編纂の教科書を使用、学習内容も学びやすいように順番を組み直している。
今春の卒業生は、新カリキュラムで学習した1期生。慶応大学工学部の推薦入試枠は空のままだった。医学部などを受験し、皆自分の道を進んだためだ。
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各ブロックごとの充実した体験学習 第1ブロック(中学1〜2年)では、体験学習として林間・臨海合宿へ行く。1クラス40名、5クラスあるが、いっせいには行かず、1クラスずつ行われる。というのも、この合宿は6年間の人間関係の基礎になるものだと考えており、教員10名、大学生5名が参加、事前学習も含めかなり手間をかけて指導するからだ。
林間では班ごとにデジタルカメラを持ち、自然観察を行う。その夜にはパソコンで簡単なプレゼンテーションをするが、どの班でも見つけていない珍しい植物を見つけた班などはかなり得意げで、盛り上がるという。
第2ブロックの中学3年では、研究論文に1年かけて取り組む。テーマは自分で選択、
全教員がそれぞれ4名ほどの生徒を指導し、30〜100枚の論文に仕上げる。
高校1年では、高校2年から進路に合わせてカリキュラムが分かれるため、進路学習を体験学習として1年間取り組む。OBの体験談や心理士による講演を聞いたり、パーソナリティと学問についての適性検査を受けたりして進路について考えていく。
また高校では「教科別研修旅行」もあり、理科の学習のために玉川を歩いたり、国語の学習で明治村へ行ったり、社会の学習で奈良・京都へ出かけたりする。
「『自ら学び考える力の育成』という新学習指導要領にうたわれている方針は、もともと獨協の根底にある考え方です。これを高いレベルで実現しようというのが獨協の一貫カリキュラム。新学習指導要領が導入されたことで、『総合的な学習の時間』をより充実させることができました」と高木教頭は語る。
ドイツ語で大学受験
同校の特徴のひとつとして、ドイツ語教育があげられる。中学3年でまずドイツ語の選択科目があり、さらに高校では、第1外国語か第2外国語かの選択を行って学習する。
ドイツ語での大学受験はもとより、将来大学でドイツ語が必修となる医学部などの学部を専攻したり、ドイツ語圏への留学や海外での就職を視野に入れている生徒には好評で、毎年半数弱の生徒がドイツ語を選択している。
このドイツ語教育は、第4代校長に就任した大村仁太郎が明治28年にドイツ語教育の
基礎を築いたことに端を発している。同校は今年創立120周年を迎えるが、年第13代校長・天野禎祐が戦後の学園復興と新生に力を尽くし、同校の教育のベースをつくった。現在の永井伸一校長は、天野理念に魅せられた一人である。
創立120周年に関しても、生徒の「学び」が中心。高木教頭は次のように話す。
「歴代の校長に恥じないような教育を行うことが教員の使命だと考えています。創立120周年を記念し、記念式典は行いましたが、大きなイベントなどを行う代わりに中学・高校・大学の部で論文を公募したほか、奨学金制度をつくりました」。
120年の時代の流れの中、新しいことを採り入れ、教育にあたる同校。新校舎は平成11年に建築賞を受賞した、すばらしいデザイン。特に新図書館は、貸し出し数が毎年飛躍的に伸び、今年は半年で8,700冊。生徒一人当たり4冊は借りていることになる。体験学習と新カリキュラム、自主性を尊重する教育が相乗効果となって、生徒たちの学びを深めているようだ。 |