日本の心と西洋の技術や知識を
合わせ持つ女性の育成を目指す
日本の精神的伝統を大切にしながら、海外の優れたものを積極的に取り入れる『和魂洋才』の精神を礎に、約111年前に開校した和洋国府台女子中学校・高等学校(開校当初は和洋裁縫女学院)。現在もその精神は変わらず、日本女性の誇りを持ち、世界に羽ばたく、真の国際人の育成を続けている。
就任5年目を迎える橋邦昌校長は、私学とは一線を画す公立校教員出身者。外部の目から見た、和洋国府台女子中学校・高等学校の長短を発見し、改革するための先駆者である。その橋校長が声高に主張しているのが、『和洋の教育の火を消すな』ということだ。
「戦後の欧米文化に影響され、教育改革を行う学校が続々と出現する中、和洋国府台女子中学校・高等学校が日本古来の教育を守り続けられたのは、最高の知識を持った教員たちが、教育上好ましくない外部の変化を退け、自らの教育方針を貫いたからでしょう。その精神を理解し、守っていくのが私の務めだと考えています」
この考えで育成されている女子生徒たちは、明るくはきはきとした子どもばかり。教師との信頼も厚く、日頃から良い関係を保っているので、学習面での伸びも際立っている。橋校長が校内を散策していると、生徒が呼びかけ、手を振ったりと親しみをあふれさせているのが特徴的だ。中学1年から茶道教育を含む礼法の授業や、四季折々の伝統行事の実践や鑑賞、琴の演奏などで、和の礼節をわきまえた生徒たちは、挨拶の仕方もおざなりではなく、一つひとつの動きにムダがない。
「当たり前のように、ものおじせず話しかけるのは、当然のように思えて難しいことです。それを易々とやってのける、優秀な生徒たちです」
そう語る校長の現在の課題は人間教育。日本文化の良さを描いた藤原正彦氏の『国家の品格』を夏期休暇中の自由課題のひとつである読書感想文に取り上げたところ、約4分の1の生徒が参加、非常に素晴らしい作品を校長賞として表彰し、一冊の冊子にまとめた。また、運動不足が心の不健康につながるとして、保護者もともに体力作りに参加するように呼びかけている。これらはすべて、生徒たちの資質磨きの一環として、橋校長が取り入れた工夫である。
|
|
全員4年制大学進学を目標に
日々学校改革を続ける
橋校長が人間教育と同時に重要視しているのが、進学指導である。生徒各々への進路指導方法には統一性がなく、教員個々の判断で行われていたのを一本化。4年制大学への全員進学を目標に掲げて取り組んでいる。これは4年制・難関大学のほうが、有利に就職活動を進められると判断した結果である。
「系列の和洋女子大学の内部推薦や指定校推薦はありますが、生徒たちの目標の可能性を狭い視野で閉じ込めず、望めばどの大学進学も狙えるよう後押しするのが、教師の仕事です」
このために高校に設置されたのが、『普通科特設』である。他コースの普通科・ファッションテクニクス科と違い、ここは、入学時から3年後の国公立大学や難関私立大学への受験を目指す。そのため、併設中学校からも進学が許されるのは、ハードルを乗り越えた生徒のみとなる。
また高校では、現役合格を目指した受験対応の特訓講座や勉強合宿なども行われており、特に普通科特設の生徒は、厳しい指導を受ける。しかし、人生の中のほんの数年、受験をあなどらず、真剣に集中することは難しいことではないと橋校長は語る。すでに今年度は4年制大学進学率76%と、前年度比7%アップだが、いずれは全員が一般入試に自信を持って挑めるほどの学力レベルに到達させるのが最終目標だ。
もちろん、生徒たちの学力向上には、教員たちの意識改革やシラバスの改良なども必要で、これを校長は『品位を維持した学校解体』と呼ぶ。意識改革には、全教科の授業アンケート実施があり、教員自身が個々で内省したり、努力するよう導いている。また、職員の会議で、改革のための議論を何度も繰り返させるというものもある。
「最終決定は私が行いますが、会議を重ね、多数の教師が積極的な意見を出し合うことで、教員たち自身が良い改革案を出すようになります。最終的には、全員が教育のプロの認識を持ち、生徒が勉強に対する興味を持つような工夫をたくさん考え出せるような人材になってほしいですね」
すでに多くの改革案を打ち出し、実践していると語る橋校長。無事目標を達成し、和洋国府台女子中学校・高等学校が新しいスタートを踏み出す日は、そう遠い未来ではないと思われる。
|
|