「6年で大きく伸ばす」が
受験生増加の要因
東急大井町線「下神明」駅から徒歩1分という絶好の立地にある青稜中学校・高等学校。学校選択の条件に、通学の利便性は大きなウエートを占めるが、今春、青稜中学校の入試で2,231人もの受験生が集まった要因は、何といっても生徒に対する面倒見の良さとその結果としての大学合格実績によるもの。
同校の「2007年度大学合格速報」によると、国公立大学合格者数33人、早慶上智、東京理科などの難関私大合格者数が39人(延べ人数)、医歯薬系大学への合格者数が33人(同)となっている。他にも明治、青山、立教、中央、法政、学習院など、いわゆるGMARCHへは117人(同)と続く。例年より少ない今春の卒業者数260人から見ると、昨年よりも伸びている。
言うまでもなく、学校評価の対象は大学合格実績だけではないが、近年、一般誌でも実績とその要因分析を載せ始め、同校もそうした取材を受けたことがあるという。受験生の保護者の選択眼は、複合的に学校を見据えているが、その中で、やはり大学合格実績は学校選択の要であることに変わりない。そのことが中学校入試に明瞭に反映された学校のひとつが同校なのである。
「ある雑誌に『生徒の学力の伸び率が大きい学校』として紹介されましたが、それは、ひとえに面倒見のよさによるもの。これまでの取り組みが結果として表れ始めたと思う」と多々良先生は話した。「偏差値40程度で入学してきた生徒を、60近くの偏差値を要する大学に合格させるので、『伸び率が大きい学校』と評されたのでしょう」とも。ただ、今春の入試では、平均競争倍率が一段と高くなったことから、入学者の学力レベルは例年に比べ、さらに上昇したと見られる。
充実の目的別講習
「質問の日」が効果
では、具体的にどんな取り組みが同校で行われてきたのかといえば、目的別に実施される各種講習がまずあ挙げられる。中学校では放課後講習を実施し、国語、英語、数学を重点的にサポートし、長期休暇講習でも主要3教科について実施している。いずれも希望者を対象としたものだが、一方で、指名制による基礎講習を実施している。
また、毎週月曜日の放課後には「質問の日」を設け、教員は部活動や校務を休止させ、質問に答える時間を確保している。この「質問の日」を最大限活用しようとするなら、必然的に土・日の学習量が増える。月曜日に設定したことは、こうした点への配慮からだろう。
「講習は約10年前から始まり、「質問の日」は8年目を迎えるが、着実な取り組みがいよいよ効果を表してきたのでは」と多々良先生は言う。
高等学校の放課後講習は、基礎から高度なレベルまで、多様な教科にわたって細かいクラス編成がなされ、実施されている。また、夏期休暇中に行われる進学合宿は、八ケ岳の合宿所において、5泊6日の日程で、朝から晩まで進路にあわせた講習が用意されている。
さらに、火曜と金曜には大手予備校の講座のサテライト講習が行われる。学校のコンピュータルームに居ながらにして、年間20コマの講習を受けるというもの。質問には同校教員が答える体制を取り、きめ細やかで徹底した目的別講習が揃っている。「質問の日」は高等学校でも定着しており、教員は「個への対応」を心がけている。
こうした取り組みが複合的に効果を上げ、大学合格実績への伸びにつながってきたのだが、今後の見通しについてもさらに明るいとの印象を受けた。
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部活との両立で難関大へ合格
同校では部活動も盛んで、勉学と両立しながら難関大へ合格を果たす生徒も多い。毎年、各種コンクールやコンテストで優秀な成績を収めている吹奏楽部。ある女子部員は、今春、横浜市立大学医学部看護学科に合格した。高等学校の3年間は、コンクールや定期演奏会のための練習で明け暮れたが、受験勉強との両立にあせりを感じながらも、見事に志望校への合格を手にしたのだ。
また、中学校から6年間を青稜で過ごした男子生徒は、書道部で思う存分活動をした一人。書道の奥深さに魅せられ、青稜祭(文化祭)でも自身の作品を高3まで発表し続けた。中学入学時には宿題の多さに驚いたという彼だが、それらを着実にこなしていくことで、自然に基礎学力がついたと振り返る。また、受験間際には不安な気持ちをやわらげ、励まし続ける教員のメンタルサポート面も評価している。彼は今春、早稲田大学文化構想学部に進学した。
生徒が取り組む活動、興味、感心、目標はそれぞれ異なる。その上、性格的な持ち味も加わって、一人ひとりの生徒を丹念に把握しなければ、効果的な進路指導は行えない。青稜の進路指導は、生徒をあらゆる角度からまるごと見据えたサポートといえそうだ。
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