大野新校長のプロフィール
女子聖学院中学校高等学校では、今春、大野碧氏が新校長に就任した。同校の卒業生であり、昨年まで校長代行職にあったため、実務的にはすでに校長の職務を経験済みの大野校長だが、「でもそれは、経験豊富な前校長の小倉義明氏のもとで職務に当たっていたため、最終的にすべての責任を負う立場になってみると緊張を感じている」と率直に感想を述べた。
同校での教員経験は長く、理科の教員として教鞭をとった後、校長補佐、副校長を歴任。その後、一旦、聖学院小学校の校長、同幼稚園の園長を経験した後、前・小倉校長の代行を務めている。
とりわけ、小学校長、幼稚園長を経験したことは、子どもたちの成長のプロセスを自分の目で確かめ、子どもたちに寄り添う保護者の心理に対して見当をつけられるようになったという点で、中高校での仕事に大きく役立っているという。
さて、そんな大野校長の就任早々の大仕事が、今年、完成したばかりの新校舎の竣工式典であった。式典は学校法人が主催し、関係各方面からの出席者、地域の人々を招いて第1回目が開催され、続いて、全校生徒とお祝いする会、さらに、新校舎建設に大きく寄与した同窓会・後援会を対象としたお祝いの会と全部で3回催された。「私の就任報告も兼ねていたので、無事に式が終わってよかった」とまずはほっとした様子。
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スクールモットーに忠実に
公開授業、自習室充実も
創立以来、ミッションスクールとして「神を仰ぎ、人に仕う」をスクールモットーに忠実に学校運営を行ってきた同校は、新校長の体制のもとでもその方針に変わりない。中高の6年間で、毎朝の礼拝は約1,300回にも上り、聖書のことばを生活の中に生かす教育が実践されている。「卒業とともに、礼拝や聖書から遠ざかっても、6年間に培われた教えは、心の支えが必要となったとき、卒業生に戻ってくると信じている」と城築昭雄校長補佐が言うと、大野校長がそのことの証を立てるようにこんなエピソードを紹介した。
かつて、大野校長が担任をしていた卒業生から結婚の連絡があり、チャペルでの挙式にあたっては、女子聖学院のチャプレンに「本当の神様の話をしていただきたい」と司式要請の申し出があったのだ。大野校長曰く「在籍していたころは、キリスト教の行事に率先して参加する生徒ではなかったが、連絡を受けて、6年間の教えが根付いていたのだと感慨を持った」という。
今後は、「人に仕う」という部分の具現化を着実に進めたい考えで、まずは、全校に挨拶を大切にする気持ちを浸透させる取り組みとして、毎朝、登校時には校長、校長補佐が門に立ち、生徒に「おはようございます」の声かけを行っている。「人に仕うというのは、人を大切にすることで、その意味では、心を通わせあう第一歩としての挨拶を大切にしたい」と大野校長。
教科指導面では、春と秋の年2回、公開授業を実施し、教員の授業力アップを図っている。取材直前にも3日間にわたって教員、保護者がすべての授業を参観できるよう日程が組まれていた。参観後には保護者にアンケートを実施し、授業に対する感想や要望の把握にも努めている。
新校舎には自習室も完備され、高2〜3年生が熱心に利用しており、それに刺激を受けた中学生にも1教室を開放したところ、早朝や放課後に利用者が増えている。今後は自習室に卒業生によるチューターを配備することも検討中で、新校舎完成を契機として、新たな取り組みが広がりそうだ。
また、今年度からテスト検証制度も始まり、各教科のテストにおいて問題ごとの習熟度を詳しく検証し、学年別に比較するなどして、その後の教科指導に生かすねらいがあるという。
新校舎で生徒いきいき教員にも意欲
来春の入試は、2月1日が日曜に当たるため、2日から4日間の日程で行われる。初日の2日だけで100名募集となるが、新校舎への関心も高いことから、例年に比べ、志願者は増加すると見られる。
話題の新校舎は、自然の力を最大限生かした設計で、床、机、椅子、ロッカーには天然木材を使用し、自然換気ができる空調システムを取り入れている。シックハウス対策も万全で、竣工後の検査では有害物質は全く検知されていない。耐震性も十二分で、城築校長補佐は「万一地震が起きても、校舎内にいれば安全」と話す。竣工後、訪れた卒業生は、「まるでヨーロッパの由緒あるホテルのよう」と感想を述べたという。
当初、校舎は古くても構わないという考えの教職員もいたが、実際に新校舎で授業を行うようになると、その機能性、安全性を評価し、そして何より生徒がいきいきと学校生活を送る姿を目の当たりにして喜んでいる。環境の充実は、生徒の学ぶ意欲を増幅させるだけでなく、教職員が新たなことに取り組む意欲にも結びついているようで、今後が楽しみなところだ。
また、城築校長補佐は「PTA活動も活発化し、PTA役員の定員180人に対して218人の応募者がありました。PTA役員を敬遠する風潮の中、ありがたいこと」と話した。生徒を中心に教職員、保護者までもが積極的に行動を起こし始めたところに、思わぬ新校舎完成の余波を感じているようだった。 |