最難関大学合格をめざすスーパーセレクトコースを新設
東に滑川、南には松山城址。四方を豊かな緑に囲まれた地に、東京農業大第三高等学校のキャンパスが広がる。同校を訪れると誰もが驚き感心するのは、生徒たちが「こんにちは」と爽やかな挨拶を送ってくることだ。
「教員に対しても礼儀正しく、新任はみなびっくりします。本校では勉学とクラブ活動の両立に力を入れ、そんな学風に育まれたいい伝統になっているようです」
入試広報部長の神山達人教諭は笑顔で語る。
「特進」「普通」「体育」の3コースを設ける同校は、2006年度の入試において、国公立大学へ37名、難関の早稲田や慶応をはじめ私立大学には740名、優先入学枠をもつ併設の東京農業大学・東京情報大学へ170名の合格者を出した。現役合格率は77・3%と高い実績をあげている。
来年度は進学指導をさらに強化するねらいで、これまで隔週土曜日に行っていた授業を毎土曜に実施することを決定した。同時にコース再編にも取り組み、最難関大学をめざす生徒を徹底的にバックアップする「スーパーセレクトコース」を新設、2007年度入試より定員約30名の募集を開始する。従来のコースも「特別進学」「総合進学」「アスリート」と改称し、4コース制の新しい構成で効率的な進学指導が徹底される。
新設の「スーパーセレクトコース(SSC)」は、東大、京大など最難関大学を目標とし、週5回の7時間授業による先取り授業や、専用自習教室を利用しての個別指導を実施する。必修の「勉強クラブ」は、学習意識の高揚を図る独自のプログラムだ。
「現在は2、3年生を中心に、その日の疑問点や各自の課題に対応します。すでに今年から始動し、7月に東大キャンパス見学を実施しました。モチベーションを高める企画も設け、生徒に好評です」
勉強クラブは他コースの生徒も自由に参加でき、コースの壁を低くして意欲に応じた学習を実現しているのが同校の特色、と神山教諭は語る。
「特別進学コース(特進)」は、難関国公私立大学の現役合格をめざす。センター試験対策を万全にするため、1・2年次に週3回の7時間授業を必修とし、英数国を徹底的に強化。3年次から文系・理系に分かれ、国立2次対策として論理的思考力を鍛える。
「総合進学コース(総進)」は一人ひとりのニーズに応えるバランスのとれたカリキュラムを配し、国公私立大学や併設大学の現役合格めざす。2年次より文系・理系に分かれ、3年次は進路に応じて授業の選択や放課後の過ごし方を自由にデザインできるのが特色だ。
「アスリートコース」は、強化クラブに所属し、競技能力を伸ばしながら国公私立大学・併設大学合格をめざすコース。3年次には希望進路にあわせて選べる幅広い選択科目が用意されている。
着実に学力アップを図る強力な学習指導体制
進学指導に力を入れる同校は、生徒の実態にあわせたきめ細かな学習指導体制を確立している。なかでも先に紹介した「勉強クラブ」をはじめ、年間を通じて実施する課外講座は実に多彩だ。
例えば、センター試験・難関私立大学に照準を絞った入試対策を行う「朝講習」や「放課後講習」。難関私大英語長文、MARCH数学、センター古文など、昨年度は40講座を開講した。
夏期講習は2週間、大手予備校との提携による映像教材を活用したサテライトゼミも導入する。春・冬期講習もそれぞれ1週間実施し、苦手科目を克服する補修や先取り学習を行う。
1年次には夏休みを利用した4泊5日のサマーセミナーがある。
「昨年は長野県の志賀高原で合宿しました。1年生のときから学習習慣の確立と定着を図る目的で、毎日約10時間、集中的に勉強するのです。生徒には楽しい体験でもあり、非常に好評です」
このほか、進学ガイダンスや大学教授による講演会を行い、将来への目的意識を明確にする機会を設けている。
学習進度を確認し、達成感を体験して、さらにモチベーションを高める目的で、校外全国模擬試験や校内実力判定テスト、英語力向上テスト、漢字テストなども豊富。より具体的な目標を設定することによって、生徒はたくましく実力を伸ばしていく。 |
クラブ活動との両立に7割の生徒がチャレンジ
同校には専門の指導者と専門施設をもつ10の強化クラブがあり、「アスリートコース」の生徒が中心となって全国レベルで活躍している。今年も剣道部と陸上部が県大会を勝ち抜き、全国大会への出場を決めている。弓道部は全国大会に4年連続出場経験をもつ強豪チーム。男子バレーボール、柔道、男子バスケットボール、男女テニスの各クラブも関東大会出場の常連だ。このほか野球、男女ハンドボールなど、スポーツ系は全27クラブ。
文化系では19のアカデミッククラブがあり、その活動も活発だ。吹奏楽部は関東大会や県大会に5度の出場を果たしている。文芸・百人一首クラブも全国大会に6年連続出場。学内に設けられた「美術館」には、書道部や美術部の作品が常設展示され、文化系クラブの活動も学校がバックアップする。
注目すべきは、これらクラブが勝利や成果だけを追うのではなく、ボランティア活動にも学内外で積極的に取り組んでいることだ。野球部は、早朝7時半から校内の清掃を行う。そのあとは始業まで読書。他校とは異なり、ボランティア精神と教養の滋養が彼らの“朝練”である。弓道部も遠征試合のとき、宿舎から試合会場までゴミ拾いを励行している。
「遠征先のご近所の方からお褒めの電話をいただくこともしばしばです。そうした彼らの取り組みと意識が、日常の礼儀正しさにもつながっているのでしょうね。また試験前になると、柔道部では道場に机を広げてみんなで勉強しています。どのクラブも勉強とクラブを両立させようという雰囲気で、それぞれ自主的に工夫しているようです」
クラブ活動は自由参加だが、同校では全生徒の約7割が文化系・スポーツ系のクラブに参加しているという。
4コース制の新しい編成にともない、2007年度入試の選考方法も変わる。推薦入試が2回と一般入試が実施され、一般入試が従来の作文から、「総合問題」となります。
生徒一人ひとりの学力アップを図るきめ細かな学習指導体制が同校の強みだが、「スーパーセレクトコース」の新設により、どのような効果と実績が創出されるか注目される。
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