プレゼンテーションは英語で
夏休み間近の7月11日、今年で第2回目を迎える「K−SEP」がスタートした。
「K−SEP」とは「Kyoei Summer English Program」を略したもの。アメリカから招かれた6名の大学生が、2週間にわたって中学3年生に英語の授業を行う。他の教科はすでに1学期の授業を終えており、この日から授業はすべて英語となる。
大学生たちはそれぞれ、ファッションや写真、Movie、Yearbookなどの専門分野を持っているため、生徒は10数名ずつのグループに分かれて1人の大学生につき、各テーマについて学ぶ。休憩時間以外は日本語禁止。最終日には研究成果を英語でプレゼンする。中学1年次から機会あるごとに人前で発表するトレーニングを受けてきた生徒たちにとって、プレゼンは大きな楽しみでもある。
大学生のなかの紅一点、レイチェルさんの専門はファッション。彼女のクラスでは最終日にファッションショーを予定している。生徒がアイデアを出し合い、衣装を手作りする。教室の壁には、カウボーイルックやリゾートウェア、ドレスなど、生徒が思い思いに描いたデザイン画が掲示されている。洋服づくりと並行して、モデルの歩き方やターンの練習にも余念がない。本番では1人ずつ舞台中央に立ち、作品のコンセプトを英語でコメントする。
「Movie」のクラスでは映画作りが進んでいる。シナリオは生徒たちのオリジナル。撮影した映像をパソコンに取り込み、編集する。ディスプレイ上には、数日前に撮影した傘をさして歩く女子生徒の映像が映し出されている。ビデオカメラを手にした男子生徒は「ストーリーは本番まで内緒」と、ニッコリほほえんだ。
「K−SEP」の効果
「K−SEP」期間中には授業以外に、大学生たちとともにバレーボールを楽しんだり、近くの自然公園へ出かけて飯ごう炊飯でカレーをつくったりするなど、レクリエーションもあり、互いに言葉の壁を越えて親しさを増す。また、授業の合間にはゲームやクイズなどの遊びも取り入れている。校内オリエンテーリングでは、生徒たちは英語で書かれた指示書を手に、階段を上り下りし、廊下を曲がり、次のポイントへと向かって学校中を歩き回る。
どのクラスでも大学生と生徒はファーストネームで呼び合い、打ち解けた雰囲気。生徒たちの英語力ではまだ流暢な英会話というわけにはいかないが、コミュニケーションには困らないようだ。
宇野禎弘教頭は「知っている単語を並べてみたり、身振り手振り、身体全身で意思疎通を図っています」と笑顔で話す。
「K−SEP」最後の夜は全員で校舎に泊まりこみ、翌日のプレゼンに備えて打ち合わせをしたり、2週間をともに過ごした大学生たちと別れを惜しむ。
「『K−SEP』の経験が、生徒たちの英語に対する姿勢を大きく変えます」と宇野教頭。
昨年の第1回「K−SEP」を体験した第1期生の現高校1年生は、英会話に対する積極性が増し、外国からのお客様にも物怖じせずに話しかけられるようになったという。
中学卒業までに英会話をマスター
世界のリーダー育成を目指す同校では、開校以来「地球言語」としての英語力養成に力を入れてきた。
毎朝授業前には10分間の英語リスニングタイム。ネイティヴスピーカーによる英会話の授業、単語速習や暗誦コンテストなどで英語力を伸ばしている。
その成果は英検の結果にも表れている。1期生は中学終了時点で生徒の97%に当たる73名が3級以上に合格。準2級は26名、2級合格者は8名を数えた。2期生である現中学3年生も2年終了時点ですでに76%が3級以上に合格している。準2級以上も18名に上る。
「『K−SEP』をはじめ、ネイティヴスピーカーと話す機会の多さが、英語に対するモチベーションを高めています」。
今年度からは、中学3年の2月から3月にかけて1ヵ月間のカナダ語学研修を実施する予定だ。ホームステイしながら、現地の高校で授業を受ける。
宇野教頭は「高校受験のない中高一貫校のメリットを活かし、春日部共栄中学の英語教育の集大成となるような研修にしたい。中学で一通り英会話をマスターさせて高校へ進ませます」と意気込みを語る。
ただし1ヵ月間にも及ぶ海外研修のため、まず希望制でスタートし、2年後ぐらいに全員参加とする考えだ。現段階では3年生の約三分の一が参加を希望している。 |
生徒が主役の学校説明会
開校から4年。年を追うごとに同校志望者数は増加している。昨年度より募集定員を60名から120名へと増員し、入試問題も2科4科選択から4科入試に統一した。今年度の入学生は男女合わせて127名。いずれも小学校4・5年頃から4科を学習してきた生徒たちだ。
「入学生の学力レベルも確実に上がってきています」と宇野教頭。
同校受験者の併願校には、埼玉県内だけでなく東京・千葉の難関中学の名が並んでいる。大学進学実績によって志願者動向が大きな影響を受ける中学受験で、まだ卒業生を出していない同校に人気が集まるのはなぜだろうか。
その理由を宇野教頭は「生徒が出身塾に遊びに行き、学校が楽しいと学校生活の様子を話しているからでは」と推測する。
保護者による口コミ効果も大きい。学校説明会の参加者数も大幅に増加している。
同校の学校説明会の特長は、生徒が受付から案内、司会、進行のすべてを担当すること。パワーポイントを使って学校を紹介し、参加者からの質問にも答える。司会や説明役が話す内容も自分たちで考えてアレンジする。担当するのは中学1年から3年までの希望者。ただし、ほぼ全員が希望するため、3年間で1回か2回しか順番が回ってこないという。生徒自身が、説明会で堂々と学校の楽しさや素晴らしさを紹介する。その姿こそが春日部共栄中学校の優れた教育を表しているといえるかもしれない。
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