本気で楽しむSpecial Wednesday
1学期末の試験も終わった7月7日、滝川第二中学校では七夕のイベントが行われた。各教室では近くの竹林から採ってきたという笹に1年生が短冊の飾り付けを行っている。校舎の外では縦割りの竹をつなぎ合わせた“そうめん流し”の仕掛けが準備され、その横には竹で作った器と箸が並べられている。すべて手作りである。中学主任の得田拓也教諭は「子どもたちは幼稚園で七夕を味わって以来ではないでしょうか。中学校では周囲に生えている竹がこんなふうに活用できると、自然の可能性に気付きながら楽しめたらいいと思います」と、自らも楽しんでいる様子。
そうめん流しの仕掛けから、竹製の器と箸を生徒の人数分を準備したのは平田家興教諭だ。さぞ大変だったろうと聞くと「あまり早く準備すると器にカビが生えますから、1、2日で作りました。生徒も手伝ってくれましたしね。仕掛けは今朝来て作ったんですよ」と汗を流しながら陽気に笑う。体験学習で生徒や保護者からも人気が高い教諭だ。
1年生と2年生160人分のそうめんを湯がいたのは、応援に駆けつけた保護者たちだ。大ぶりのザルに何杯ものそうめんが準備されている光景は壮観である。「去年もやりました。こういうイベントは先生方の準備も大変だと思いますが、それだけに先生の子どもたちへの愛情を感じます」と保護者の一人は話す。
準備が整ったところで、まずは2年生たちが体験。すでに去年、体験済みとはいえ、竹箸を手に手に興奮気味だ。校舎の窓から麺が流されると、全員、喜色満面で食べ始めた。背丈が届かずにそうめんをすくえない生徒のために、教員の一人はブロックや椅子を持ってくる。いつの間にか瀧川好庸校長も仲間入りし、和気あいあいとイベントを楽しんでいた。
同校では毎週水曜日をSpecial Wednesdayと名づけ、主要5教科の授業を入れず、総合学習として様々な体験学習を実施している。この日のイベントもその一環。瀧川校長は「水曜日以外は土曜日も教科学習をみっちりとやりますが、週半ばにSpecial
Wednesdayを設けることで、一週間にメリハリがつき、学習がより効果的に行えます。体験を通して感性が磨かれ人間関係も豊かになります。それに家庭での話題を提供することにもなります」とSpecial
Wednesdayの意義を語る。
教員と生徒の信頼関係はこうした体験を共有することと、日常の厳格さを保った授業から築かれる。人間関係に垣根を感じさせず、校内に一歩踏み入れば、高校生も中学生も、すれちがうごとに挨拶を欠かさないところがすがすがしい。生徒と教員が互いに尊重し会っている印象を受けた。
Special Wednesdayではほかに芸術鑑賞会やテーブルマナー教室、地域交流会をはじめ、農園芸作業、ゴルフといった異彩際立つ体験学習も実施。また、有名人を選びその人物について調べる「私の履歴書」作り(日経新聞日曜版掲載「私の履歴書」関連の教育プログラム)をパワーポイントでまとめて発表するなど教科横断的な取り組みも行っている。
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徹底したシラバスと
100分授業でつける学力
中学入学時に生徒に手渡されるシラバスで、生徒と教員はその後の6年間の学習目標を共有することになる。教員にとっては週単位、月単位の学習計画の実施に加え、生徒一人ひとりへの定着が問われる。生徒は学習の詳細な流れ、学習上の留意点や評価の観点が明確に示されているため、あとはいかに自主学習能力を高めるかが問われている。
中学1年次からの国、英、数の主要3教科での100分授業は、前授業の復習から始まり、解説から導入、展開、例題を用いての演習、到達度確認といった一連の流れを効率的に行うのに最適の授業形態だ。生徒は小学校での45分授業から一気に100分授業を受けるようになるわけだが、入試広報室・副室長の北岡浩教諭は「100分授業への生徒の適応力は大人が考えるよりも大きいですよ」と話す。
取材当日は学期末試験の直後だったが、答案の返却について教員間で“考査の翌日に返そう”と申し合わせたそうだ。なぜか。試験内容の記憶がまだ新しいうちに、誤りを正し、解説することが学習の定着に欠かせないからだという。北岡教諭は「正直言って、考査翌日の返却は教員にとってプレッシャーを感じるものですが、生徒にとっては間違いなくこの方法がいいのです」と。
中学校での週当たりの授業時間数はSpecial Wednesdayなど総合、特活を含め 37時間。芸術や技術家庭といった大学入試に無関係といわれる授業の、いわゆる“読み替え”は一切、行っていない。総合的な人間力の向上に重点を置く滝二の方針である。
合格実績の安定化が生んだ
スーパー特進Lコース
高等学校では2005年の入試で国公立大へ49名の合格者(うち現役合格38名)を出し、実績が安定したとして、これまでの「特進Lコース」「Lコース」「Cコース」に加え、新たに「スーパー特進Lコース」を設置した。理系科目に重点を置き、東京大、京都大や医歯薬系の大学を目指すコースだ。いわゆるエリート養成コースだが、高度な受験指導だけでなく総合学習の側面からも真のエリートにふさわしい豊かな感性を持った社会人を育てることを目標としている。
同コースでは朝8時45分〜16時15分まで基本の7時間授業を終えた後、16時45分から18時25分まで“100分ハイレベル補習”を行う。また、隔週土曜日に国・数・英を中心とした確認テストを実施し、このテストで目標到達点に至っていない生徒は、毎朝7時30分からの“確認テスト補完早朝補習”を受ける。夏期休暇には20日間の講習、5日間の学習合宿、冬季・春期休暇にはそれぞれ約7日間の講習が行われる。
北岡教諭は「サポート体制が確立しているので、学校内だけの学習で国公立大へ現役合格も可能です。実際、そういう生徒は今までにもいましたから」と校内のサポート体制に自信を見せ、さらに「受験テクニックだけを教えるのではなく、論理的に考える力をつけていきます」と付け加えた。
1984年に開校以来、人間教育と確かな学力保障の両面に力を注ぎ、歩んできた滝川第二高等学校は、昨年、中学校を開校し、本年、高等学校で新たにコースを増設した。大きな可能性を感じさせながら、22年目を歩んでいく。
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