新島襄の精神を受け継ぐ
多彩な国際交流活動
「同志社を創立した新島襄は、もともと大阪の地に学校設立を希望していました。しかし、様々な事情があり、願いは叶いませんでした。本校が誕生したことで新島の精神が大阪にも甦ったとうれしく思っています」と話してくれたのは、自身も同志社香里の出身である校長の瀧英次先生。
「新島が活躍した幕末から明治もそうでしたが、これからの時代は確実に海外からの来訪者が増えます。彼らと交流するには語学力もちろんのこと、多文化を理解する教養や知識が不可欠です」
国際主義を掲げる同志社香里は、海外研修制度が非常に充実している。一例をあげると、ニュージーランドとカナダで行う3週間の夏期語学研修(中3から高3対象)、アメリカ、イギリスでの11日間の春期語学研修(中3から高2対象)、新島襄が学んだアメリカのフィリップス・アカデミーでの夏期研修(高1から高3対象)、夏期休暇に行う3週間のオーストラリア短期交換留学(高1から高3対象)など、枚挙に暇がない。
同志社4校の共通プログラムとして20年以上続いている「NUEVA交流プログラム」という交流活動もある。生徒はアメリカ・サンフランシスコにあるNUEVAスクールで10日間にわたり授業や課外活動などを体験する。反対にNUEVAスクールの生徒が来日して同志社各校でも交流を深めている。
「今年から新たに、中3の3学期にニュージーランドターム留学を始めました。現地の中学校で1月から3月までじっくり学ぶことで、高校でもさらに開花をしてほしいと考えました」
本格的な留学も可能だ。校内試験に合格すれば、1年間、希望する海外の学校で授業を受けることができる。外部の様々な留学プログラムを利用して留学する生徒も多い。留学を体験した生徒は、毎年12月に開かれる「theSmall Planet」という国際交流イベントに出場し、自身の体験をプレゼンテーションしたり、英語のスピーチコンテストに参加している。
2021年メディアセンター誕生
ボランティア、人権教育も盛ん
瀧 英次 校長
昨年、全教室に電子黒板を設置し、ICT環境を整備。2021年3月には、新たにICT教育の拠点となるメディアセンターが誕生する。最新の機器を導入し、調べ学習やグループワーク、プレゼンテーションなどのアクティブラーニングに活用していく。図書室やラーニングコモンズも配置する。
「メディアセンターは卒業生の寄付を原資に建設しています。同志社は寄付から始まった学校ですので、卒業生はその精神を今も受け継いでいます」 ICT教育を進めるが、しかし大事なことを忘れてはいけないと瀧校長は言う。
「IT機器を使いこなすのも重要ですが、それ以上に必要なのはコミュニケーション力です。いくら英語が上達しても、コミュニケーション力がないと、ただの道具でしかありません。
メディアセンターにあえて図書室をつくるのは、本から得るものを大切にしてほしいと願ってのことです。読書を通してしっかりとした知識や教養を身につけ、確固たる意見を述べられる人間に成長してほしい。様々な人とコミュニケーションをとってほしいと考えています」
現在ある情報教室にもパソコンが揃っており、クラス単位で使えるタブレットもある。それらを活用して、調べ学習やプレゼンテーションに取り組んでいる。
キリスト教の学校としての活動も多い。正規の授業として週に1時間、聖書の時間を設けている。週に2回全校生が集まる礼拝を行い、隔週で長時間礼拝も実施。市民団体と連携したボランティア活動も盛んだ。地域の清掃や社会福祉施設への訪問などに積極的に取り組んでいる。人権教育も重んじており、車いすでの移動を体験する課外学習も恒例となった。普段とは異なる視点を身につけ、いたわりの心を養うことを目的としている。
|
10年一貫で人間力を磨く
生涯学び続ける能力を育む
近年、志願者が増え続けている同志社香里。だが、瀧校長は結果に対して慎重である。
「志願者が増えたことを単に良いとは思っておりません。受験生の数で学校の価値は決まるわけではないからです。本校に興味を持たれた生徒や保護者の皆さんは、ぜひオープンキャンパスや学校説明会に参加して授業やクラブ活動を体験し、学校の中身を理解した上で選んでいただきたいと思っています」
卒業生の97・7%は同志社大学、同志社女子大学に進学する。受験勉強に時間を割く必要がないため、ゆとりを持った教育を行っている。
「中高大の10年間で身につけるべきは『人間力』です。これは建学の精神の一つ『良心教育』に通じるもので、これからの社会において最も問われる力です」
自由闊達で生徒の自主性を重んじる同校。その気風にあこがれて大阪だけでなく、遠方から通学する生徒も多い。兵庫の三田、大阪の貝塚、泉南などの南部地域、奈良の橿原などからも通っている。通学時間が1時間を超す生徒が少なくないので、登校時間は他校より遅い8時50分に設定する配慮をしている。
クラブ活動も盛んだ。とりわけダンス部は全国大会で1位になるなど、目覚ましい活躍を見せている。しかし校長は、その成果を学校の宣伝には使いたくないと言う。
「ダンス部にプロの指導者はいません。振付けや演出はすべて生徒自身が行っています。どのクラブもそうですが、結果ではなく、がんばって練習する過程こそが大事だと思います。
人生100年時代と言われる時代に重要なのは、教育のイノベーションです。これからは何歳になってもスキルアップが求められるでしょう。社会も多様化しており、主体性、自立性が必要な時代を迎えています。そのためにも本校は常に改革を行い、進化し続ける学校でありたいと考えています」
|