国公立大へ214名が合格
学習環境を整えた新校舎
茨木市郊外の丘陵地に広大なキャンパスを持つ関西大倉。自然に囲まれた敷地は約12万平方メートルもあり、抜群の環境を誇っている。
「実際に学校用地として使っているのは4割にも満たないんです。森に住むカエル・モリアオガエルも生息しており、初夏になると産卵を見ることができます。森林から伐採した間伐材を技術家庭の授業で使うなど、この環境を活用しています」と話すのは、この春就任した古川英明校長である。
現在、校舎を全面的に建替えており、来年秋には1棟目の高校棟が完成する予定だ。
「校舎の老朽化が進んだこともあり、創立120年にあたる2022年までに、中学高校ともに新設改修する計画です。里山と共生できるプロジェクトを進めています」
新校舎には、自習・探究活動・情報検索ができる多機能型図書館が備わった「学習センター」をはじめ、教員と生徒が交流できる「コミュニケーションラウンジ」、食堂も多目的なイベントにも使え、食と憩いと自習のスペースとして建設される予定だ。
近年は進学校としても注目されており、この春は過去最高の大学合格実績を挙げた。国公立大に214名が合格。京都大11名、大阪大19名、神戸大12名、北海道大3名、九州大2名、滋賀大20名、大阪府立大15名他。関関同立には468名が合格。いずれも前年より大きく伸びている。
「何か特別な指導を行っているわけではないのですが、教員が自主的に受験対策講座を行い、熱心にがんばってくれました。生徒もついていこうと努力をした結果だと思います。生徒の国公立大志向が高まっていますので、5教科をきちんと勉強して実力をつけられる環境を整えていきたい。新校舎には、そのための工夫を凝らしています」
500名以上の指定校推薦の枠を持っているが、国公立志向が強くなったこともあり、近年では推薦枠を使うケースは減っているという。
企業の課題を解決する
半年間のプロジェクト
古川 英明 校長
中学からの6年一貫コースは、中3になると成績上位の希望者を選抜してSクラスを編成する。少数精鋭の特別カリキュラムによって、最難関大学への合格を目指す。授業は55分と他校に比べて長い。数学では基礎学力を確認する「鍛錬テスト」を週に1回実施。不合格者には補習を行い理解できるように指導している。また、毎朝10分間の読書時間を設け、生徒は読んだ本の紹介文を書いて読解力を養っている。
英語はネイティブ講師とのチームティーチングによるオールイングリッシュの授業を実施。中3の夏には、3泊4日の勉強合宿も行っている。英数国を中心に普段の授業よりもハイレベルな内容に挑む。自習時間も含めて朝8時台から夜11時前まで、まさに「勉強漬け」の日々を送る。
高校からの入学者には、難関国公立大を目指す「特進S」、国公立大を目指す「特進」、幅広い進路を目指せる「総合」の3コースが用意されている。
キャリア教育や課外活動にも力をいれている関西大倉。介護実習や職場体験、米作りなどを積極的に行っている。
「本校の近くに東村という地区があるのですが、住民の方々に協力していただき、田植えから収穫まで体験させてもらっています。『倉の愛舞』という通常のコシヒカリの1・5倍の大きさになる特別なコシヒカリです。お米の名前は、生徒が村の方々と一緒に考えました」
ユニークなのは「企業探究」という活動である。高1で実施するこのプロジェクトは、企業が抱える様々な課題を生徒がチームを組んで解決に導いていくものである。これまでのテーマは、産經新聞社から「防災グッズになる新聞をつくってほしい」とか、大成建設から「病気を治すだけでなく、心も元気になる子ども病院を考えてほしい」といった実践的な課題が多い。
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「毎年5月頃にスタートして、半年かけて企業を訪問し、調査を行い、結果をまとめてプレゼンテーションをします。審査にあたるのは企業の担当者ですから、生徒は緊張しますが、自ら動いて調べ、プランを練っていく。この過程が生徒の成長を促していくと考えています。企業の方からも『我々にはない発想があり、業務のヒントになります』と評価をいただいています」
英国の名門校への
研修制度がスタート
海外研修制度も充実している。姉妹校である韓国の善隣インターネット校との交流は長く続いている。6年一貫コースでは、高1の夏休みにニュージーランドのウェリントンで2週間の語学研修を行っている。ホームステイしながら現地の学校で授業を受けるプログラムだ。また、高校から入学した生徒には、夏休みの3週間、イギリスの学校の寮に滞在して英語を学ぶ研修も用意されている。
「来年の夏から新たに英国のパブリック・スクールの一つ、『ハロウ・スクール』と提携して、現地で2週間の研修を始める予定です。この学校は英国の名門私立高校で、ウィンストン・チャーチルをはじめ、歴代の首相が数多く卒業したことで知られています。学校はロンドンの校外の自然豊かな環境にあり、授業は非常にハイレベルですが、生徒にとって貴重な体験になると考えています」
この研修の対象は、高1と高2生。6年一貫コースの生徒は、従来のニュージーランドかハロウ・スクールのいずれかを選択することができる。
創立120周年に向かって、校舎を一新。他校に先駆け、ハイレベルな海外研修も始める関西大倉。今後の躍進が楽しみな学校である。
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