豊かな自然と高い設計技術を融合した新校舎
金蘭千里高等学校・中学校は、最寄りの駅から徒歩10分という便利な場所にあるが、近隣には大阪大学や広大な公園があり、緑に囲まれたすばらしい環境の中にある。完成した新校舎は、6階建てで、1階は芸術の教室、2階は理科系の教室と職員室、3〜6階までが普通教室である。緑と自然光が充分取り入れられ生かされるよう、ガラスが多く使われていることが特徴の1つで、教室の南側の壁面は、全面ガラス張り。春には暖かな光とともに満開の桜がすぐそばに、その向こうには多くの木々が茂り、街からは遠く離れた、まるで避暑地にいるかのような景観である。壁は白が基調になっており、ロッカーなどは温かな木調で統一。ベンチやトイレなどは赤やオレンジがポイントに使われ、かわいらしい雰囲気である。
普通教室廊下には、インターネットができるパソコン用カウンター、実験室、視聴覚室は広さも充分で、最新の設備が整う。
この校舎を作るにあたり、コンセプトとした点が2つあると辻本賢校長は話す。
「1つは、従来充分でなかった音楽・美術・書道など芸術のための教室を1階に、それから、医学部に進学する生徒が多いので、サイエンスのための教室を2階に作ったことです。2つめは、生徒を真中にして教師と保護者の方を横軸に、卒業生を縦軸にして両軸を生かした教育ができるように、と考えました」。
生徒を真中にした横軸。まずは、教師については、広い職員室を見れば理解できる。全面ガラスの大きなドアを開けると、ベンチが置いてあり、左右に中高の教師の机が並ぶ。それら机が置いてあるスペースの横一面には、丸テーブルと椅子が数セット。
「これは、生徒と教師のコミュニケーションスペースで、私が絶対に譲らなかった場所です。生徒が質問などあれば、教師はゆっくりと教えたり、相談にのったりできるよう、どうしてもテーブルのある広いスペースは要ると考えていました」。
一方保護者とのコミュニケーションについては、懇談などがいつでもできるよう応接室を4部屋つくり、広い視聴覚室では保護者向けの講習会を実施しようと計画している。
縦軸の卒業生との連携については、以前より進路講演を開催しており、生徒にも好評である。卒業生は医師を始め、芸術家、釣りのプロなど多くの方面で活躍している人が多い。この新校舎を設計したのも卒業生である。今後も多くの卒業生に協力してもらい、生徒たちに良い刺激を与えていきたいと校長は言う。
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医学部クラスを新設
今年度の中学受験志願者数は、定員150名に対し、834名であった。164名が入学し、5クラスでスタート。1クラスは33名ほどだ。大学進学については、国公立を目指す生徒が大半で、難関私立に合格しても、進学する者はわずかである。そしてビジネス誌に取り上げられたように、保護者が医師であり、医学部進学を希望する生徒が毎年30名強はいる。
「医学部というのは、科目が多いので、昨年までは補習という形で教えていましたが、1クラス分くらいの人数が集まるので、今年の高2から専門のクラスを作ることにしたのです」。
医学部クラスに入るには、試験などはなく、希望制。同校では習熟度別クラスもなく、進路指導も偏差値中心でなく、本人の希望を重視して判断をする。この他中間期末考査がないのも大きな特徴だ。学習の定着は毎日の20分テストを中心に行われ、英語の長文や難易度の高い数学の問題等は学期ごとに1〜2回の3教科70分テストを実施。週6日制、36時間授業で、長期休暇は公立中高学校よりも1年間で約24日少ない。中学・高校の基礎的な内容はほぼすべて高校1年で終え、あとの2年間は応用と大学進学のための学習に充てる。
「授業日数を数えると、6年間で公立の7年分あります」と校長は言うが、高校1年で中高課程をほぼ終えるというのには、驚きだ。英語教育も定評があり、英検では中高ともに優秀者が多いため表彰されている。ネイティブの教師は4人おり、中1〜2では、英語は少人数のクラスをさらに2つに分けて授業が行われる。高1ではイギリスへの海外研修(希望制)で、生きた英語を学ぶ。スピーチコンテストで賞を取ったり、TOEICで高得点をとる生徒もいる。
ユニークな体育と野外活動
体育の授業は、週3時間のうち2時間を男子はサッカー、女子はバレーボールを6年間行い、残り1時間はテニスや卓球などから好きなものを選ぶというユニークなもの。これは「スポーツを通じて規律を守り、豊かな人間性を養おう」という教育目標を掲げているためだ。同様に野外活動によってたくましい生命力を養い、クラスメイトや教師との親睦を図ることを目標に、大山、乗鞍上高地など毎年全学年で3泊4日ほどのキャンプを行っている。
「生徒たちの才能は無限です。刺激を与えそれを引き出すことが我々の仕事。主要5教科を主においた40年間の教育方針をベースに芸術面などの学習も充分できる環境が整いました。今春より金蘭千里学園として100周年を迎える金蘭会学園からも独立し、あらゆる意味でセカンドステージに立ったという気持ちです」。充実したセカンドステージで、どのような若者たちが育っていくのか、さらに注目していきたい。
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