高校のコース制を中学に
めざす進路と適性に対応
賢明女子学院中学校・高等学校は世界遺産・姫路城の中堀の内側に位置し、姫路城公園の緑豊かな自然と美術館などの文化施設に恵まれている。創立は1951年。マリ−・リヴィエによって創立された聖母奉献修道会を母体とする伝統ある女子校だ。
学院創立者であるマリー・リヴィエは、「生徒一人ひとりの内にある可能性や個性は、何よりも尊いものである」と説いた。この教えを今に受け継ぐものとして、新プロジェクトは「リヴィエプロジェクト」と名付けられている。
今年就任2年目の松浦明生校長は、「本校には、イエス・キリストの教えに従って弱い立場の人の側に立ち、世界に貢献したいという精神が浸透しています。しかし、ただ単にそこにとどまるのではなく、具体的に自分はどういう分野で人々に貢献できるのかということが重要です。生徒が自分の適性や資質に気づき、その分野で頑張っていけば、100%の力を発揮できるはず。そういう目で見ると、まだまだ後押しが必要だと感じました」とプロジェクト立ち上げの意図を説明する。
プロジェクトはまず、生徒の目標や適性に合わせた学びを提供するために、来年度から中学にコース制を導入する。
高校ではすでに2013年度から2つのコースを設置している。難関国公立大学を進学目標とする「ソフィア(特進)」と難関私立大学や国公立大学を目指す「ルミエール(進学)」だ。
高校のコース制導入により、進学実績は確実に伸びてきている。今年は大阪大3名、神戸大2名を始めとして、国公立大学に24名が合格した。その中には国際教養大や防衛医科大学校など同校初の進学先も名を連ねている。
このコース制を中学にも導入し、それぞれ「ソフィアJr.」「ルミエールJr.」として開設する。
「ソフィアJr.」は募集定員65名。進度を早め、応用力をつける難度の高い授業を行う。高校は基本的に「ソフィア」コースへ進学するが、希望により「ルミエール」に進むこともできる。
一方「ルミエールJr.」は募集定員80名で、基礎学力の定着を図る。中学1年の英語の授業は、クラスを半分に分けた少人数で行う。また、中学1年では「ソフィアJr.」との進度の差はあえて大きくしない。とのこと。中学の間は進級時にコース変更が可能だ。
コース制導入に付随して充実させていくのが放課後学習である。従来はどちらかというとフォローアップに力を入れていたが、来年度からは生徒の学力に応じてきめ細かく対応する。上位層はさらに伸ばし、サポートが必要な生徒には基礎学力を定着させる体制を整備していく。
学びもスタイルも
新しいクロススタディ
生徒の興味関心の幅を広げ、自らの適性に気づいてもらうための取り組みが、中学の全学年で実施する教科横断型の「クロススタディ」だ。
授業は週に1時間。6人の先生方が順番に4コマずつ担当し、教科書の枠を超えて自分の専門分野や個人的な興味で研究している、いわば趣味の分野を講義する。ジャンルは、人文、社会科学、自然科学、芸術など、特に決まりはない。内容も授業スタイルも自由だ。例えば、ビートルズ好きの先生が彼らの音楽や歌詞、時代背景など蘊蓄を語ってもよい。恵まれた立地を生かして、城の研究や植物観察もできる。
「すでに何人かの先生方が立候補してくれています。内容は高度になるかもしれませんが、生徒の興味関心を引きつける工夫を凝らした面白い授業が展開されると思います」と松浦校長は楽しみにしている。
生徒たちは、1年間で6テーマ、3年間で18テーマについて学ぶことになる。幅広い分野に目を向け、知的好奇心を刺激されることで、自分の適性に気づくきっかけともなる。将来の選択肢が広がるに違いない。 |
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創立70周年に向けて
校舎もリニューアル
コース制導入やクロススタディと同時に理数教育の強化にも取り組む。現在は生徒の約3割が理系に進学。その多くが医歯薬看護分野である。
松浦校長は、「生徒たちを見ていると、文系志望者のなかにも建築など理工系に興味を持っている生徒が案外多いのではと思っています」と話す。
それにも関わらず文系を選択するのは、理科に対する苦手意識だという。国公立大学入試の理科2科目が大きな壁となり、尻込みしてしまう。
「意図的に理系に進ませるのではなく、生徒の潜在的な希望を大事にしたい」
そのために、まず理科教室を充実させる。現在3教室ある理科教室を全面リニューアルし、興味深い実験ができるように最新の設備を整える。理科の授業だけでなく、クロススタディでも理科教室を活用して通常授業とは異なる実験が可能になる。
松浦校長は、「実験の面白さを知って、理科は難しいという先入観を払拭させたい」と期待する。
さらに理科教室だけでなく、4年後の創立70周年に向けて講堂などを順次リニューアルし、快適な学習環境を整えていく。
リヴィエプロジェクトは、生徒一人ひとりの可能性を最大限に引き出し、成長を支える。自分の資質や適性を見いだした生徒が、教育理念である「The Best(最善をめざす)」の精神を発揮するとき、揺るぎない自信が培われていく。
「本校の生徒たちはとにかく明るくて活発。ものごとを素直に吸収して伸びる力がある。そういう生徒たちを、社会のために働いてくれる強い意志と実行力のある人に育てたい」と松浦校長。
今年度から学院のキャッチフレーズは、‘Beacon Light’(燈台の光)である。この言葉は校歌にも歌われている。もともとは、学院が燈台の光となって「あなた方の真理の道を照らします」という意味である。
しかし卒業した後は、「あなた方が燈台の光となってほしい」という願いが込められている。多様な能力を開花させていくことが、燈台に光を点してくことにつながるはずだ。
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