生徒たちは原石のダイヤ
それを輝かせることが
新校長の教育の根幹
創立60周年を機に新築された校舎と、人工芝や天然芝の揺れる3つのグラウンドを含んだ緑豊かで広大なキャンパス。恵まれた学習環境と高い大学進学実績を持つ、大阪唯一の同志社系列校である同志社香里中学校・高等学校では、今年4月から新しい道しるべである瀧英次新校長が就任した。瀧校長は中学校から同志社香里で学び、同志社大学に進学、その後、教師として同志社香里へ戻り、教頭を経て、現在に至るまで、40年以上を同志社で過ごしている。
「教頭に就任してからの10年で、高校入試の制度変更や中学の後期入試の導入など、大きな変化は多数ありました。それを踏まえた上で、今度は校長の立場から今、何が求められているのか、また、それを実現するために何をしたらよいのかを日々考えています」
瀧校長がこだわるのは『大阪で学ぶ同志社の志』。元々、創立者新島襄は大阪での開学を目指していたが、様々なできごとがあり、結果、京都で同志社を開校することになった。いわば大阪は同志社にとってゆかりの地である。以前は夏時間・冬時間として一年の中で始業時間や授業時間を変更していたが、現在は、始業時間を8時50分に統一したことで、通学範囲が広がり、京阪神を中心に生徒たちは近畿一円から通学している。また、在校生の同志社大・同志社女子大への進学率は約95%。大学受験合格を最終目標に高校生活を送る多くの他校生とは異なり、同志社香里の生徒は大学卒業後に社会でどのような活躍をするかを考えて進学していく。そのため、生徒個々の興味・関心を大学で広げていくことができるような、確かな学力と人間力をつけるのが、同志社香里の生徒育成だ。
「同志社香里では自ら学ぶ姿勢や行動力、思考力の育成を主眼とした『主体的・対話的で深い学び』を重視しています。それらの深い学びを通して生きる力を育み、自立した人物を育てて生きたいと考えています。そのためにも、大学を含む10年一貫教育の基礎を同志社香里でしっかりと育てていくことが大事なのです」
子どもたちは皆ダイヤモンドの原石であると語る瀧校長。各々の個性という輝き方の違いはあるものの、ダイヤはダイヤでしか磨けない。個性同士を擦り合わせ、互いを認め合い、切磋琢磨することで輝きを増して成長させることが瀧校長の教育目標である。
足を止めない改革で
「?儻不羈(てきとうふき)」な
生徒を育成
週6日制授業、大学のキャリアセンターや卒業生と協力した生きたキャリア教育、高大連携講座、国公立大学や同志社大以外の他学部への受験のためのアドバンス講座、礼拝やキリスト教の授業など、同志社香里の学習の特色は様々。海外で学ぶプログラムも充実しており、海外語学研修の他、短期留学や国際交流イベント、交換留学生との触れ合いなど、異文化に触れ、刺激を受ける機会は多い。また、TOEICやTOEFLも外部講師を招聘した対策講座を開くなど、大学に入学後すぐに留学できるだけの語学力を身に付けることができるようになっている。今話題のICT教育は実践されているものの生徒一人ひとりに一台のPCやiPad配布ということは行っていない。
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「PCやネット環境は時代とともにの変化し、若い世代を中心にデジタルネィティブが増えていきます。2020年には自動運転の車が導入され、2045年には人工知能が人の能力を超えるという噂も囁かれています。便利な時代ですが、その基盤を作るのは人間であり、便利なものを使って良いことも悪いことも考えつくのが人間です。あくまでもITはツールであり、ネットもまた英語と同じコミュニケーションツールに過ぎません。それらのツールをどう使って学びにつなげていくかをまず考えないと、生徒にiPadなどを渡しても意味が無いでしょう」
2年前、全教員にiPadが配布された。教員がそれをどう使いこなし、どのようなシステムで学習に取り入れていくか、教員が現在、研鑚を積んでいる最中で、今後本格的な導入につなげていきたいと考えている。また、書くことも学習にとっては大切なこと。ネットで調べて読むことはできても、漢字や英単語などは、実際に自分の手で書かないとなかなか覚えられないため、安易なPC導入は避けている。
「このICT教育を含め、色々な面で改革の足を止めないことが大事だと考えています。生徒募集の結果や大学合格実績を見て『安定している』という評価をいただくこともありますが、そこで我々まで安心してしまっては次年度に進めません。次々と足を進めることでしか、結果は生まれないのです。同志社香里の教育方針を知って、受験生たちの進学先に選んでもらえるように努力し続けないとすぐに停滞してしまうでしょう」
瀧校長は教員時代に考えていた本校内の「変化すべきこと」を実践し、安定した学校運営ができるよう努力を続けたいと語る。その教育の根幹は、大阪で学ぶ同志社の志「?儻不羈(てきとうふき)」な生徒を育成すること。これは創始者である新島襄が「才気が優れ、独立心が旺盛なさま」な理想的な学生を表したものであり、その精神に共感した瀧校長が同志社香里の生徒像としてあらゆる場面で使用している言葉だ。その言葉のとおりの生徒たちが学ぶ活気あるキャンパスで、今日も瀧校長は生徒のために駆け回っている。
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