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中学・高校受験:学びネット

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平安女学院中学校・高等学校

 
  「女性の時代」にこそ女子教育に特化した全人教育を目指す
 
2005年入試で中学、高校ともに受験者数、入学者数を大きく減らした平安女学院は新校長の指導体制のもと、女子教育に特化した中・高一貫校を新生させる。進むべき方向を特定分野の専門化教育ではなく、バランスの取れた教養人を育成するリベラル・アーツ系の学校と明確化。名門私立大学への指定校枠の大幅な拡大、4年制系列大学での保育士資格の新設(申請中)など、新生に向け動きが急速に進んでいる。

校 長: 長野 雅弘
住 所: 〒602-8013 京都市上京区下立売通烏丸西入
電 話: 075-414-8111
交 通: 地下鉄烏丸線「丸太町駅」
学生数: 中学校  118名
高等学校 470名 (2005.5.1現在)
ホームページ: http://www.heian.ac.jp

 

「将来、何になりたいか」ではなく「どう生きていけば幸せになれるか」

数年前、めざましい学校改革でマスコミから注目を集めた女子高があった。当時、これといった特色もなく、進学校でもないその女子高の入学者は激減していたが、抜本的な教員の意識改革を行なうことにより、入学者を大きく増やし続けた。その学校改革を指揮した人こそ、この4月から平安女子学院中学校・高等学校で校長を務める長野雅弘氏だ。

着任後まもなく長野校長が最初に行なったのが、教職員に向けた所信表明であった。10ページに及ぶ所信表明には月並みな学校改革案はなく、数字による現状の再認識と教員や授業のあるべき姿、今後の進むべき方向性が明確に示されている。
長野校長は「教員がこれまで当たり前だと感じていたことを見直す意識から改革が始まる」と語る。長野校長にとって教員の意識を端的に現していると思わせたのは、校内の雑然さだった。これは単に校内が雑然としているという問題以上に、放置している人間のハートの問題と指摘する。ともすれば見過ごされがちな小さな事象に学校の姿勢が映し出されていることを見逃してはいない。

所信表明に盛り込まれた「授業のあるべき姿」には今後の変革を予感させる十分な説得力がある。「教員は生徒に授業を通して『どう生きていけば幸せになれるのか』という問いに向き合わせなければならない。そのための理想的な教育は昔の寺子屋方式にある。そこでは読み・書き・算盤を教えるのではなく、読み・書き・算盤を人格的に優れた指導者が教えるのである」と。単に知識を覚えこませる授業ではなく、伝えるに足りる教員の人間性を重視していることが分かる。そのためには徹底した教材研究はもちろん、教員自身の人格を磨き、幅広い知識と豊かな人間性を身につけることが授業に欠くことのできない条件となる。教員自身が日々研鑽し、生き方の可能性を大きく広げることで、生徒はその姿から「どう生きていけば幸せになれるのか」を探り当てていく。それは取りも直さず「なぜ、学ぶのか」という問いに対する答えを引き出させる。

全人格女子教育に期待が持てる教員の資質

こうした長野校長の考え方は、これまで130年に渡ってキリスト教の教えを礎として歩んできた同校の宗教関係者らの教育方針となんら変わることはない。チャプレンと呼ばれる同校付きの牧師らは、校長の所信表明について「私たちの教育方針を代弁する心強い表明」と評価している。

また、4月以来あらゆる“慣例”の見直しを推進中だが、そんな中、教員の意識の変化も予想以上に早かったという。教員会議を一切廃止し、組織の機構も撤廃した。会議に費やしていた時間を生徒と向き合うために使うようになり、必要な連絡は朝の打ち合わせ時に行なうようにした。「この学校の教員はひとつ指摘すれば、その先を考えて行動する優秀な人材が多い」と長野校長。 

毎朝行なわれる校門での挨拶運動へは、ほぼ全員の教員が参加するようになったという。以前は生徒だけで行なっていた清掃活動も生徒と教員が協働するようになり、授業のみならず学校生活のあらゆる場面で、教員が生徒に自分自身を伝える全人教育が始まっている。

これまで豊かな資質を備えながらも、目指す方向が一定でなかった教員集団に、進むべき方向が明確に示されたことは、改革への大きな一歩を踏み出したといえる。改革の柱として、授業を最優先業務と位置づけ、各教員が担当する授業時間を削減。これにより教員は計画、準備、展開に至るまで十分に練られた授業を行なうことが課せられている。生徒に配布するプリントの類も目下のところ全て校長が目を通すという念の入れようだ。ここでも、当たり前と感じていたことをもう一度見直すという姿勢が貫かれている。

求められる女性の知恵と力を引き出す教育

現在、多くの私立の中学校、高等学校では男女共学化の流れが強まっている。その中で同校が敢えて女子教育に特化した方向付けを行なっていくのはなぜか。世界における現代のキーワードは優しさ、思いやり、子ども、環境、福祉、平和など女性的で不易なもので占められている。21世紀は「女性の時代」といわれるゆえんでもある。時代を超え、変わらないものへ目が向けられている現代こそ、同校は女子教育に特化した国際人の養成を進めていく。

具体的には「2階建て理論」と名づけられた理論の実践を中心に置く。社会のルールや規範を体得することを1階部分に据え、夢や希望を叶えて自己実現を図る部分を2階部分とし、それぞれでバランスの取れた教育を目指す。

「夢や希望の実現に邁進できる学校であるためには、正義が貫かれ、信用できる教職員がおり、生徒が安心して通うことのできる場所でなければならない」と長野校長は語る。「平安女学院に通わせていれば安心だと保護者に思ってもらえる学校づくりを実現する」とも。女子校として安全面にも万全を期すため、常時、数人の警備員配置を行なっているのもそのためだ。

進路選択の幅を広げ進学のチャンスを拡大

これまで4年制大学、短大をあわせて約100校(170名)の指定校推薦枠を確保していたが、今年度新たに名門私立大学の指定校大幅拡大に成功した。

また、平安女学院大学短期大学部の保育科の人気は近畿で最も高いとされるが、2006年度には同大学の4年制でも保育士の資格を手に入れることができるようにするため、現在、文部科学省、厚生労働省に許可申請中で、まもなく許可される見込み。これら系列大学への推薦は原則全員が受けられる。

2004年度の進学実績としては国公立大へ6人、関関同立へ合わせて45人が進学しているが、指定校推薦枠の拡大は来年以降の実績を確実に上げると見られる。「来年は入学者が増えるだろう」と早くも長野校長は自信をのぞかせる。

校長が着任して1週間が経った4月7日、同校の関係者、地元地域の関係者らが出席する中、2005年度の入学式が行なわれた。その席上、早くも「どうしてこんなにも学校が変わったのか」との声が聞かれたという。校内の環境改善により外観が変わったのは確かだろう。だが、実際に変わりつつあるのは環境を整えようとした教職員の意識であったことが実証される日も遠くないだろう。

京都御所の豊かな緑の西側、悠久の歴史の街で平安女子学院の“新生”に向けた改革が今後も続く。

 
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