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中学・高校受験:学びネット

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関西大倉中学校・高等学校

 
  社会への視点を広げ
未来へつなぐ人間教育
110年を超える歴史と伝統を誇る関西大倉中学校高等学校は、「徳育」を土台とするバランスのとれた教育を実践している。3年前からはカリキュラムや学校行事を見直し、日常の学習とリンクさせながら、段階を踏んで人間的に成長できるように体系化した。米づくり体験実習や清掃活動など様々な活動を通して地域社会と関わり、生徒たちは少しずつ、社会で働く未来の自分へと視野を広げている。

校 長: 尾崎 正敏
住 所: 〒567-0052 大阪府茨木市室山2-14-1
電 話: 072-643-6321
交 通: 阪急京都線「茨木市」、阪急千里線「北千里」/北大阪急行「千里中央」、阪急宝塚線「石橋」/JR京都線「茨木」の各駅からスクールバス運行
学生数: 中学校 404名
高等学校 1,607名 (2014.11.1現在)
ホームページ: http://www.kankura.jp

 

清掃活動から生まれる
社会の一員としての自覚

 関西大倉中学校は3年前、志願者数の落ち込みを契機として、「生徒をしっかり育てる」ことを出発点に授業内容や進度など、今の生徒たちにあった学びにするために教育活動を見直した。それらの1つとして、それまで単発的に実施していた学校行事やキャリア教育を体系化し、事前・事後学習を徹底することにより理解を深め、次の段階へと繋げている。

 六貫教育推進室の松村健司室長は、「徳育をベースとした人間教育により、将来に対する目的意識を持たせたい」と話す。

 中学1年生が最初に取り組むのは、米づくり体験学習だ。3年前から実施している。

 地元農家のサポートを受けながら、6月の田植えから10月の稲刈りまで、一緒に米づくりをする。その過程で、産業としての農業について学び、食育指導も受ける。理科と社会科、家庭科を横断的に学ぶ試みだ。農家の人から直接話を聞く機会もあり、専業農家が抱える制度的な難しさについても知ることになる。

 この米づくりで栽培する米は、地元ブランド米の 『倉の愛舞(くらのあいまい)』。従来のコシヒカリより粒が1.5倍も大きい。3年前に、地元農家が栽培に成功した。そこで、当時一緒に米づくりをしていた生徒たちからブランド名を公募して名前を付けた。「倉」は、もちろん「大倉」の「倉」だ。地域と生徒たちを結ぶ名前でもある。先輩が名付けたブランド米だからと、生徒たちは毎年、愛着をもって大切に育てている。

 地域の清掃活動も数年前にスタートした。全学年が学校の周りや「茨木」、「千里中央」、「北千里」、「石橋」などスクールバス発着駅の周辺を定期的に清掃している。

 「学内の清掃よりも、張り切って掃除してくれています」と松村室長は目を細める。

 生徒たちが一心に掃除に励む姿を見て、通りがかりに「ありがとう」と声をかけてくれる人も多い。ときには、差し入れをいただいたり、回を重ねるごとに地域の人たちとのコミュニケーションが増えた。

 「これまでは、『マナーが悪い』とお叱りを受けることもありましたが、清掃活動を始めてからはそのような声もなくなりました。生徒なりに地域に貢献できて、無意識のうちに社会の一員という自覚が芽生えてきたのだと思います」。

 新しい取り組みだけでなく、従来から実施している行事も見直した。

 中学3年5月の修学旅行は、観光型から体験型へと変更。3泊4日で鹿児島へ出かける。世界自然遺産である屋久島で、縄文杉を目指して朝4時過ぎに出発。往復22qの山道を11時間かけて歩く。長くて厳しい道のりだが、全員で乗り切ることで大きな充実感と達成感を得られる。

 屋久島の前日には、南九州市にある知覧特攻平和会館を訪れる。自分たちと年の近いお兄さんのような特攻隊員が、遺書を残して飛び立たなければならなかったことに、強く心を動かされる生徒が多い。戦争の悲惨さと、自然の力強さが深く胸に刻まれ、記憶に残る修学旅行となっている。

大人に一歩近づく
職業体験

 中学3年の11月、生徒は1〜2人ずつに分かれ、それぞれの職場に向かう。2日間の職業体験だ。就業場所は、企業や店舗など約70事業所。当日までに、生徒自身がお世話になる事業所にアポをとり、下見を兼ねた打ち合わせも済ましている。

 松村室長は、「キャリア教育を体系化し、1年からステップアップして職業体験に繋げています」と話す。

 まず、1年次では「キャリア職業ガイダンス」を行う。同校の前身にあたる関西商工学校が松下幸之助氏の母校であることから、毎年パナソニックの担当者が1年生に、実社会で求められる能力や勉強する意味を分かりやすく語ってくれる。

 「社会見学」では伊丹空港を訪問する。航空会社の担当者から整備や地上業務について説明を受けたり、施設見学することにより、管制業務や警備、レストランなど、実社会と同様に、様々な仕事によって空港が運営されていることを学ぶ。

 2年生の社会見学は、「大阪企業家ミュージアム」。大阪を舞台に活躍した企業家について話を聞き、将来の仕事を考えるきっかけとしている。

 また、「夢、実現へのメッセージ」というテーマで、各界の第一線で活躍する著名人を招いて講演会を開催。今年はロボットクリエーターの高橋智隆氏、昨年は元女子バドミントンの小椋久美子氏が、自身の中高時代を振り返り、将来に向けて勉強する大切さを語った。

 その他にも、介護体験や看護体験などを経験し、社会貢献や仕事について理解を深めていく。

 こうした積み重ねにより、生徒たちは職業体験を楽しみにするようになる。業種は、金融、マスコミ、研究所、コンビニ、飲食店などさまざま。生徒の希望に応じて職場が決まる。

 「将来の職業選びの前に、まず『働く』とはどういうことかを考えさせたい」と松村室長。

 どの職場でも中学生にできる仕事は限られているが、受け入れ企業が工夫して指導してくれる。

 例えば、車好きの男子はガソリンスタンドで、熱心に洗車に励む。銀行業務を体験した女子は、「2千万円の札束を数えさせてもらった」と、興奮気味に報告した。

 ときには、言葉遣いや挨拶の仕方を厳しく指導されることもある。飲食関係では、衛生管理を徹底させられる。それでも、お客さんからねぎらいの言葉をかけられたり、お礼を言われると、心から嬉しくなるという。また保育園では、駄々をこねたり泣き叫ぶ子どもに振り回されて、自分自身の幼いときの様子が分かり、親や周りの人たちへの感謝の気持ちに繋がった。

 職業体験は保護者からも、「子どもが成長できた」と好評だ。

 これまで、何かをしてもらう立場だった子どもが、違う立場への思いやりを持てるようになり、大人に一歩近づいた。

 学校の授業でも、関心を持つ部分が増えているという。一般的に中高一貫校の中学3年から高校1年は、モチベーションが下がる時期と言われているが、職業体験によって一歩先の将来を考えるようになり、主体的な学びへと向かっているのかもしれない。

 松村室長は、「こうした取り組みを通して、いろいろな大人と関わっていくことが、社会で働く未来の自分へと視野を広げ、人間的な強さにつながっていくのではないか」と考えている。

 
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