教員のスキル・アップを促す
活動を推進
3年目に入った龍谷大学付属平安中学校・高等学校の学校改革は、急ピッチで進み、着々と成果を上げている。その一部を紹介しよう。
同校が特に力を入れているのが、教職員の意識改革だ。その一環である「トライアルプラン」では、各教員が年間目標をPDCAサイクルに落とし込み、「授業満足度アンケート」や「学校関係者評価」を通じて自分自身を振り返り、さらなるスキルアップとして、相互授業参観や研究授業、教員研修にも積極的に取り組んでいる。
教員研修は、年2回行われており、今回は全体会と分科会の二部構成とのこと。全体会は、昨年1年間かけて精査したという教務内規の勉強会、分科会は、中学部による「学校関係者評価」、進路指導部による「ファインシステム」(ベネッセ)、教務部による「校内ICT化」に関するものであった。全体会、分科会とも研修の講師は同校の教員であり、手作りで情報共有に努めており、個々のモチベーションは高い。
教科担当も様々な取り組みにチャレンジしている。例えば、数学科では昨年の4月から毎月2回、自主的に勉強会を開いている。今回、その様子を取材した。
担当の教員が自ら選んだという某国立大学の入試問題(複素数平面)を他の数学教員の前で板書して、解いていく。その後、他の教員に、解き方等について意見を仰ぐと、複数の教員から「こういうふうにしたら」といった意見が出た。
数学科主任の竹内智一教諭は「若手を鍛えることを目的に始めました。持ち回りで担当し、事前に国公立大や模試の過去問から問題を選んで配り、解いておいてもらって、当日、担当が教壇上で解くというやり方です。教員の考える力、問題を選ぶ力、作問に活かす力はついてきたと思いますが、生徒へのフィードバックという点ではまだ不充分だと思います」と言う。新課程では、ゆとり世代は学んでいない内容も教えることになる。教え方を統一するためにも有意義な勉強会だ。新任の池本匠先生は「学生時代に習っていない内容もあり、新鮮。勉強になります」、同じく新任の真鍋佑香先生は「授業する立場になった時にポイントとなることを教えてくださるので役立ちます」と話す。
進路指導面も
きめ細かくサポート
学校改革は、進路指導面にも及び、きめ細かいサポート体制となっている。
その一つである進路ガイダンスは、高校の各コース、学年ごとに年2回ずつ行われている。取材日には、選抜特進コースの1年生3クラスを対象としたガイダンスがあり、平井正朗校長補佐の全体指導を聞くことができた。
内容は、今春の進路状況の詳しい説明から始まり、「現段階でのターゲットは、中堅国公立、セーフティネットは関関同立。学校全体で第一志望に受かるような指導をしていくが、大切なのはそれぞれの夢の実現だ」とまとめられた。そして、“社会で通用する人間をつくる”という信念で教育活動をしている先生たちの姿を紹介し、「本校は私学ですから、預かった以上、落ちこぼれはつくりません。最後まで面倒を見ます。君たちのために“汗”をかいている担任の先生を信じてついていきなさい」とも断言。
センター試験における同校各教科の得点率を全国の平均と比較し、今後の学校全体での取り組みを明示したり、難関と言われる国公立大学の読解問題(英語)の素材や解法を詳説したりすることによって、あとどれくらい勉強しなければならないか現実認識した生徒たちの目線は真剣そのものだ。生徒たちへのインタビューから「センター対策は教科書重視」「5教科7科目のバランス」「タイムスケジュール管理」「ドラゴンゼミを利用した合格答案の書き方」「模試は良問の宝庫、設問ジャンル別の分類」などの答が引き出せた。
生徒たちは、正面、左右に設置されたプロジェクタースクリーンに映し出されるパワーポイントの資料に見入り、平井校長補佐の話を傾聴。メモを取る姿も見られた。大学受験が身近に感じられたことだろう。
ちなみに、この進路ガイダンスは、全学年実施、保護者対象のものも別に行われている。 |
龍谷大学の教員が参加する
傍聴職員会議も開催
同校の龍谷大学との高大連携の取り組みも特筆に値する。昨年から、年数回、職員会議に龍谷大学の教員が参加して意見交換する“開かれた”学校づくりにも注力している。これは、高大の教職員同士も教育活動を共有すべきという観点から行われているもので、毎回多くの大学教職員が参加するきわめて斬新な発想だ。会議では、同校の学年、分掌部長が前後期の反省、改善策などを3分間スピーチ、5教科主任が2分間スピーチすることで参加者全員が課題を共有し、全体で改善策に取り組める仕組みになっているという。
また、龍谷大学と付属平安中高の教員が互いに話題提供するFD懇談会も行っている。これらの交流により、高大の相互理解が深められており、大学との関係は非常に順調とか。
主役である生徒を支える教員たちが「チーム平安」として臨んでいる、これらの活動によって、教員のモチベーションがアップし、学校力が上がっているからこそ、同校受験者数、大学進学実績、クラブ戦績がこれまでにない数字となって表れ、選抜高校野球大会での全国制覇も実現できたに違いない。
平井校長補佐は「今は人(スタッフ)を育て、戦力化を図っている段階。次は中身(授業力)の再構築にかかります。学校改革は、これからが本番です」と自信と意欲をみせる。同校の今後の躍進が実に楽しみだ。
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