やりたいことをじっくりと学ぶ
女子の向学心を深める新コース
仏教の教えに基づく指導で、敬愛する心と人格を育み、知性と教養、品格を備えた女性を育成する相愛中学校・高等学校。1888年(明治21年)に相愛女学校として設立されて以来、確立された教育理念のもとに女子の育成を続けてきた。
今年度2年目を迎える安井大悟校長は「女子教育にはキャリア教育や進学実績の向上だけでなく、将来、自分が育児をする時に必要となる良妻賢母の精神も大切です。女性が本来持つ能力や特性を伸ばし、社会人としても母としても素晴らしい人を育てる、それが相愛の教育の特徴です」と、語る。
女子教育の中で安井校長はあることに気づいた。それは女子生徒ならではの悩みで『努力家ではあるけれど、できないことがあると、なぜできないのかというジレンマに陥り、自分を責めて長く心の傷にしてしまう』ということ。これを打開し、より良い学校生活が送れるようにと、安井校長が昨年の就任当時から打ち出したのが、3つのプロジェクトだ。
昨年4月、就任してすぐに行われたのが学校教育改革プロジェクト。それが『進化する学び』と称された高等学校普通科の専攻選択コースだ。昨年度一年間かけてプログラムを組み、カリキュラムを構築、生徒がモデルとして参考にできる時間割の作成など、コース内容に関するものだけでなく、在校生の生徒や保護者にもコース変更の説明を行うなど安井校長をはじめ教職員が積極的に動いた。その結果、今年度より幼児教育・看護受験・栄養・文系・理系・文理系・教養マナーの7つの専攻から、なりたい自分に近づくための授業を選択できる新コースが始動した。
「一年次は基礎科目中心に共通履修し、2年進級時の専攻選択には生徒の希望を細かく聞いた担任が相談に乗ります。しかし、年度途中で目標が変化することもあります。そのため3年進級時には、専攻を変更可能にして柔軟に対応します」
幼児教育・栄養は、相愛大学の人間発達学部子ども発達学科・発達栄養学科と連携。模擬授業や、大学の施設を利用しての指導なども行われ、さらに一歩踏み込んだ形の高大連携システムを構築する。
また、この新コースは自分自身が何を求めているかを考え、やるべきこととやれることとの交錯領域を見つけ出すという考えが基本になっており、相愛のキャリア教育につながっている。その自立学習の一助として、今年度から導入されたのが自学能率手帳「スコラ」。スケジュールを自分で管理し自学自習能力をつけるこの手帳は、同コースだけでなく、普通科特進コースや音楽科、中学校も含め相愛の生徒全員に配布されている。
「手帳は前年度に教員がモニターとなって使用し、効率的な使い方をした教員の使用方法を生徒に紹介、参考にされています」
生徒の『着たい』を重視した新制服を含む
学校PR短編映画の作成が思わぬ感動を呼ぶ
プロジェクトの2つ目は中学改革プロジェクト。私立中学は附属大学への進学や地元公立中学に合わずに入学する生徒が多い。しかしそれが私立中学の本来の意義を果たしているのかと考え、私立の原点に立ち返ってもう一度中学のあるべき道を示すよう、現在進行中のプロジェクトである。相愛中学校は中高一貫校ではあるが、外部高校への進学を阻むことはない。入学生をしっかりと伸ばし、外部高校へ進学を希望する生徒には、志望通りの道へ進めるように手助けをする。それが相愛中学の魅力の一つでもある。
3つ目は来年度からの新制服導入。最近の中学・高校の女子生徒が「この制服かわいい、着たい!」と思うデザインを取り入れるため7年ぶりに変更することになった。明るくオシャレな雰囲気の今回の制服はブラウスなどにオプションがあり、好きなように変化がつけられるのも特徴だ。さらに、この制服変更を含む相愛の変化の広報や学校紹介のツールとして、相愛では7分ほどのショートムービー・プロモーションビデオ(短編映画)を作成した。 |
「今までの校舎や授業風景を映しただけのPR映像ではなく、一本の映画といっていい内容です。前任校平安の教え子であり、現在活躍中の映画監督である三原光尋氏に制作を依頼し、新しい制服を着た生徒が、画面いっぱいに歌い、踊り、お芝居をする内容のものを作りました(作曲は本校音楽科藤村亘講師)」
出演者を決めるため生徒に呼びかけたところ、40人程の応募があった。そこでオーディションを開催、積極的に頑張る生徒の姿を見た安井校長は監督に「できればオーディションを受けた生徒全員を出演させてほしい」と頼んだところ、三原監督も同じ思いだったと笑う。そこで大人数でのリハーサルや撮影が行われたが、どの生徒も驚くほどいきいきとした演技を見せた。リハーサルから撮影まで約1ヶ月、教員室や入学式でも協力を得て短編映画『希望のバトン』が完成。今年度開催の各学校説明会やキャンパス体験などで公開されるが、学校のPR以上に、感動を与える映画になった。
「撮影独特の緊張感やカチンコの音、何度も繰り返されるリハーサル、ダメ出しや本番を告げる映画監督の声、演技やダンスをやり終えた時の何とも言えない達成感など、生徒たち全員が通常の学校生活では味わうことができない体験をしたと思います。これこそが相愛の学校教育につながるのです」
生徒の成長を導くこれらのプロジェクトに先立ち実践されたのが教員の意識改革。画一的な考えを持たせるのではなく、教員が各々の個性を活かし、生徒の能力を伸ばす指導するという意識が、新たな相愛の歴史に大きな力となっていく。
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