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中学・高校受験:学びネット

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大谷中学校・高等学校

 
  仏教による心の学びを軸に、
人間的成長と学力伸長をめざす
大谷中学校・高等学校は明治8年、東本願寺(真宗大谷派)により京都府下小教校として開校された仏教を基盤とした伝統校である。コース制導入や男女共学化などの学校改革を経て、進学校としての期待が高まっている現在も、一人ひとりの存在を尊重する仏教の教えを教育の根幹に据え、生徒の人間的成長を促している。特に心身ともに大きく変化する中学生を強力にサポートしているのが、バタビアシステムに代表されるきめ細かな学習指導と、「宗教の時間」における自己の学びだ。

校 長: 太田 清史
住 所: 〒605-0965 京都市東山区今熊野池田町12
電 話: 075-541-1312
交 通: JR線、京阪本線「東福寺」駅より徒歩5分
学生数: 中学校 207名
高等学校 1,267名 (2013.9.1現在)
ホームページ: http://www.otani.ed.jp

 

進路目標を明確化した
コース再編により学力アップ

 校門を一歩入ると、濃い緑の木々が迎えてくれる。樹齢100年を超える楠の巨木は、その陰に身を置けば、清涼感がいっとき暑さを忘れさせる。大谷中学校・高等学校のキャンパスは、JR、京阪「東福寺」駅からわずか徒歩5分の立地だが、静かで落ち着いた雰囲気が漂う。

 歴史と伝統という言葉がそのまま当てはまる同校だが、近年はコース制変更などの学校改革を推し進め、国公立大学への合格者数を大きく伸ばしている。

 さらに昨年度は、「教育」「生徒募集・進路指導」「学校経営」を3つの柱とする10年間の中・長期計画「グランドデザイン」を策定。新たな学校改革への取り組みを開始した。中でも、太田清史校長は「各コースの『出口』をきちんと保証する」として、進学強化を打ち出している。その牽引車のひとつとして位置づけられているのが中高一貫制だ。 

 中学校は4年前にコースを再編。バタビアコースに、国公立大学への進学をめざす「マスターJr」クラスと、難関私立大学目標の「コアJr」クラスを設置した。その第1期生は、いま高校1年生。中学3年間で学力を大きく伸ばし、再来年の進学実績が期待されている。特にマスターJrクラスでは、中学入学から1年足らずで、学力テストの偏差値が5ポイント近くアップ。英語は全国偏差で60以上をマークした。

 同校では中高の6年間を2年・3年・1年の3つの期間に区切り、樹木の成長にたとえて、それぞれを根蔕期(こんたいき)、幹練期(かんれんき)、結実期(けつじつき)と名付けている。根蔕期は文字通り、根となる土台づくりの時期。マスターJrクラスでは、国数英の中学課程をほぼ修了し、中学3年から高校2年までの幹練期に高校課程を修了。高校3年の結実期では受験対策に取り組む。

 一方コアJrクラスでは、進度のペースは少しゆるやかになるものの、結実期が受験対策に重点が置かれるのはマスターJrと同様だ。

 なおマスターJrとコアJrの間のクラス変更は、中学1年次から2年次への進級時を始めとして、高校2年までに4回の機会がある。

生徒一人ひとりを見守り
成長をサポートする

 中学校の定員は1学年70名。1クラス20数名という少人数編成である。しかも、全学年の生徒数が約200名に対して中学校の教員は18名。およそ10人に1人の割合だ。この教師陣が生徒たちをきめ細かくサポートしている。

 その最たる例が、バタビアシステムである。これは、アメリカのニューヨーク州バタビア市の学校で始められた授業方法で、クラス担任が生徒と一緒に教科の授業を受けるというもの。同校では半世紀以上前の1960年から導入されており、中学1・2年の根蔕期に、国数英の3科目で実施している。

 バタビアシステムがチームティーチングと異なるのは、担任が生徒の目線で授業を受ける点だ。そうすることで、生徒一人ひとりのつまずきや学習状況を詳しく把握できる。また多くの授業時間を生徒と共に過ごすので、思春期の不安や揺れ動くメンタル面に注意を払い、必要なタイミングで手が差し伸べられる。生徒たちにとっても、一番身近なクラス担任が一緒に授業を受けているという安心感は大きい。

 このバタビアシステムは、週2回の「担任指導」とリンクしている。クラス担任は毎週火曜と金曜の7時間目に、国数英の授業の理解度を測るための小テストを行う。その結果をもとに生徒にアドバイスしたり、教科担当と連携をとりながら弱点克服の課題や補習を設定する。一緒に授業を受けているだけに、生徒に対するアドバイスは的確で説得力がある。

 「担任指導の小テストが楽しみという生徒が多くいます」と太田校長は目を細める。一週間という短いサイクルで、目標をクリアできたという達成感を味わえるからだ。

 また、定期テスト前には教科ごとに「学習計画表」を作成して、テストに向けた学習計画を立てさせる。そして、テストの後には「振り返り表」を作成させる。これは、テストに向けて学習計画を自分で立てられるようにするためだ。「振り返り表」には保護者と担任の所見も記入する。

 角谷有一中学教頭は、「伸びていく生徒は、自主的に学習する姿勢を身に付けています。教員が手をかけすぎて受け身にならないように配慮が必要です」と話す。

 そのためバタビアシステムは中学1・2年の根蔕期に限定し、生徒を見守りながら、少しずつ自立の範囲を広げている。

宗教に自己を学ぶ

 入学した生徒たちが同校を選んだ理由の多くに、「楽しそう」というのがある。オープンキャンパスなどで見かけた在校生の姿から感じたのだろう。

 太田校長は「本校のスローガンは、『認めて伸ばす』。これは、良いところを認めて伸ばすという意味ではありません。良いところも至らないところも含めて、まず人間そのものを尊敬して受け入れるという風土が、生徒に安心感をもたらし、伸び伸びとさせているのだと思います」と話す。

 建学から脈々と受け継がれてきた学校理念の「樹心=人と成る」は、あるがままの人間は不完全な存在であり、その不完全さを認めたところから他者を受け入れ、人間として成長していく(人と成る)という意味がある。この仏教精神が同校の教育の根幹であり、授業や学校行事などすべての場面に貫かれている。

 その核となるのが、週に1時間の「宗教の時間」だ。

 「宗教の時間は宗教を学ぶためではなく、宗教に自己を学ぶための時間です」。そう話すのは、乾文雄宗教人権教育部長。

 授業は、生徒の「感話」から始まる。内容は、クラブや友達のことなど自由だが、必ず自分が何をどう感じているかを話す。目的は、自分をオープンにすること。その過程で自分と向き合うことだ。

 「誰でも自分の駄目なところは見たくない。しかし、嫌な部分を覆い隠したまま、知識や良き教えを上から付け足していったとしても、張りぼてのようなもの。心は空疎です。人生でつまづいたときに立ち直れない。ピンチがチャンスにならないのです」

 中学入学当初は「感話」に尻込みする生徒も、皆が一生懸命に聞いてくれるので、安心してありのままの自分を表現できるようになる。

 ありのままで認めてもらえたら、駄目なところもある自分として、できることを一生懸命やろうという気になります」と乾部長。

 角谷教頭も、「そこをスタートラインに、自分に必要な力をつけていくことができます」と話す。

 宗教の時間は、感話を糸口に宗教の話へと続く。親鸞聖人の教えが、いま生きている自分たちとどう関係があるのかに結びつくと、何かが心に残るだろうと考えるからだ。しかし、中高生に「分かる」ことを求めてはいない。種まきに徹している。

 ときどき10年以上前の卒業生が訪ねてくることがある。「宗教で習ったことが気になって」と。何年も前の学びが、人生経験の土壌で芽を出し始めたのかもしれない。

生徒を育てる大谷の伝統

 大谷中学校・高等学校には、いくつもの古き良き伝統が存在する。

 その1つが黙想だ。毎授業の前や行事の前に、姿勢を正し、軽く目を閉じて息を整え、心の準備をする。休み時間に友だちとどんなにはしゃいでいても、黙想で心のスイッチを切り替えて授業に集中する。

 成人式でのエピソードだ。毎年1月に、成人式を迎えた卒業生が母校に集い共に祝う。会場の講堂には卒業生が100人以上集まり、久しぶりに会った嬉しさに大変な盛り上がり。司会役が開会を告げる声も彼らの耳には届かない。困った司会役が、「黙想!」と発した途端、場内は静まりかえった。黙想は大谷生の証とも言える。

 毎年秋に行われる中学校の演劇コンクールも伝統ある行事だ。クラスごとにテーマを決めて、脚本から大道具、衣装、音響などもすべて生徒が考え、力を合わせて演劇を完成させる。クラスによっては直前までまとまらないこともあり、ぶつかりあい、話し合いを通して、同じ目標へ向かう。演劇を創り上げていくプロセスが、生徒たちを人間的に大きく成長させる。演劇の内容も、命のありかや生き方の問題など、中学生とは思えないほどに深い。コンクール当日に演劇を見た保護者は、我が子の成長ぶりを目の当たりにして、涙を流すという。

 太田校長は、「子どもたちの本音のメッセージが伝わってきます。演劇は子どもたちの自己実現のひとつの発露。成長へのイニシエーションです」と話す。

 失敗を恐れず、自分たちの思いを全力で表現する。存在そのものが認められているという大きな安心感のなかでこそ、自己の持てる力を存分に発揮できるのだろう。

 
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