トップダウンでスピーディーに
４年前、女子校としての賢明学院中学校・高等学校は厳しい局面を迎えていた。人口減少とともに公私立間の競争は日増しに激しく、生徒募集の数字にも明確に現れていた。創立者マリー・リヴィエの教育理念を後世に引き継ぐためには共学化の道しかなかった。
本校の学院長に中原氏が就任したのが2009年７月、共学９ヵ月前だった。変化に躊躇する関係者らに「キリスト教の精神はたかだか50年の歴史ではない。数千年来の教え、理念に基づく教育を行っている。共学は一つの変化であり、壮大な歴史の前に大きな変化というほどのものではない」と訴えた。
教育現場と学校経営の両面を見てきた学院長の動きは早かった。ハード面では施設の増改築を実行し変化することを外に見せ、ソフト面では教職員のスキルアップと意識改革、もちろん新しいカリキュラムも導入した。
学校や塾を精力的に訪問、当時本校の偏差値は高く評価されていたにも関わらず、あえて中程度の成績で行ける学校に変わりますと触れ回ったという。その意図を「成績の高い生徒が行く学校は他にいくらでもある、その層の子どもたちが一番多いから」と語る。
学校の姿勢や期待感に大きくブレイクした。
目指す教育への第一歩
共学１期生が昨年の３月に卒業し、素晴らしい大学実績を残していった。部活動においても、高校女子バレー部が近畿大会へ出場、スキー部では国体に出場、中学のサッカー部は近畿大会で優勝を成し遂げ全国大会に出場する。賢明が目指す教育、文武両道への道を踏み出したのだ。
「40点の子を100点には上げられないが80点までは上げます、という尺度で見れば1期生の実績はAランクに値します。そういう意味ではうちの先生たちも評価できます」。さらに「中学サッカーの決勝戦に応援に行きましたが対戦相手は公立校で部員も多い。うちはメンバーぎりぎりです｡延長戦になったのですが、相手はどんどんメンバーチェンジをしてくる。うちはフラフラになりながらもゴールを決めてくれました。」と学院長はうれしそうに話す。
校内の組織も改革に伴い、その力は磐石となった。2012年には南登章生新校長が就任、招聘した公私立の元校長や教頭経験者の存在も大きく、若手が育つ一助となっている。
「要は中原一人ではなくて、ブレーンが揃ったということです」
カリキュラムでも今年から新しいコースを導入。国際教育への取り組みも充実させた。中でも中原学院長は、今の生徒が大学を卒業する24歳ごろの日本の現状を考え、語学研修や修学旅行の行き先を既存のものプラス海外へと大きく方向転換した。 |
「机上の勉強や国際理解という字面だけではなく、世界視野で物を考える人材を育成すべきです」
中２生ではスイス語学スキー研修、中３生では台湾・台北への語学研修が実施され、オーストラリアへは希望者による１年間の長期留学や中期、短期の語学研修が用意されている。今年の高校修学旅行はフランス（本学院発祥の地）と決め、全員が参加する。
「改革の第一歩は踏めた」と語る中原学院長。だが、「確かに生徒は来ています。ただ次の段階として問いなおさなければいけないのが、私立のカトリックの学校としての存在価値です」と表情を引き締める。加えて、大学実績や部活の成果だけが存在価値でないことは確かである。求められるものと求められなくても使命として残るべき存在意義もある。その中庸点を見つけて進むべきだという。
中原学院長曰く「建学の精神である「人が人を育てる」ということを忘れないようにしていきたい」。改革第二段はすでにスタートしている。
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