理科教育で進む高大・産学連携
企業技術に触れ進路指導も
新緑がひときわ目を引くキャンパスに、同志社香里中学校・高等学校の特別教室棟が完成した。各棟に点在していた理科実験室、講義室を集約し、理科教育に力を入れる同志社の姿勢の表れだろう。
同志社といえば文系のイメージが先行しがちだが、13学部を有する同志社大学のうち4学部が、5学部を有する同志社女子のうち2学部は理系学部である。併せて、近年の理系教育推進の機運にも乗っての特別教室棟の建設となった。
ソフト面では大学との連携の強さを見せ、各分野第一線で活躍する教授らを招き、高大連携の6講座を昨年から開講している。1コマ100分。高校生向けにアレンジされた講座は、「薬が効く人効かない人」(同志社女子大薬学部教授)、「ナノサイエンス―科学からバイオへ、エレクトロニクスへ」(同志社大理工学部教授)、「数値天気予報について」(同志社大学理工学部准教授)など、興味関心をそそるタイトルが並んでいる。受講後は、生徒を対象にアンケートを実施し、理解度、興味度、進路選択に参考になったかどうかや印象に残ったことなどを把握、今後の高大連携に生かしていくという。
大学の施設を使った実験セミナーも充実している。「LEGO mind stormを用いたロボット編」では組み立てから基本、応用までを3回に分けて講習し、生徒の人気を集めたほか、「抗うつ剤とネズミの水泳」、「麻酔下ラットの血圧測定」などユニークな実験セミナーを試行的に実施。これまで約120名が参加した。今年度はさらに内容を充実させ本格化させていく方針。
こうした取り組みは進路選択に役立つよう、化学系、情報系、薬学系、電気系など、系統別に広く実施されているという点で、同志社の強みを生かした取り組みといえるだろう。
また、進路を選択する際、生徒が必要とすることの一つに、大学で学んだ知識が社会でいかに活用され、また役立つのかを見たり聞いたりする機会である。進路選択では、ともすれば生徒の関心や得意分野ばかりに注目しがちだが、自分が進もうとする学問分野が、社会とどのようにつながっているかを生徒自身が実感することは、大学進学後の探究心の高さにつながっていく。
そこで、在阪の最先端テクノロジー技術を持つ企業の協力を得て開講しているのが「サイエンステクノロジー企業講座」である。パナソニック教育財団や大阪ガスをはじめ、宇宙開発事業の一端を担う企業など、研究開発の魅力に直に触れる場は貴重だ。今後、カリキュラムの改訂により、一連の理科教育事業を必修として盛り込む検討も進められている。
また、国際関係力の構築を重視する同志社としては、英語力をより重視したプログラム開発も始まっている。大阪府の橋下徹知事がTOEFLを推奨したことを受け、大学教員がe-ラーニングを活用した学習プログラムを研究開発、授業への導入が待たれるところである。 |
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地域小学校とも
理科で交流
地域とのつながりを深めるうえでも、理科教育はやはりキーポイントに据えられている。「サイエンスコミュニケーション事業」は、独立行政法人科学技術振興機構が公募した地域連携モデル事業で、学校が持つ様々なノウハウを地域に還元する取り組みとして認められ、採択された。
地元小学校と同校中学生および教員が、土曜の午後や放課後に一緒に実験を行ったり、話し合いの場を持つなど、小・中間の交流を図っている。たまたま、地域に理科教育推進校として知られる小学校があったことから始まった事業だが、現在は寝屋川市教育委員会との協力関係の中で、市内の他小学校とも同様の事業を増やしていく方針。
西山啓一校長は「中学生が年少の子どもたちとコミュニケーションを上手くとり、自分の考えをきちんと伝えたり、受けとめたりできることを期待している」と話す。
これに関連し、これまで受験生を対象に1回のみ開催されていたオープンキャンパスも、今年から4〜5年生を対象にした日程を追加している。受験生対象のオープンスクールでは、クラブ体験にもウエイトが置かれているが、これは共学化以来、文化系クラブやダンス部などの活躍が目覚ましく、また、男子中学の運動部は大阪私学のうちで、部ごとの成績を点数化した総合点で優勝するほどの活発さを伝えるため。
次々と盛りだくさんな取り組みを打ち出している同志社香里だが、あくまでその基盤はキリスト教主義に基づく全人教育、国際主義教育、自由主義、自主自立といった建学の精神によるもの。西山校長はこれら同志社スピリットをより積極的に授業の中で展開すべきで、そのために教員研修に力を入れたいとの意向を示した。
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